表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

03 姉妹の神様


 どれぐらいそうしていたかな。いつの間にか当たりは夕焼けに染まり始めていて。気が付けば、目の前に女の子がいた。

 六歳ぐらいの女の子。いや、この子も神様だから、生まれたばかりの神様なのかもしれない。ならわたしよりも、ずっと格上だ。

 そんな神様がわたしをじっと見てる。どうしよう。すごく怖い。

 その神様が、にっこり笑って言った。


「こんばんは!」

「こ、こんばんは……」


 挨拶だ。神様に挨拶してもらった。すごく嬉しい。


「おねえちゃん、ここで何してるの?」

「え、あの……。その……。ちょっと、落ち込んでいるといいますか……」

「かなしいことがあったの?」

「そんなところ……です」


 ただ自分がバカなだけ。ただそれだけ。あまり言えないけれど。

 神様は不思議そうに首を傾げていたけど、すぐににぱっと笑って言った。


「あそぼう!」

「え?」

「おねえちゃんがね、かなしいことがあったら、いっぱい遊んでわすれたらいいよって言ってた!」

「忘れる……」


 それは、不敬じゃないかな。神様の世界に勝手に来て、勝手に落ち込んで、最後は忘れる。なんて失礼な……。


「せなかおすよー!」

「え、わ、わ……」


 神様がわたしの背中を押した。ブランコがゆっくり揺れる。自分で空を飛ぶ方がずっと速い……のだけど。


「えい! えい!」

「わ……」


 なんだか、背中を押してもらって揺れるというのがとっても新鮮で、不思議と楽しかった。


「あは……」

「えい! えい!」

「あはは……あはははは!」


 ああ、こうして笑ったのは何時ぶりかな。あの世界で、自分は一人だと思って、それからもう遊んで笑うなんてことはなかったかもしれない。笑ったのは……転移前のあの時ぐらい、かな……?

 なんだか、とても楽しい。


「おねえちゃん! わたしも! わたしも!」

「分かりました!」


 今度は小さな神様がブランコに座って、わたしがその背中を押す。もちろんわたしがやってもらった時と同じように、加減はする。速すぎないように、揺れを楽しめるように。


「わあ!」


 神様の歓声。喜んでくれたみたい。今はそれが、とても嬉しい。

 そうして、神様とブランコで遊び続けて。


「なにこれ……?」


 そんな声に、我に返った。


「あ、おねえちゃん!」


 そこにいたのは、黒を基調とした不思議な服……セーラー服、だっけ。それに身を包んだ少女。多分十代半ばぐらい。この子も神様だ。わたしよりもずっとすごい。平伏した方がいいかな?


「あなた、もしかして……ティルエル?」

「え……!?」


 わたしの名前を知ってる!? すごい、さすがは神様だ!

 わたしが感動に打ち震えていると、その神様は困ったような笑顔を浮かべた。


「フェイク動画とかそういうのかと思ってたけど……。まさか、本当にいるなんて……」

「おねえちゃん、このおねえちゃんのこと、知ってるの?」

「うん……。まあ、うん。知ってる、かな」


 その神様は小さくため息をついて、わたしに言った。


「行くところ、ないよね?」

「え、その……。はい……」

「じゃあ、うん……。おいで」


 かえるよー、と言いながら、その神様は小さな神様の手を取って歩き始めた。わたしは……どうしたらいいんだろう? おいで、と言われたけど、本当についていっていいのかな。

 わたしが逡巡していると、その神様が振り返った。


「来ないの?」

「…………。行きます!」


 悩んでいても仕方ないし、行く当てがないのも事実。ここは、この神様の好意に甘えようと思う。


「よろしくお願いします、神様!」

「ぶっ……」


 なぜか神様が噴き出した。どうしたんだろう。


「神様はやめてね? えっと……。私はサキ。サキだよ」

「サキ様、ですね! わたしはティルエルです!」

「うん。知ってる。この子は、ハナ」

「ハナです!」


 小さい神様はハナという名前らしい。なんと神様二人の名前を聞いてしまった。なんてすごい一日だろう。考えられないぐらいだ。


「とても……とても良い名前です! 教えていただき、感謝の極み!」

「敬語やめなさい!」

「無理です!」

「無理なの!?」


 神様に対しての会話だ。敬語に決まってる。神様が言おうともそれは譲れない。絶対にだ!

 サキ様は小さくため息をついて、仕方ないと肩をすくめた。


「まあ、いっか。とりあえず、黙ってついてくること。その間は魔法も禁止。いいね?」

「了解しました!」


 神様が……サキ様が言うならそうしようと思う。


壁|w・)ちょっと短めですが、きりがいいところで、ということで。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ロリ神様…いや、何となく言いたくなっただけですさーせん 落ち込むロリをブランコで励ますロリ…ええわ…(*´Д`) あっおまわりさんお仕事お疲れ様っす!え?この辺りで通報?不審者?いやそんな怪しい奴見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ