第七話 もし人形の犯行がばれたのなら
いずみ君を殺したその翌日。僕は学園の教室にてかいとと仲良く談笑していた。
この時点で僕がこの場にいるということは、まだ彼らを殺したことはばれていないようだ。
そう一安心していると、ガラララと扉が横にずれるときの音が聞こえ、生徒たちは席に着いた。先生が教室に入ってきたのだ。
まき先生は教室に入るなり深刻な表情を浮かべながらこちらを見つめている。僕らに何か報告でもあるのだろうか。
そう思いながら、先生を見ていると、意を決したようで。まき先生は、僕らに向けて声を上げるのだった。
「今から二週間後、能力育成学園にて特別試験を行うことにしました」
特別試験。その単語を聞いた途端、あたりのみんなは騒然とする。ただ、それは当然なのだ。
特別試験はこの一年に四回ほど開催される、能力育成学園のビックイベントのうちの一つだ。そして12か月に四回ということは三か月に一度開催されるといえる。
だが、まだ入学して三日もたっていないような状況で特別試験が開催されることを宣言する。そんなことは、だれもが予想だにしていなかった。
そんな中でも、まき先生は特別試験の内容を告げる。
「今回の特別試験の内容は『サバイバル』。無人島に行き、七日ほどその無人島で、食料と水もすべて自給自足で補います。そして大事なのはそのあとです」
もうすでに困難な状況なのに、僕らにはまだ何か課されるのだろうか。余計に不安になってきた。
「サバイバルをする前に、学園からバッジを支給します。バッジは他の生徒も持っており、奪うことが可能です。そして最終的にはバッジが多かった順に上からランキング付けされ、A、B。CやD。Eクラスに分類されていきます。そして、バッジがゼロ個になったものは無事に退学となります。くれぐれも、無理だけはしないでくださいね」
突然の退学発言に生徒はまき先生の話を聞く耳すら持たず、がやがやと話し始めた。それは僕も一緒で、一人冷静に考えていた。
バッジが奪われてしまう。そこに関しては、全く問題ではなかった。問題なのは水と食料の調達。僕にはまったくサバイバルの経験なんてない。戦闘以前に餓死してしまうか、体力が回復しきれずにバッジを奪われてしまうかのどちらかだ。
いったいどうしたものか。と頭を悩ませていたが、まき先生が生徒たちを落ち着かせようといった、ある発言によって勝機を見出した。
「でも大丈夫です。落ち着いて。この二週間、授業はやりますが授業を受けずともいい期間とします」
「じゃ、じゃあ」
一人の男子生徒が釣り堀に引っかかった魚のごとく食いついた。
「実家に帰って俺の師匠とかに教えてもらうとかありなんですか?」
「ありです。あっと...。ところで、あかりさんといずみ君が見当たらないのですが、どちらへ?」
そういやいずみいなくなってるぞ....。と、クラスメイト達が騒ぎ立てる。今更でいずみ君がかわいそうだろう。と彼を哀れんだが、すぐさま僕が殺したんだったことを思い出した。
クラスメイトはなにもわからないため、首を横に振った。
「そうですか。この後彼らの寮に向かってみようと思います。その前に彼らを見つけたら何か連絡をくださいね」
走り去っていくまき先生を見つめながら、この時僕は決心した。
その日の授業は簡単で、特に頭に入れることは特になかったため、授業中に考え事でもしながらやり過ごしていると、すでに日は沈みかけて学園の生徒も徐々に帰り始めていた。
そんな中、かいとが僕に話しかけてくる。
「お前はこの二週間、どうするつもりだ?」
これを言ってしまうと僕の師匠が魔王だとばれてしまうかと思いながら、僕はなるべく情報を出さないようにあいまいな表現をしつつ答えることにした。
「僕の師匠のところへ行くつもりだよ。サバイバルの知識がわからないからさ」
「そうだな。俺も実家に帰って聞くことにするか。まってろよ。いつかお前なんか圧倒できるほど強くなって見せる!もうそんぐらいの差ができるてるかもしんないけど!」
そういって、かいとは意気揚々と帰っていった。
彼の姿を確認できなくなったのちに、僕はるりに通信をかけようとしたのだが、僕のほうへ向かってくる一つの足音を僕は見逃さなかった。
「お前、昨日は何してた?」
聞きなれた声。というわけではなかった。だが、それでも声の主の正体なんて、振り返らずともわかっていた。
僕は振り返るより前に、彼の名前を読んだ。
「すこし散歩に行ってたんですよ。りひとくん」
そういって振り返ると、銀髪の少年がそこにはおり、怪訝な目つきでこちらを見ていた。
「このクラスで行方不明者が二人出た。それはお前も知っているよな?」
「行方不明?」
そう外ではうそをつくが、知っているさ。なぜなら行方不明になった原因は僕なのだから。
「今から、俺はあいつらを探しに行く。お前もこい」
「わかりましたよ」
そうぶっきらぼうに返事をすると、りひとは走ってどこかに行ってしまった。
その背中を追うように僕も遅れて出発した。
一刻も早く私の疑いを晴らさねば。