20 魔女がいっぱい!(コスプレ)
サキ様に次に案内してもらったのは、薄い壁のようなもので仕切られたスペース。仕切りはされてるけど、それでも広い。百人以上の神様がそこに集まってるから。
部屋の奥には……ステージ、かな? たくさんの神様が何かの準備をしてる。サキ様が言うには、ゲームの発表とかそういうものがあるらしい。
でも、わたしが気になったのは、別のこと。
「あの、サキ様」
「うん」
「ここの人は……服装が他と違いますね……」
みんな、この国の服装で考えるとかなり独特な服装だ。鎧に見える服とか、ローブに見える服とか……。わたしにとってはかなり見慣れた服だけど。
つまり、わたしの世界の服装だ。
「コスプレイヤーの皆さんも今はこっちに来てるからね」
「こすぷれ……ですか?」
「そう。漫画とか小説のキャラクターの服を着る、みたいなイメージでいいよ」
なるほど。それは、ちょっと楽しそう。ここではわたしの世界を題材にしているのかも。神様たちにとっては、あの世界の服を着てるのは娯楽みたいなものらしいから。
「すみません!」
それにしてもいろんな服装があるなあ、と思って見ていたら、急に話しかけられてしまった。声の主を見ると、男の神様だ。若い人で、サキ様ほどではないけど二十にも届いてないと思う。
その人はわたしを真っ直ぐに見て、言った。
「それ! ティルエルちゃんのコスプレですよね!」
「え」
コスプレ……。わたしが、わたしの? えっと……。いや、これ、どう答えたらいいの……?
サキ様を見る。楽しそうに笑ってる。笑う前に助けてほしい。
その気持ちが通じたのか、サキ様が言った。
「そうです。この子、ちっちゃくて、ティルエルのコスプレをしたらちょうどいいかなって」
「え」
「ですね! もうすっごく……まさにティルエルそのものって感じです! すごくかわいい!」
「え……あの……」
それでいいのかと思うのと同時に、なんだかすごく褒められてるみたいで、すごく恥ずかしい。その、かわいいって……。いや、えっと……。
サキ様を見る。笑っていた。なんというか、あえて言うなら……。いたずらっぽく、笑っていた。
「ティルエル好きなんですか?」
「ロリコンって言われそうですけど……。一番好きですね。小さくてか弱そうなのに、過去一番ですごく強い。そのギャップが最高です。それにわりとクールで、かっこいいのも。なんというか、小さい子が背伸びをしているみたいで、最高です」
「あわ、あわわ、あわわわわ……」
なんだかすごい評価をされてる! とんでもない評価をされてる気がする! ま、まあ確かに? あの世界ではわたしは一番強い自信があるけど? で、でも、神様と比べるとわたしなんてよわっちいと思います!
「僕みたいなティルエルのファンは結構多いと思いますよ?」
「ですね。ティルエルのコスプレ、結構多いですし」
「え……?」
改めて会場を見渡せば。確かに、確かに言われてみれば、わたしのコスプレだと思われる人がたくさんいた。
黒いローブなんてわたし以外にも結構いるけど、持っている杖とか帽子の飾りとか……。細部まで一致している人がわりといる。つまりは……わたしのコスプレ。
いや、なんで? なんでわたしなの? わたしなんてただの魔女だよ? そんな……ちょっと恥ずかしい。
「なんだかすごく照れてますね……?」
「あははー。かわいいでしょ?」
サキ様は変なこと言わないでほしい。これ以上はちょっと、うん。恥ずかしいから。
そして、お兄さんが一言。
「じゃあ……。写真、いいですか?」
「え」
写真。もちろん分かる。スマホで撮ることもできるやつだよね。仕組みは未だによく分からないけど、どういうものかは分かる。それでわたしを撮りたいらしい。
いや、でも、さすがにそれは……。
「どうぞ、いいですよ」
「サキ様!?」
なんか許可されてしまったけど、本当にいいの? わたしだよ……?
でもサキ様が言うなら写真ぐらい……。うん。
ということで、写真を撮ってもらうことになった。今ならもう大丈夫ということで、キャップも取っていつもの帽子を被る。サキ様に言われるままに適当にポーズ。やってから思ったけど、わたしが魔法を使う時に自然と取る形だと思う。杖を掲げたりとか。
そうして写真を撮ってもらっていたら、他の人も集まってきて、わたしのコスプレをしている人も集まってきて……。結局大勢で撮影会みたいなことをしてしまった。
最後はみんなで杖を掲げて、撮影。これで良かったのかな……?
でも、うん。なんだか、ちょっと楽しかった。神様たちの仲間にしてもらえた気分。
そうして撮影会を終えたところで、そろそろゲームの発表ということになった。
四十代ぐらいの男の神様とかが前に出て、いろいろと話をし始めてる。今のプレイヤー人数とか、キャラクターの人気投票とか……。そういうのだ。
わたしにとって印象的だったのは、質問コーナー。
遺跡のボスについて教えてほしい、というもの。その答えは、本来は最強のドラゴン、カタストロフドラゴンがいる、というもの。今は何故かドラゴンが消滅しており、原因調査中と。
いや、うん。原因は確実に私だ。
「ティルエル。あれってティルエルの部屋のことなんだけど、やっぱり……」
「その……。わたしか、倒しちゃった……ドラゴン、です……」
「あー……。だよね……」
ちょっと……いやかなり、非常に申し訳ない気持ちに……。あれは、神様がゲームのために作り出したドラゴンだったらしい。勝手に倒しちゃったよ……。
「その知らないドラゴンではなく! ティルエルについて教えてください!」
そんな声が上がって、わたしは思わず体を震わせてしまった。勝手に倒しちゃったから、みんな怒って……。
「運営が把握してないってどういうことですか!」
「未だに原因究明中ってなんだよ!」
「というかなんで消えたんだよまだ戦いたいんだけど!」
あ、あれ? なんだか、予想と違う内容だ。みんなすごく怒ってると思っていたんだけど……。むしろ、わたしがいなくなったことに文句を言ってる?
結局その答えは、原因究明中だけに終わってしまった。
んー……。たまには、戻って戦ったりした方がいいのかな……?
壁|w・)魔女の大量発生。




