32 エピローグ
「今日はいい天気ですね」
「ああ、そうだねえ! 洗濯物日よりさ!」
「おお……」
快晴の王都。その街中にいる恰幅のいい女の人に声をかけたら、ちゃんとした返事があった。その後少し言葉を交わして、その場を離れる。そう、ちゃんと会話をした。
ここは、わたしの世界、その続編。ちょっと未来の世界、らしい。そしてさっきの女の人は、この世界の住人だ。ウンエイ様曰く、のんぷれいやあきゃらくたあ……? らしい。
えっと……。超高性能の、えーあい……? それを搭載? してるらしい。もはや何を言ってるのかさっぱりだ。
サキ様は魔法すごいって行ってくれてるけど、わたしからすれば神様たちが使う科学というものの方がよほどすごいと思う。自動ドアとか、未だによく分からないから。
この新しい世界ができて、半年ほど。今はべーたてすと? とかなんとかで、プレイヤーも一定数いるみたい。わたしも無事にこの世界に転移ができるようになって、いろいろと探検中だ。
この世界の転移方法を見つけるのに、ちょっといろいろあったけど。まずは場所を知るために、ぶいあーるましんを使って初めて神様のやり方でこの世界に来てみたりした。すごく新鮮だったなあ……。自分の意識はあるのに、別の体というものだったから。
そうして無事に転移できるようになったわけだけど、今はわたしの視点からこの世界に変なことが起きていないかを調べてる。それがウンエイ様から与えられたわたしのお仕事だ。
生まれて間もない世界は、なぜか壁を素通りできたり、いきなり地面が抜けて地下に落ちたりと、刺激的で楽しい。この世界が成長していくと思うと、とても楽しみ。
ウンエイ様は大変らしいけど。プレイヤーが入れる場所には変な現象が起きてないからいいとはいえ、このまま放置すると大変なことになるらしいから。
だから、この世界の未来はわたしにかかってるとか……。もちろんウンエイ様も調べてくれているけど、わたしが頼りとか言ってもらえると、やる気があふれてくる。お役立ちです!
そんな感じで、日中はこの新しい世界であちこち巡るのがわたしのお仕事。やりがいのあるとても楽しいお仕事だ。
毎日でも働きたいけど、週に二日は休まないといけないらしくて、その日は今まで通り人助けしてみたりしてる。たまにサキ様やハナ様と一緒におでかけして……。毎日がとても充実してる。
「戻りました!」
サキ様の家に転移して、そう告げる。
「おかえりー」
「魔女のおねえちゃんおかえりー!」
「た、ただいまです……!」
サキ様もハナ様も、そう明るく言ってくれる。いってきますも、ただいまも、おかえりも、なんだかすごくいい言葉だ。この家の家族になれたような、そんな気が……。
「どーん!」
「わわ……。ハナ様、危ないですよ?」
「えへへー」
ハナ様は今日も元気いっぱいだ。たまにこうして抱きついてきて、とてもかわいらしい。神様にこんなこと考えるのは失礼かもしれないけど。
「晩ご飯するよー」
「あ! 手伝います!」
「いや、いいから座ってなって」
「神様だけを働かせるなんてとんでもない!」
「うーん……。神様じゃないって言ってるのになあ……」
そこは譲れません。だって、魔法が使えなくても、わたしの世界を作ってくれたことは事実だから。世界を作るなんて、わたしには絶対できないことだ。
だから、ウンエイ様もサキ様も、わたしにとっては神様です。
「ティルエルがそれでいいなら、いいんだけどね……」
そんなことを言いながら、サキ様は食器を並べていく。わたしもお手伝いだ。
今日の晩ご飯は、チーズたっぷりのシーフードドリア。とろとろのチーズがいっぱいで、今からとても楽しみ。
「いただきます」
実際に食べてみると、のびるチーズがとても楽しい。海老もたっぷり。それらの味をご飯がほどよく引き出してくれる。んー……。美味しい!
「ティルエルがすごく美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるよ」
「はぐはぐ……。はぐ?」
「あはは。ほらほら、食べて」
この晩ご飯の時間はわたしの一日の楽しみ。明日はどんな料理かなあ。
晩ご飯を食べた後は、のんびり休憩。サキ様やハナ様が学校であったことを教えてくれる。学校、楽しそうだ。わたしは行きたいわけじゃないけど。
「そういえば、ティルエル。お父さんがお礼言ってたよ。今日の発見は本当にありがたかったって」
「えっと……。魔物の変な行動、ですね」
魔法で攻撃してみたら、変な行動を始めたやつだ。何故かずっと木を攻撃してた。意味が分からなかったからウンエイ様に報告しておいたけど……。それで正解だったみたい。
「最近は新しい世界も落ち着いてきたみたいだね?」
「そうですね。変なところはかなり少なくなりました」
そろそろわたしもお役御免かもしれない。それはちょっと寂しいけど、でも世界がちゃんと作られたということで……。また改めて探検してみたいと思う。
そんなことを考えていたら、サキ様がわたしをじっと見て微笑んでいた。
「な、なんでしょう……?」
「いや……。楽しそうで良かったなって」
なぜかサキ様に頭を撫でられた。気持ちいい。
「最初は、正直どうなるかと思ったけどね。ティルエルを見つけた時のあの衝撃は今でも忘れられないし」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
サキ様と目を合わせ、小さく笑い合う。何気ない会話がこんなに楽しいなんて、あの世界にいた時では知らなかったことだ。ああ、本当に……。
「ねえ、ティルエル」
「はい」
「この世界は、楽しい?」
「はい! とっても楽しいです!」
本当に、とても楽しくて、幸せだ。
わたしがそう笑顔で言うと、サキ様もにっこりと微笑んだ。ちょっと、意地悪な笑み。
これ、知ってる。サキ様がちょっと悪いことを考えている時の顔だ。ハナ様がいたずらをする時の顔によく似てる。
「でもね、ティルエル。ティルエルはまだちょっと常識に欠けてることがあるんだよ」
「え、と……。はい」
「というわけで……。はい」
サキ様が目の前に大きな段ボールを置いた。なんだろう? わたしへの何からしいけど……。とりあえず、開けてみる。ガムテープをはがして、と……。
出てきたのは、新品のランドセルでした。
「え」
「明日からはそれね。諸々の手続きとかは政府の方でいろいろやってくれたらしいから」
「え」
「明日から小学生! がんばってね」
「え。…………。え?」
わたし、小学生になることになりました。
この世界に来てから、楽しいこととかいろいろあったけど……。まだまだ、やることはとても多いみたい。
でも……。うん。これからも楽しんでいこうと思う。
了
壁|w・)ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
小学生なティルエルの生活は皆様のご想像にお任せします……。




