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第四章14 絶体絶命?

「「《削命法レーベン・ラオベン結氷アイシクル》ッ!」」


 二人の魔術師が、同時に魔術を起動する。

 凍気を纏った二つの氷柱つららが、高速で私の前に立つフィリアめがけて迫る。

 その蒼銀そうぎんの切っ先が、フィリアの身体に突き刺さる直前。

 

「《――霹靂ブリッツ二重奏デュオ》ッ」


 私が先読みで唱えていた、雷撃の魔術が完成。

 二条の紫電が飛び、今まさにフィリアを捉えんとしていた氷柱と衝突。


 パキンと涼やかな音を立てて、氷柱は割れ砕ける。

 

「な、なんだとッ!?」

「バカなッ!?」


 魔術を掻き消されたことで、二人の魔術師は一瞬狼狽うろたえる。

 その隙を突いて、フィリアが動いた。

 

「やぁああああッ!」


 声高に雄叫びを上げ、爆ぜるように動いた。

 刹那の内に魔術師の懐に飛び込んだフィリアは、抜き手もかすむむ速度で剣を抜き、一閃。


「ぎゃぁああッ」


 魔術師の一人が呻き声を上げて倒れ伏すのを見届けず、返す刀でもう一人を切りつけた。


「ぐぅッ」


 切り口からパッと血の華を咲かせ、もう一人の魔術師も呻きながら倒れる。


「よくもやってくれたな!」

「許すまじ!」


 そんな怒りに満ちた声が背後から聞こえる。

 振り返れば、後ろに展開していた魔術師達が詠唱を始めていた。

 そのかいなには、バチバチと紫電が弾けており――


「させない! 《珠玉法シュムック翠玉エメラルド暴風ストーム》ッ!」


 エメラルドを放りながら叫ぶ。

 同時にエメラルドが弾け、巨大な渦巻く風が路地全体を覆うように展開。

 ビュウビュウと音を立てながら、路地を駆け抜け。


「「ぎゃぁああああッ」」

「「うわぁああああッ」」


 後ろに展開していた魔術師達を悉く殴りつけ、暴風の中に巻き込みながら路地の彼方へと押し流していく。


「くそッ!」

「こいつら思ったより強いぞ!?」


 目に見えて狼狽ろうばいし、一歩二歩と後ずさる魔術師達。


 これで、粗方あらかたの魔術師達は倒した。

 残りの魔術師は前にいる数人程度。

 分の悪い賭けだったけれど……なんとか勝ちの目が見えてきた。


 思わずほくそ笑んだ、そのとき。


「いたぞッ!」

「計画通りこの路地に逃げ込んでいやがった!」

「この狭い路地では逃げ場なんてない! 挟み込むんだ!」


 路地の後方――大通りの方から、沢山の足音と声が聞こえてくる。

 それらは、どんどんと大きくなり――


「まさか、さっき大通りで撒いた魔術師達が追ってきた!?」


 その正体に気付いた途端、焦げ茶色のローブを身に纏った集団が、闇の向こうからぞろぞろと現れる。


(まったく……どうして突破口が見えた瞬間に、どん底へ突き落とすのさ)


 進路も退路も塞がれ、絶体絶命となった今、私は理不尽な現実を前にして大きくため息をついた。


 けれど、焦りはない。


(仕方ない。奥の手を使うか……)


 私はとあることを決意して。


「フィリア、ちょっとごめんよ?」


 フィリアの腕をガッチリと掴む。

 それから、懐に手を伸ばして二つの宝石を取り出した。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 訓練の成果を描写するのを先送りにしたことにより、どんな戦闘を繰り広げるのかわくわく感が出ていますね! こんな魔術を3日で覚えたカース君SUGEEEEEEEEEEEE
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