第九話 怨恨
自創作【エンジェルアトリエR】のストーリー小説です。
初心者ながら、キャラクターの背景や物語を頑張って組んでいるので読んでいただけると作者が歓喜の渦に呑まれます。
舞台は日本、ストーリー内では主に東京近辺で起きた事にフォーカスを当てています。
「あぁ…どうして…またこうなった…もう産まない方がいいのかしら…」
啜り泣く声が部屋に響く。その部屋の中で強い感情を抱いたのは一人ではなかった。
その部屋には確かに、悲しみと憎しみの二つが渦巻いていた。
「続いてのニュースです。災害発生後の撤去を終え、各地で復旧作業が行われている中、多数の殺人事件が起きています。警察や天使方も調査していますが、未だ進展は見られないようです。皆様、どうか解決するまで不用意に外出しないよう、お気をつけてお過ごしください。続いては…」
いかにも台本のような若干の棒読みでそう報じられる。
《…もうかなり広まってしまっているな…。》
人間界に調査に来ているクライシスとその部隊。クライシスは隊員に散開し調査するよう指示をし、各自散っていく。
《三番隊各員に告ぐ。対象が堕天使化人間か分からない。人間の場合は捕縛、堕天使の場合は俺に報告の後、戦闘はせず追尾せよ。》
全員からの了解を確認し、クライシスも動き出す。
約一時間経過後、隊員から通信が入る。その通信には悲鳴も入っていた。
《何事だ!》
《殺人事件の犯人と思われる堕天使を発見、人を襲おうとした為やむを得ず戦闘中です!尋常じゃないパワーを持ってます!場所はエリア五番!大通りです!》
通常の通信を切った音ではなく、ザーという破壊音が流れる。明らかに異常事態。クライシスは飛び立ち隊員の元へ向かう。
数分後、現着。現場は悲惨だった。
そこにいた隊員は倒れ伏し、血の臭いが溢れている。
クライシスが降り立つと、堕天使の下に人間の死体が見えた。
それを見た瞬間剣を取り出し斬りかかる。堕天使は防御姿勢すら取らず受け止める。傷一つ付いていない。
硬化した帯のような部位が動きだした。
【チ…ガガガガ…オマエエエエエエ…ハ…ママ…マ…ジャナナ…イ…】
そう確かに言った後、弾き飛ばされる。
《なんだと…?貴様…今何と…》
黒い球のようなものをいくつも飛ばしてくる。
クライシスは交わしつつも位置の分かりやすいコアを貫きに走る。しかし、フルオートかのように帯が守り中々突破出来ない。
《クソ…あまり使いたくはなかったんだがな…》
剣を左手に移し、右手を構える。すると、周りの既に崩壊していた瓦礫を浮かし一気に飛ばす。当然のように防がれるも、倒れていた隊員を浮かし操り、銃を構えさせ一斉掃射。その防御に帯を回した隙を付き攻撃を仕掛ける。
剣が無防備になったコアを貫く。一斉掃射が止むと同時に、【ギャアアアアアアアアア】と鳴き声を発し帯のような部位が暴走していく。
クライシスは隊員を操ったまま全員で帯が届かない場所へ避難し、しばらく様子を伺っている。
数十秒後、だんだん暴れる帯の勢いが落ちていきぼたぼたと体が溶けていく。
やがて地面に落ち、浮こうとしても浮くこともできず、体を維持する事がやっとの様子。
《まずいな…あのままじゃコアが治っちまう…。》
先程とは違い今はコアの位置が見えない為、迂闊に手を出せばまだ蠢くそれに取り込まれてしまう可能性がある為クライシスが危なくなる。
《今は…こいつらの治療と報告を急がなくては…》
そう言い、再び剣を構える。すると、溶けていく堕天使から声がした。
【ド…ドド…シテ………ボク…セ……ジャナ……………ア…………タス………】
まるで「助けて」と言うような声を発した瞬間、空から鎌が降ってきて堕天使のコアを的確に貫いた。
飛び散る泥状の液体と突き刺さる鎌。その状況にクライシスは唖然とする。
〈ほウ…。私にチャンスをよこセと願った挙句、ピンチになッたら助けまで求めるのですネ。〉
一見子供にしか見えない紫髪の少女は、少し機械音のような声でそう言った。
第九話です。低級なのか、中級なのか。はたまた上級か。そして紫髪の少女。敵か味方かどっちなのでしょうね。