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第四十六話 豪雨

自創作【エンジェルアトリエR】のストーリー小説です。

近未来の日本にて人々を守る天使。滅ぼそうとする堕天使。勝敗の軍配はいかに。

「関東圏全域、特に東京付近にお住まいの皆さんは、これから来る大型のゲリラ豪雨に十分気を付け、無理に通勤通学をしないようにしてください。命が一番大切です。どうかーー。」

《ゲリラ豪雨ねぇ…。まぁこの時期よくある事だわな。》

戦争終結後、ストライクは休日にフューエルの家で地上のテレビをソファに寝転がりながら見ていた。フューエルは後ろでコーヒーを飲みながら一緒にニュースを見ている。

《まぁ、強いて気になるのなら今回のは関西からこっちの方までずっと強さが衰えずに来てる事だな。最早ゲリラではないレベルに。》

《まぁー…ここ最近オーシャンもなんか海が変って言ってたしそういうこともあんだろ。》

《ただの異常気象ならいいけど…。》

《心配しすぎだって。もしなんかあっても俺がいるし、隊員も何人か地上に張らせてる。ヴァルキリーの調整中でもなんとかなるさ。》

《うーん……。》

納得がいっていないような表情のままフューエルは湯気の立つコーヒーを片手に二階の自室へ戻って行った。


《(あの戦争で天使も堕天使も大勢が死んだ。ただ、幸いなのは紅煩の報告通りだったおかげでこちらの主要メンバーと人間界への損害が無かったこと…。それとヴァルキリーが新しい技に耐えられた事も収穫か…。)》

フューエルはオーダーメイドのロゴが入ったペンを回しながら机の前で考え事をしていた。

《(にしてもあの豪雨…。まるで一定範囲を囲うように移動して降ってるが…。全体の報告書ではあの範囲の中だけ、堕天使の被害報告数が零だった。その周りでは発見報告もあがっていたのに、あの雨の範囲だけ…。内側を見た天使が1人もいないのも気になる…。)》

フューエルは大きめの紙に幾つもの図形を書き記していき、自身の考えを書き込んでいく。そのまま一時間程経過した後、フューエルはオーシャンの元へ行っていた。オーシャンも休日だった為、船の上ではなく海上警備隊の隊員達と浜辺で遊んでいる所だった。

《おあ、フューエルじゃん。どったの?》

《貴方が知らないはずないと思いますが…。とりあえず今ちょっといいですか。》

《ほいほい、いいよ〜。私の部屋おいでなさいな。》


《…で、話って何かな。君が私の所に来るって事は只事じゃなさそうだけど。》

オーシャンの目付きが真剣なものに変わっている。

《…はい、最近…というか数日前からですが、豪雨が続いています。》

《そうだね。今はまだ遠いけど後二日もすれば関東にも来るとかだったかな。》

《そうです。その雨に関してなんですが…。》

フューエルは自分の部屋で考え付いた内容を図を用いて詳しく説明する。

《なるほどね。言いたい事はわかったけど、確信が持てない限り何とも言えないんだよね…。誰かしらに中の調査はお願いできないの?》

《それが…中に入ろうと雨に近付くと体が溶けるような感覚が伝わってくるとかで誰一人入れずじまいで…。》

《ふむ…。それは確かなの?》

《はい。ブリザードが力を流し込んだ氷柱を放り込んだらしいのですが、全て雨に触れた瞬間に溶けて消えたそうです。》

《けど建物や人間には害がなかったし、過ぎ去った場所での水害も無かった…。ならただの気象じゃなさそうだね。まるで私達に【入ってこないでください】って言ってるみたいだ。》

《私もそう思います。ですが、ブリザードでさえ入れないとなると手立てが…。》

《あるじゃない。》

《え?》

オーシャンが食い気味にそう答える。

《前にクレスって子がリーゼをどうのこうのって。あれ使えないの?》

《可能性無きにしも非ずですが…。いや、やる価値は大いにありますね。やってみましょう。》

フューエルが再びヴァルキリーを展開し軽く挨拶をしてから飛んでいく。


《クレスはいるか?》

《その前に身分証明を。念の為に。》

《あー…これでいいか?》

ヴァルキリがホログラム上に証明書を出す。

《はっ。確かに。クレス班長は中へ入って一番奥の倉庫のはずです。》

《了解、警備お疲れ様。》

フューエルは入り口の警備員の肩を軽くたたき中へ入っていく。

《クレス、諸事情でリーゼを使いたいんだが…。》

フューエルが巨大倉庫の扉の横にある天使用の出入り口の扉を開けた瞬間、爆発音と共に色々な細かい部品が吹き飛んでくる。クレスと共に。

《ダーーーーークソッ!!これもダメなのかよ!!》

起き上がると同時に怒号を放つクレス。唖然とするフューエルの目の前には、修繕を終え二台目であろう真っ白なリーゼが保管されていた。様々な配線やクレーンにがっしりと繋がれて項垂れるようになっている。研究班や整備班も一丸となりリーゼのペイントや配線等を仕上げている。

《…あー、都合悪かったかな?》

《あ?あぁ…フューエルか。悪い、今は取り込み中だ。要件だけなら聞いておけるぞ。》

クレスが大きなマスクを外しフューエルに寄ってくる。

《あぁ、可能ならば明日までにリーゼを動かしたいんだ。例の雨の調査に必要で…。》

《明日か…多分できない事はないぞ。後は心臓となるコアパーツと搭載予定のガジェットだけだしな。ガジェットは出来てるからあとは組み込むだけ。コアはまぁ…見ての通りだが。》

《明日の夜でもかまわない。が、早くて悪い事はない。雨が来るまでには、頼んだぞ。》

《俺らに任せな。だからこそのこの研究所だからな。》

クレスは頼られた事が嬉しかったのか上機嫌にリーゼの方へ戻っていく。

《おーしお前ら!警備隊隊長様が明日までにとの御所望だ!仕上げんぞ!!》

レンチをくるくると投げてキャッチしてを繰り返しながらクレスが歩いていき、研究所のメンバーの掛け声を背にコアパーツの整備を再開した。

フューエルは少しはにかみながらも、研究所を出て行った。

四十六話。雨に近付けない天使の対策は上手くいくのか。

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