表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/304

第四章15 危機脱出の一手

「おにい、何する気?」

「まあ見てなよって……それとフィリア、目を瞑ってた方が良いよ」


 フィリアの細腕を掴んだまま、そっと耳打ちする。


「? それってどういうこと?」


 眉根をよせて聞いてくるフィリアに、にやりと笑って見せ――


「おいテメェら、何をこそこそ話してんだ?」

「言っておくが、今更この状況から逃げ出そうったって、そうは行かないぜ? 貴様等の周りは、完全に囲っているのだからな!」


 自分たちの勝ちを信じて疑わない魔術師達。

 そんな滑稽こっけい極まりない彼らの方を向いて、私は淡々と告げた。


「本当に、逃げ道を全部塞いでいる気なんですか?」

「……何が言いたい?」


 訝しむように私の方を注視してくる、魔術師達。

 彼ら全員の注意が私一点に向いたと悟った瞬間、私は宝石の一つを頭上に放った。

 

 当然、何を仕掛けてくるのか目を見開いて見守っていた魔術師達の視線は、投げた宝石に釘付けになっている。

 それでいい。計画通りだ。


「《珠玉法シュムック琥珀アンバー光輝スパーク》ッ!」


 猛烈もうれつな光が私の頭上で弾けた。

 光の魔術で、閃光をいたのだ。

 激しく発光する光球が辺りを昼間のように照らす。


 その光球を直視してしまった魔術師達が、無事で済むはずも無く――


「ま、眩しいッ!」

「目がぁ、目がぁッ!」


 皆一様に目を押さえて悶絶し、その場にうずくまる。

 しばらくは目がくらんで、まともに動けないはずだ。


「さて、逃げようか」


 私は、もう一つの宝石を真下に置いて、呪文を唱える。


「《珠玉法シュムック翠玉エメラルド暴風ストーム》」


 それに応じてエメラルドが淡く輝き、突風が生じる。

 真下から突き上げる暴風が、私達の身体を上空に飛ばした。


「ちょ、ちょっとおにい! 下から風起こすのは無し! スカートがめくれて……ッ! ひゃあッ!?」


 フィリアは慌ててスカートの裾を抑えるが、その拍子にバランスを崩して突風のエレベーターから落ちかける。

 そんなフィリアの腕を強く掴み直した。


「暴れないで。体勢崩したら、地面まで真っ逆さまだよ?」

「そ、そんなこと言ったって、今パンツ丸見えなんだから! おにいはズボンだから関係ないかも知れないけど、フィリアはぁッ!」


 きゃんきゃん喚き立てるフィリアに、「どうせ誰も見てないよ」と答える。

 下に居る魔術師は目が眩んでいるせいで、ラッキースケベな展開も叶わないのだ。


 上を見れば女の子のパンツがあるのに、見ることができないというのは、男としては発狂モノだろう。

  

 アンラッキーな魔術師達を置き去りに、私達は近くの建物の屋上へと降り立った。

 下を見下ろせば、相変わらず悶えている魔術師達の姿が。

 まだ視力が完全には戻っていないらしい。この隙にさっさとここを離れるとしよう。


「フィリア、行くよ」

「う、うん」


 私はフィリアを連れ、そそくさとその場を後にした。



 △▼△▼△▼

 

「それで、これからどうするの?」


 建物の屋根から屋根へ飛び移って移動している最中、後ろから付いてくるフィリアが聞いてきた。


「どうするって……そりゃあ追っ手も撒いたし、〈ネグスト神殿〉に向かうんだよ?」

「〈ネグスト神殿〉?」


 フィリアは、小首を傾げる。


「王女様がとらわわれてるのって、帝国政府の地下なんじゃないの?」


 ああ、そうか。

 そういえばまだ、テレサと出会って話したことを、フィリアに伝えていなかった。

 追っ手を振り切るのに必死で、すっかり忘れていた。


 私は足を止め、フィリアの方を振り返る。


「今からちょっと大事な話するけど、よく聞いてね」

「うんわかったよ。右耳から入って左耳から抜けなければだけど――」

「よ く 聞 い て て よ ? 大事な話だから」

「……うん。わかったから、目がマジなのやめて。怖い……」


 萎縮するフィリアに構わず釘を刺し、私は先程テレサから聞いたことを告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] <下に居る魔術師は目が眩んでいるせいで、ラッキースケベな展開も叶わないのだ。 <上を見れば女の子のパンツがあるのに、見ることができないというのは、男としては発狂モノだろう。 あ~かっこい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ