第五話 もし人形が最強だったのなら
彼女の死。彼女を殺したせいで、ここから僕は動きっぱなしの学園生活になる。だが、動き続ければ必ずぼろを出す日が来てしまう。だからこそ、ところどころ休めるように、疑ってきたものから殺すのが適当だろうか。
僕を疑っているかどうかを見極めるんだ。
そんなことを思いながら、僕は何気ない顔で教室に入っていった。僕の顔を見るものは、だれ一人もいない。そして、なぜかなおみは来ていなかった。
ばれていない。まだ何とかできるな。
席について一息つこうとするが、かいとに話しかけられる。
「どうだった?」
「なんとかできたよ。なおみもすごくうれしそうだった」
うそは言っていない。なおみはすごくうれしそうにして帰っていったし、僕はあかりの殺人を何とか遂行することができた。
だからこそ、うそをついていると勘づかれることはないだろう。
「にしても、すぐ解決できるなんてお前はただものじゃねぇよな」
「なんどもいうけど、僕がすごいんじゃなくて師匠がすごいだけだよ」
「ぜひともお前の師匠にあってみたいもんだぜ」
「あのっ...!」
僕らが仲良く談笑していると、なおみが急いで登校してきたようで。ぜぇ。ぜぇ。と息を荒げて、何度か息継ぎをしながら、僕たちに話しかけてきた。
「あかりを...はぁ。みて...はぁ。ませんか?」
「あかり...?」
大声で彼女が言ったばかりに、クラスメイトの視線がなおみにくぎ付けになる。
ちっ!大声で言わなければいいものを。
「そういえば、確かに見ていないな。誰か最後に見たやつはいるか?」
銀髪の男がポツリと呟いた。
「私が知っている限りではりつさん。あなたがあかりさんを最後に見たのではないかと。あかりさんを見たのは何時ごろでしたか?」
「大体なおみさんがかえって十分もしないうちだよ。そうだな....。午後5時くらいかな?」
それからなおみがあかりを目撃した時刻を生徒に聞いたが、午後五時以降にあかりを見たものは誰もいなかった。ゆえに、生徒の疑いが僕へと向けられる。
「もしかして、お前がやったんじゃないのか?」
男が僕に詰め寄った。だが、根拠が薄すぎる。
「僕はやってませんよ。第一、僕よりも遅い時間にあかりさんを殺したけれども、僕に擦り付けようと黙っているということも否めませんよ?」
男は考え、しばらく沈黙が流れたのちに、彼は結論を出した。
「......たしかにそうだな。今のところはあまりにも証拠が少なすぎる。次証拠のようなものを見つけたら報告しあおう。証拠がない以上、次があってもおかしくないからな」
この件のせいで、その後の授業はみんな集中できていなかった。
それにしてもあの男。名前は確かりひと。おそらくEクラスの中では一番やりづらいな男かもしれない。...........。一匹狼みたいだし、この授業が終わったら近づいて詮索してみよう。
科学の授業が終わり、休み時間になったため、僕とかいとは先ほどの銀髪の男。りひとに話しかけることにした。
「なんだ。俺はお前たちとなれ合うつもりはないぞ。特にりつ。お前とはな」
「なんでだよ。こいつが犯人かもしれないが、こいつが犯人という確証もないだろ!!」
するとりひとはばかを見ているような目でかいとを見つめていった。
「確かにそうだが...。お前に言ってもわからないだろうから、今は言わない」
彼の発言からして、僕のことをまだ疑っているみたいだ。危機感が強い人だから、少し彼の眼を意識しながら今後の犯行をしていこうと、ひそかにそう思った。
「あなたのいうことは僕にはわかります。できる限り犯人の可能性がある人物とは接さないことによって、生き抜こうとしているんですよね?」
僕の発言に彼は驚いたせいか目を見開いて、すごいなと言わんばかりに話し始めた。
「よくわかったな。正解だよ。俺はあまり死にたくはないからさ、犯人の可能性があるお前とはかかわりたくないんだ」
これで彼の能力の情報は、おおよそ絞ることができた。もうそろそろいいころだと思う。そう思った僕はかいとの手を取って彼に頭を下げた。
「そうだったんですね。だったらお手数をかけました。これからは、あまりかかわらないようにしようと思います。それでは」
僕らが去っていくと、彼の表情はどんどんと健やかになっていった。だが、その中には寂しさが混じっていたような気がする。
もう少し時間をおいたら、また話しかけてみよう。それで反応が変わるかどうか。きっとそれによって、大きく立ち回りが変化する気がした。
手駒が増えることは、とてもいいことだ。
そう思った時だった。二人の男子生徒が取っ組み合い寸前の喧嘩の声が聞こえ始めた。両者互いににらみ合って、手を出さないようにこぶしを握り締めながら口論をしている。
僕はその状況をそっと観察することにした。
「Eクラス最強はこの俺だ!!」
「何を言うかと思えば、君はまた馬鹿な妄想をしているのかい?Eクラス最強はこの僕、しょうやだよ」
なるほどと、僕は目を細めた。どうやらこの二人は、どちらがEクラス最強なのかを決めているようだ。そんなことを考えていると、彼らの口から面白い言葉が発せられた。
「いずみ君の炎を操る能力なんて、大して強くはないだろ?」
「お前も人のこと言えねぇだろ。お前の能力は冷却なんだからな」
炎と冷却。いずみ君は自分が最強だと思っている。つまりそれは、対象を地震以外に設定することができるということ。そして冷却もそう。おそらくだが、冷却は触れたものを冷却する能力なのかもしれない。今はわからないが、探りを入れていつか殺そう。
静かに、僕はそう思うのだった。
久しぶりの小説なので、少し違和感を感じることがあるかもしれませんが、温かい目で見てくれると幸いです。
星をつけてくれると励みになります。よろしくお願いします