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第四章13 違和感の正体

「「「「《削命法レーベン・ラオベン霹靂ブリッツ》ッ」」」」

 

 至近距離で、魔術師達が雷撃の魔術を一斉に起動する。

 私とフィリアはすかさず剣を振るい、四方八方から襲いかかる紫電を片っ端から叩き落とす。


 けれど、こうして攻撃を捌きながら、私は自分の身体に違和感を覚えていた。


 以前戦ったときより、身体が少し重いのだ。そのせいか、思い通りに剣を振るうことができず、何度か攻撃を撃ち漏らしてしまう。

 その度に鋭い雷閃が全身を掠め、ダメージが蓄積されていく。


「だ、大丈夫!? おにい!」


 私が苦戦していることに気付いたフィリアが、フォローに入ってくれた。

 

「た、助かったよ」

「なんのなんの~」


 フィリアは得意げに答えながら、肉薄する雷閃を目にもとまらぬ速度で弾き返す。

 その軽やかかつスピーディーな動きは、まるで疾風はやてのごとし。

 小柄で運動神経のいいフィリアだからこそできる早業に思わず見とれていると、攻撃を捌きながらフィリアが問うてきた。


「おにいの動き、前よりちょっと鈍いけど、どうかしたの?」

「いや、それが私にもよくわかんなくて……でも、なんか身体が重いんだよね」

「ご飯食べすぎたんじゃないの?」

「そんなわけないでしょ!」


 誰かさんじゃあるまいし! とは、流石に言えない私であった。


「ごたごた話をしている暇があるのか! 《削命法レーベン・ラオベン火炎フレイム》ッ!」


 しびれを切らしたらしい一人が、詠唱する魔術を変えた。


 炎熱の魔術――物理的な破壊力や速度は雷撃の魔術に劣るけれど、ダメージを与える範囲は圧倒的に広いという特性を持つ。

 

 剣を盾代わりにしても防ぎきれないだろうし、逃げようにもここは狭い路地だ。

 避けることはできない。


 炎の塊が路地を覆い尽くして、私の前に立つフィリアに襲い掛かる。


(くっ! 間に合うかッ!?)


 私は咄嗟にダイヤモンドを投げ、口早に呪文を叫んだ。


「《珠玉法シュムック金剛石ダイヤモンド障壁シールド》ッ!」


 炎がフィリアを包み込むギリギリで、防御魔術の起動に成功。

 フィリアを守るように展開し、炎の激流を押しとどめる。


「おにい、ありがとう!」

「お互い様だよ」


 フィリアに向かって微笑みかけながら、私は別のことを考えていた。


(魔術は、上手く起動するんだな……)


 だとすると、身体が重い原因は……


(私が、女の状態だからか!)


 たぶん、男の時より筋力が無いんだ。だからさっき追っ手から逃げたときも、思ったより追いつかれるのが早かったのだ。


(この身体の時は、剣術は使わない方が良いみたい)


 要は剣術を使うなら、筋肉が多い男の子の状態。

 魔術を使うなら、魔力量が多い女の子の状態。

 それぞれを使い分けるのが、ベストということらしい。


 なんというか……非常に面倒くさい。


(テレサさんは、私の性別がある条件で変更できるって言ってたけど……まだその条件が何かわかんないしな)


 何とか近いうちに条件とやらを見つけるしかない。

 それはともかく、早急に対応せねばならないのは……


「ちっ。思ったより手こずらせやがる」

「全くだ」


 雷撃・炎撃共に止められた魔術師は、冷や汗を垂らしつつ構え直す。

 彼らとの勝負に、早く決着を付けねば。


 〈ディストピアス〉に侵入した目的は、戦うことではないのだから。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 男に戻ったのか!?と思ったけど、全然普通のことだった! 状況に応じてスキルを使い分けるっていうのは、読者から見ると楽しい展開であります。 作者は頭をかなり使いますけども!
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