表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/304

第四章29 思わぬ接敵

「とにかく、これであと数分もしないうちに、本隊がここに攻め込むはずです。私達は、その隙に安全な場所まで逃げましょう」


 私は、セルフィスに手を伸ばす。

 迷い無くその手を取ったセルフィスをひっぱり上げて、先程と同じように彼女の身体を半ば横に抱く姿勢を取った。


「〈ディストピアス〉の正門を潜るのは危険なので、周囲の石壁を乗り越えて外に出ます。少し身体に負担がかかってしまうかもしれませんが、我慢できますね?」

「ええ、もちろんです」


 そう答えた王女に頷き返し、私達は〈ディストピアス〉からの脱出へ向けて動き出した。



△▼△▼△▼


 一〇分ほど通りを進むと、〈ディストピアス〉を囲う石壁のたもとまで来た。

 そこそこ大きな通りを歩いてきたのだが、魔術師はおろか住民の姿すら見えなかった。

 

 おそらくこの異常事態で、皆家の中に避難しているに違いない。

 そのお陰で、誰にも見つかることなくここまで来られたのではあるが。


「ここまで来たら、さっさと壁を乗り越えて脱出しちゃいましょう。私の腕にしっかり掴まって――」


 ちゅどぉおおおおんッ!


 突然派手な爆音がして、その方角を振り返る。

 さして遠くない場所から、炎と煙が上がっている。


 位置的に正門の方だ。

 ということは、つまり――


(始まったんだ……)


 図らずも、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 ロディ達の討ち入りが遂に始まったらしい。


 今、魔術師達は大混乱におちいっているはずだ。

 二人の侵入者を追っていると思っていた魔術師達が、実は一人しか追っていなかったことに気付き、同時に王女が助け出されてしまったことを知る。

 その混乱に拍車はくしゃをかけるように、ロディ率いる本隊が〈ディストピアス〉に流れ込んだのだ。


 〈ウリーサ〉の魔術師達の指揮系統はズタズタ。烏合うごうの衆と化していることだろう。


 そんな状況で、密かに街の外へ脱出しようとしている私達を、〈ウリーサ〉の連中が見つけることなんて到底ムリ――


「今の爆発はなんだ! 正門の方から聞こえたぞ!」

「待て、道の真ん中に誰か居る! あれは……人質にしていた王国の王女じゃないか! となりの奴が逃がしたのか!?」

「次から次へと厄介ごとをッ!」

(いや見つかるんかい!)


 私は心の中でツッコミを入れた。


 どうやら、爆発音を聞いた数人の魔術師達が駆けつけたらしい。

 最後の最後で発見されるとは。

 しかも、厄介なことに〈契約奴隷サーヴァント・スレイヴ〉まで引き連れている。


「くっ! しっかり掴まっててくださいよ!」


 私はセルフィスを抱えたまま、石壁に向かって駆けだした。


「逃がすなッ! 《削命法レーベン・ラオベン霹靂ブリッツ》ッ!」


 紫電が音速を超える速さで肉薄する。

 対して、人一人を抱えたままの私の動きは、どうしても緩慢かんまんになってしまう。


「えぇいッ!」


 だが、気合いで身を捻ってなんとかその攻撃を回避することに成功。しかし、無理矢理回避したために、私の体勢は大きく崩れてしまう。


「《削命法レーベン・ラオベン霹靂ブリッツ》ッ!」


 そこへ、間髪入れずに飛んできた二発目の雷撃が容赦なく私を襲う。

 体勢を崩した私が、それに対応することなどできようはずもなく。


 ドスッ。


 鈍い音を立てて、雷撃の槍が私の腕を貫通した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ハーレムを自覚させてきた後の命の危機〜!!!!! 落差が凄い!!!!そこがいい!!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ