1 竿役から親友(自称)へ
エロゲの中に転生した俺。ゲーム内では名前が無く【チャラ男】とだけ表記されていたのだが、やはりと言うかちゃんとした名前があった。
佐尾 勝
【身長・185cm 体格・細マッチョ
肌色・褐色(日焼け) 顔・イケメンだけど(軽薄)】
こんな感じだろうか?正にNTR物の竿役って感じの容姿その者だ。
この世界に来たのはこのゲームの物語が始まる1週間前。最初は何が起きたか分からなかったが、家にある手紙類を引っ張り出した結果。この世界がエロゲの世界だと理解した。
その後は必死に自分が何者かを探る為に周辺地域や実家、連絡先、容姿を確認して自分がバットエンドルートの竿役と判明した。一番役にたったのは連絡先と容姿だろうか。このゲームのヒロインの1人の連絡先を持っていて、この顔と言うか容姿は1人しか思い浮かばなかったのである。
それからは学校の位置や主人公の家、ヒロインの家を確認して1週間を過ごし、今日入学式当日である。
今日から俺は竿役から主人公の親友ポジへとジョブチェンジする。その為の第一歩として今日は主人公と一緒に登校をする。意味の無い様な行動に見えて、それなりの理由があるのだ。
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アニメや漫画で親の顔よりも見た通学路。電柱に半身を隠して主人公の登校を待ち構える。傍から見れば不審者でしか無いが主人公の幸せの為だ仕方ない。
朝6時から張り込んでから約1時間半。ようやく目的の人物が歩いて来た。
俺と同じ学校の制服に身を包んでいるが、顔は女と見間違うほどに可愛い。背も低く、髪も肩まであり、どっからどう見ても女の子のようだ。
だけど、女の子見たいに可愛い男の娘は、明らかに気落ちした様子で通学路を歩いていた。その姿が意味するところ。
最初のヒロインのフラグ立て失敗。
だが、主人公を責める事などできない。最初のヒロインのフラグ立ては、このゲーム【ドキッ☆ドキッ☆男の娘のエチエチ学園ハーレム(NTRもあるよ♡)】の最初の難関なのだから。
俺はゆっくりと主人公へと近づいて行った。
「ねぇねぇ、そこの君?もしかして俺と同じ学校?もし良かったら一緒に登校しない?」
「えっ‥、あの、…えっと」
おっと、変な声掛けしたから主人公が困ってしまった。いやね、別に困らせる気なんてなかったのよ?今は陽キャの姿だけど、元々陰キャだもん。だからよくHな漫画で出てくる竿役さんのセリフを真似て誘ったんだけど。
俺なんかやっちゃいました?
「あ〜、ごめんごめん。いきなり声掛けられて驚いたよね?同じ学校の制服が目に入って少しテンション上がっちゃってさ。本当ごめんね。」
「そ、そうなんですか?」
「うんうん。そうなんだよぉ。初登校ってなんか緊張するじゃん?だから仲間っぽい子を見つけてテンション上がったってわけ!」
「?」
「あれ、違った?なんか考え込んで歩いていたから、緊張してるのかなって、思ったんだけど?」
「えっとー、多分緊張もしてるけど、それ以外の事を考え込んでいただけで…」
「ふ〜ん、そうなんだ。もしかして好きな人とか?」
「ッ!?ち、違います!!た、ただ、ただの幼馴染みです!」
顔を真っ赤にして反論してくる主人公。俺はニヤニヤが止まらなかった。なんて初なんだ!可愛いではないか。
「そんなに誤魔化さ無くてもいいじゃん。教えてよ。す・き・な・子・の・こ・と」
「もぉ、違いますって!貴方なんなんですか!!」
「おっと、ごめん。名前教えて無かったな。俺は佐尾勝。ヨロシク!」
「え、あ、えっと僕は清羽 雪です。」
いきなりの自己紹介に、戸惑いながらも自己紹介で返してくれる清羽君。やはりいい子だ。こんな子がゲームだとハーレム作るんだぜ信じられねぇよなぁ?
「自己紹介も済んだ事だし、何があったかは歩きながら話そうよ。」
「え、あ、ちょっと歩きながら話す?何を?」
「え?決まってるじゃん!清羽君の好きな子の事だよ。」
清羽君の背中を押しながら登校するのだった。
「えっ、ちょ、ちょっと待って僕一緒に登校するのぉ?」
なんか聞こえたような気がしたが、これもハッピーエンドの為の行動なのだ。仕方ない。
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清羽が登校時に何故気落ちしていたのか、それは昨日の夜まで遡ることになる。
清羽は明日から心を一新して入学式に挑む。弱気な自分を過去に置き去りにする予定で。そう、"予定"だったのだ。彼が登校時には心が折れてしまっていたのは、1人目のヒロインと連絡をとった後。
清羽雪
《あやちゃん起きてる?》9:24
日登彩夏
《何?》9:37
清羽雪
《明日一緒に登校しない?》9:40
日登彩夏
《何で?》9:42
清羽雪
《学校一緒だから》9:46
日登彩夏
《学校一緒だからって、一緒に登校する理由にならない》9:50
清羽雪
《そうだね、ごめん》10:02
彼はこのやり取りで心を折られてしまった。ただでさえ低い自己評価が下がり。昔から中の良かった幼馴染みからの登校拒否により弱気に拍車をかけてしまった。
清羽の高校デビューの第一歩は足場から崩れ去ったのであった。