第五章1 再会 仲間達と共に
第五章開幕です!!
「ロディ! フィリア! それにレイシアさん!」
急いで駆けつけた私は、三人の名前を呼ぶ。
〈ウリーサ〉のツートップ――〈総長〉たるテレサと、その右腕たるカモミール。
両名の出現により大きく隊列を乱した王国兵の間を縫って、三人の姿を探す。
やがて、魔術師と騎士が混じった集団の先頭にて――テレサとカモミールを前に身構える三人を見つけた。
「三人とも無事?」
「おう、誰かと思えば愛しのマイハニー☆カースちゃんじゃねぇか?」
ロディはわずかにこちらを振り返って軽口を叩く。
だが、その表情の端々にぴりぴりとした緊張が見えた。
視線こそこちらを向いているけれど、意識は前方の強大な敵の方に向けているのだ。
「おにい戻ってきてくれたんだ」
「うん。一人にして悪かったね」
「いいんだよ! でもフィリアちょっと大変だったから、今度ご褒美でフルーツタルトの食べ放題に連れてって?」
「何その、ちょーマニアックな食べ放題は……本当にそんなのあるの?」
「ないよ? だからケーキ屋さん一〇件くらい梯子して、あるだけ買い占めるの!」
ふんすっと胸を張るフィリア。
敵を見据えながらも、ジョークにキレがあるのは流石だ。(最も、本人は真面目に話している節が否めないが)
「貴様、王女の身柄はどうした?」
前にいるレイシアが振り返ることなく、どこか不機嫌そうに鼻を鳴らしながら聞いてくる。
「安全な場所まで避難させました。今頃は王国からの迎えと共に、王宮に戻っているはずです」
「そうか……ならいい」
「ところで、なんでちょっと機嫌が悪いんです?」
「う、五月蠅! 余計なお世話だ! ……(まったく、王女と二人きりだったことに妬いてるなんて、言えるわけがないだろう)」
「? 何か言いました?」
「ッ! な、何も言っておらん!」
ずっと前を見据えているせいで、彼女の表情は窺えないが。
何やら耳まで真っ赤に染めて怒っているらしい。
そんな彼女の姿に、私は疑問を覚えて――
「それにしても、よくあの御方が王国に帰ることを素直に受け入れたな?」
問い詰める前に、ロディに何やら意味深な言葉をかけられ、そちらに視線を移した。
「どういう意味?」
「どうもこうも言葉通りの意味だ。殿下は内気な性格の割に、変なところで勇猛っつーか、吶喊気質だからな。てっきり、「私も一緒に戦わせてください!」とか言って聞かないんじゃないかと……」
「……。」
「……アタリなのかよ」
私の沈黙を肯定と受け取ったロディが、はぁ~とため息をついた。
「相変わらず、なんとも蛮勇なお嬢様で」
「でも大丈夫だよ。いろいろ理由を言って、帰ることを受け入れて貰ったから」
「当たり前だ。こんなところに連れてきて、みすみす殺すわけにはいかねぇだろうが。女の墓の前で拝むなんざ真っ平ごめんだぜ、俺は」
「同感だよ。ロディのくせして、カッコいいこと言うじゃん」
「ハハッ、惚れ直したか?」
「惚れ直すどころか、惚れたことすら無いけど?」
ロディの言葉を軽くあしらい、私はいよいよ目線を前に向けた。
今目の前にいるのは、数十人の魔術師達と――二人の男女だ。
一人は、モブだと思ったらチョー強かったもやし男のカモミール=カモンヌ。
そしてもう一人は、今のところ謎が多すぎて真意が読めない敵の首領、テレサ=コフィンだ。
「ようやく話が終わったのかも?」
「ふふふ。このワタクシを前に、皆さん随分と余裕ですわね……?」
バチバチと。
私達の間に氷のような火花が散り、空気が張り詰めていく。
もう間もなく、戦闘が始まる――
その予感が否応なく高まっていくが、その前にどうしてもテレサに聞きたいことがあった。
それは――




