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「ライアにかい? まあ、俺たちもいつも世話になってるからいいよ。で、いつするんだ? 俺んとこは火曜休みだが、ドミニクのとこは土曜休みだし」

「あー、考えてなかった」

「そこは考えておけよ」


 呆れた顔をするのはお肉屋のジョン。


 洗濯屋のマルサとパン屋のスザンヌと果物屋のトレイトはいつでもいいって言ってくれたから深く考えてなかった。


「場所はどうすんだ?」

「あ、それはうちでしようかと」

「馬鹿言え。この通りの人間は殆どライアに世話になってんだ。かなりの人間が集まると思え! 会館を借りとくか、無理ならこと通り一帯使って祝おうぜ!」

「わ、わかった」


 そこまで? なんだか大事になりそうな予感に早まってしまったかと不安になってくる。


 シスが会館ってどこだっけと言うのでさらに不安になりそう。


「おい、お前が不安そうにするなよ。嬢ちゃんが不安がるだろ」

「え、あ、そうだね」

「シスは会館の手配な。俺は他の奴らに声を掛けるから。嬢ちゃんは……そうだな会場の飾り付けを女たちと頼む」

 

 飾り付けってどんなのをするんだろ? 父さんが生きてた時はパーティーとかはあったけど、壁に何か貼ってあっただろうか?


 カーテンを新しくするとか? お花飾ってあったわよね。お花飾ればいいか。大きな花瓶は会館にあるのかな?

 

「すぐに女たちに声掛けるから飾り付けを作る場所はシス、お前ん家を貸せ」

「いいけど、絵の具で汚いよ」

「嬢ちゃん居るんだから大丈夫だろ。それ、ライアが作った服だろ? そんだけ綺麗なら大丈夫だろうけど、女たちには汚れてもいい服で来いって言っとけ。嬢ちゃんは帰って飾り付け作る女たち出迎えてくれ」

「……はい」


 何だかのけ者にされた気分だけど、飾り付けも立派な仕事だと言われるとそれ以上言えない。


 シスとジョンに挨拶して家に戻った。




◇◇◇◇◇◇  




「ちょ、紙足りないよ!」

「それより、糸だよ。誰か買ってきて!」

「あー、こらマリンとシフォンは走らないの! ごめんアリシアちゃんちょっとあの子たち見といてくれないかな」

「ちょっと、アリシアちゃんには飾り付けの指示してもらうんでしょ」

「あ、そうだった。じゃあ、レア見といて!」

「何であたしが。あんたの子どもなんだから自分で面倒見なさいよ」

「あたし飾り付けしないとだしぃ」

「あたしだってそうよ。ぐだぐだ言ってるなら連れて来なければよかったのに」

「いやーお母さん居ないと寂しいでしょ」


 何でこんなにうるさいんだろ。


 何かの材料が足りないと騒ぐ横で喧嘩が始まってるし、スザンヌが連れて来た双子の女の子たちはさっきから追いかけっこしていて騒がしい。


 これで集まってから一時間も経ってないっていう。もう一度言うけど、何でこんなにうるさいんだろ。


「シスのアトリエに大きな紙あったわよね?」

「あ、はい。持ってきましょうか?」


 思わず回想に入りかけたところでトレイトに声を掛けられて我に返った。


「そうね。それまでにあの2人大人しくさせておくから」


 トレイトの頼もしい言葉にお礼を言ってからそっとその場を後にした。


「お邪魔します」


 シスは今居ないけど一応ね。


 アトリエの中はしんと静まりかえり、リビングの騒々しさとは雲泥の差だ。


 その静けさの中外から入る優しい日の光にホッと息を吐く。


 シスの絵はそんなに好きじゃないけど、この場所の静けさは好きになりそう。


 今度シスが絵を描いてる横で本を読ませてもらおう。


 そう決めてから紙がある場所を探す。家の中は案内してもらったけど、細々とした物の位置はその都度教えてもらってるし、アトリエはシスの作業場だからってのもあってあんまり入ったことはない。


 だからこの時も目当ての物を探すためにうろうろしてた。


「あれ? あ……」


 動いてる間に布が引っ掛かってしまったらしく埃よけにしている布がするんと落ちた。


 直さないとと布を持って絵に被せようとして絵を見てしまった。


「あれ、これって……」


 柔らかそうな金の日差しの中幸せそうに微笑む金髪の女性。


 二枚目の絵も同じ女性で楽しそうに水遊びをしている。三枚目は一枚目と二枚目よりも拙い筆遣いだけど、あどけない顔をした同じ女性。いや、それよりも──


「家で見た絵と同じ?」


 場面やポーズは違うけど、同じタッチの絵だ。


 シスは母さんの弟だから母さんに絵を送ったとしても不思議じゃないけど、どうしてあたしに母さんの絵があるって教えてくれなかったの?


 そういえば執事も絵描きがいるとは言ってたけど、母さんの弟って言ってなかった。


 もしかしたら執事が知らかった可能性もあるけど、どうしてシスはこの絵のことを言わなかったんだろ。


「シスは本当に母さんの弟なの?」

 

 じわりと広がった疑問は胸の奥で嫌な感じに広がっていつまでも気持ち悪くあたしの中に居すわった。


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