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「今日はどうだった?」
「うん。大変だったわ」
あの後しばらく考えてたけど、1人で考えたところで答えでも出る訳なくて、シスが帰ってから聞こうとその場は諦めて紙を探して戻ったら大人たちは全員殴り合いの喧嘩してて止めるのに苦労したから。
何で喧嘩してるの?! って慌ててる内にスザンヌが連れて来た双子は喧嘩にびっくりしたのか逃げ出して捕まえるのにかなり苦労した。
喧嘩が止まったのがシスが帰って来るちょっと前、そこからバタバタと片付けてってしてたら思ったより時間ぐったりしてしまった。
「今日夕飯はシチューとパン貰ったからそれにしようか」
「分かった」
質素過ぎると思ったけど、ここじゃこれが普通なんだと言われれば従うしかないけど、せめて果物だけは! とシスにお願いして夕飯には果物を付けてもらってる。
今日はオレンジみたいだ。すっぱいのじゃないといいな。
「夕飯が済んだら話があるの」
「話?」
「うん」
今日見た絵について聞きたい。
もし母さんの弟じゃないとかおもいっきり話とかきたら夕飯が入らなくなっちゃいそうだから。
不思議そうな顔のシスを横目に夕飯をいただいた。
「そういえばシチューとパンいただいたって言ってたけど誰から?」
「アリシアはまだ会ったことないけど、通りの奥に飲み屋があってね、そこの店主に貰ったんだ」
「そうなの」
そんなお店があったなんて知らなかった。飲み屋だったらあたしは行けないな。
シスに今度行く時にお礼を言っといてもらおう。
「話ってこのこと?」
「ううん」
穏やかなシスの表情に本当に聞くべきか? と一瞬悩んだけどやっぱり気になる。
「あ、そうだ! その前にアリシアちょっといい?」
「へ? あ、うん」
どうやって話を切り出そうかと悩んでるとシスです立ち上がりこっちとアトリエの方に向かって歩き出す。
「朝に懐かしい物を見つけてアリシアに見せないとと思って出してたんだけど、カビ臭くなってないといいな」
シスはそう言うとアトリエの明かりを付けて中に入った。
「僕が何年も前に描いた物だから」
「ねえ、シス」
「ん?」
「あたしの家に母さんが赤子を抱いた絵があるんだけど、それってシスが描いたの?」
「うーんと、姉さんには何枚かあげたけど、その内の一枚にあったと思うよ」
「そっか」
じゃあ、シスは母さんの弟でいいんだ。あたしの勘違いだったんだ。
「でも、どうして?」
「ううん。あの絵は好きだったからシスが描いたか知りたかったの」
「そうなんだ。はい、これ……あ、額縁とかはないけど許してね」
シスが取り出したのはやっぱり昼間あたしが見た絵だった。
「ううん。ありがとう」
これは帰ってから一番いい額縁に入れてあたしの部屋に飾るから。それとも今使っている部屋に飾らせてもらおうか迷う。
「ねえ、シスって父さんに会ったことある?」
「結構前だったからなぁ。なんか厳しそうな人だとは思ったけど」
覚えてないのかな? でも──
「あのね、お願いがあるの」
「なんだい?」
「いつかあたしと父さんと母さんとシスの家族の絵描いてよ」
「え、僕も?」
「うん。シスも家族じゃん」
母さんの弟だし、父さんの義理の弟でもあるなら問題ない。
それにこんなに嬉しいサプライズをしてくれるんだもん。今はまだ無理でもいつかシスのことをお父さんと呼んでやろう。
言ったら嫌がるかな? お兄さんがいいって言うかも。でも、言った瞬間の反応が楽しみだ。
「そんなに嬉しいの?」
「うん! ありがとうシス!」