18 新幹線と神域の象徴(富士山)
そうして、翌日。わたしとサキ様は朝早くから出発した。
ハナ様はお友達の家にお泊まり、らしい。二泊ほどする予定らしくて、そこまで急いで帰る必要はないとのこと。だから話が弾んでも大丈夫、と。至れり尽くせりだ。
とりあえずは、まずは新幹線。
「サキ様! サキ様! 電車が……電車が長いです!」
「うんうん。長いよね。びっくりだよね」
「わあ……わあ……。こんなに長くしても電車というものは動くんですね……! しかも、他の電車よりも速く……。し、調べたい……!」
「はーい。とりあえず乗ろうねー」
「あう」
サキ様に手を引かれて、改札へ。デパートに行く時に乗った電車とはまた違う切符を使うみたい。ちょっと大きな切符だ。それを使ってゲートを通り、改札に向かう。
「ティルエル。駅弁買おう、駅弁」
「駅弁、ですか?」
「電車の中で食べるお弁当」
「食べてもいいんですか!?」
マナー、だっけ。そういうものに違反するから電車内での飲食は避けるべきだと聞いたことがあるのに……。新幹線というのは、中でご飯を食べてもいいらしい。
「お肉がいい? お魚がいい? 貝とかもあるよ」
「お肉でお願いします」
「あは。了解」
サキ様と売店でお弁当を購入して、新幹線の中に向かう。
新幹線は中に通路があって、通路の両脇に椅子があった。以前の電車の椅子よりも席が多い。できるだけたくさんの人を乗せて、かつ座れるように考えてあるみたい。
何から何まで違う……。これが、新幹線!
「ほら、ティルエル。窓際座っていいよ」
「はい!」
窓際の席に座らせてもらう。そこまで大きくはない窓だけど、外の景色を見るには十分。早く動かないかな、楽しみだな。
「ティルエル。二時間ほど乗るから、お弁当は好きなタイミングで食べてね」
「はい!」
サキ様からお弁当とペットボトルのお茶を渡された。テーブルはないけど、そのまま食べれば……。
隣でサキ様がテーブルを出した。出したというか……下ろした? 前の席の後ろ側にテーブルがくっついていて、それをこちら側に下ろした形だ。
「すごいでしょ」
「すごいです!」
本当に、中で飲食ができるようになってるなんて……。二時間も乗るのは長いかも、なんて思ったけど、これならそこまで苦にはならなそう。
わたしもテーブルを下ろして、お弁当とお茶を置いた。食べるのが楽しみだ。
そうして少し待つと、新幹線が動き始めた。
「わあ……」
最初はゆっくり。そしてだんだんと速く。気づけば以前に乗った電車よりも明らかにスピードが速い。これはすごい……! 窓から流れる景色もあっという間に過ぎていく。
「わあ……」
「こうして見ると見た目相応なんだけどね」
「はい?」
「なんでもないよ」
サキ様に頭を撫でられた。ちょっと気持ちいい。
三十分ほど乗ってから、お弁当を食べることにした。景色に飽きたというわけじゃない。本当に。ただ、ちょっと早めに食べておいた方がいいと勧められたから。
この後に是非とも窓から見てほしいものがある、らしい。楽しみだね。
お弁当は、お肉がたっぷり入ったお弁当。なんでも有名な牛肉を使ったお弁当らしい。食べてみると、とても柔らかいお肉だった。すごく美味しい。
「美味しい……!」
「あはは。喜んでもらえて嬉しいよ」
これは本当に美味しい……! 冷めてるのに、それでも! むしろ冷めることを前提として作られているのかも……? とにかく、柔らかくて、ジューシーで、美味!
「冷めているお弁当もいいものですね……!」
「うんうん。特に駅弁って、電車内で食べるからこそ美味しいっていうのもあると思うよ」
「なるほど!」
確かにこれを家で食べても、むしろちょっとがっかりかもしれない。家でなら温かいごはんの方がいいと思うから。
でもこの電車内ならそれが当たり前で、特に普段では絶対にできない食べ方という特別感もあって……。うん。サキ様の言葉にも納得だ。
「いろんな種類があるから、帰りにも買おうね」
「はい……!」
それはとても楽しみ。きっと他にも美味しいものがあるんだろうなあ。
駅弁を食べた後は、のんびりと。サキ様からラノベというものをお借りしたので最近はそれを読んでる。いろんな世界がある、と思ったけど、サキ様が言うにはこれらは創作らしい。
でも……。探せばこういった世界もありそうだとは思う。
そうしてしばらく呼んでいたら、サキ様に肩を叩かれた。
「はい?」
「あれ見て」
サキ様が指差す先、窓の外。窓から景色を見てみると。
「わあ……」
大きな山が見えた。少し雪が積もった大きな山。他の山と比べても一際大きい山だ。大きい上に、とても綺麗に見える。美しい山だね。
わたしの世界にも大きな山はあったけど、あんなに綺麗に見える山はあったかどうか。ちょっと登ってみたくなってしまう。
「サキ様」
「登るのはまた今度ね」
「はい……」
さすがサキ様。わたしが言いたいことを察してくれたみたい。いずれ必ず登ってみたい。
「ちなみに、さっきの山は富士山って言って、この国の象徴みたいなものだよ」
「神域の象徴……! なるほど、雄大で美しいわけです!」
「評価が一段階上がった気がするなあ。あくまで、この国の、だからね」
神域にもわたしの世界みたいにいくつか国があるんだっけ。神様でも国という概念ができるなんて、不思議だ。神様ほどいろんなことができるなら、争う必要なんてないと思うのに。
しかも聞けば、言葉すら違うらしい。むしろ言葉がいくつもあると聞いた時は本当に驚いた。だって、わたしの世界はサキ様たちが使う言葉で統一されていたから。
これもまたウンエイ様が何かしていた、ということかな? さすがはウンエイ様だ。早くそのリーダーの方に会ってみたいなあ。
その後は特に何事もなく、東京駅というものにたどり着いた。
「サキ様」
「うん」
「駅が……すごく広いです……!」
「あははー」
最初の駅も大きな施設だと思ったけど、この東京駅はもっとすごい。たくさんの階段があって、それぞれ別の場所に行く電車に乗るホームに繋がっているのだとか。
そんなにたくさんの種類の電車が来るなんて……! この駅、この街はそれだけ特別なのかな?
「東京は日本の……この国の首都だからね」
「首都、ですか?」
「そう。この国の一番偉い人とか、そういった人が住む場所とか……。そんな場所がたくさんある。日本の中心地、だね」
「一番……偉い人!」
それは当然、サキ様のお父さんよりも偉いんだと思う。一つの世界を作る組織を率いる人、そんな人よりも偉い人……。どんな人なんだろう。
それこそ、個人で世界を作るぐらいはしてしまうんじゃないかな。一番偉い人というのも会ってみたい。会えないかな。
「会えませんか?」
「いやあ……。さすがに無理だよ。繋がりが一切ないから」
「サキ様のお父様もですか?」
「うん。会社の一社員程度じゃ無理かな」
そんな……。サキ様のお父さんはこの世界でもかなり上の人だと思っていたのに、実はそうでもないらしい。この世界は魔境だ。
「そんなことより、次はこっちだよ」
「はい!」
サキ様に手を引かれて、次の電車に乗る。次は普通の電車。新幹線は長距離を移動するための電車らしくて、もう帰る時ぐらいにしか乗らないとのこと。残念。
壁|w・)新幹線にはしゃぐ子供(魔女)




