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第四章10 激動の渦中へ

「いたぞぉッ!」

「こっちだッ! 侵入者を発見したッ!」


 にわかに辺りが騒がしくなって、見回す。

 すぐに、焦げ茶色に銀色の刺繍ししゅうが入ったローブに身を包んだ、数人の男達の姿を見つけた。


(げっ! アレは……!)


 その服装には、見覚えがある。

 王国騎士団に入隊した以上、相対することは避けられない連中。

 〈ウリーサ〉の、外道魔術師達だ。


「もう、見つかった!」


 急速に心臓が波打つ私を差し置いて、魔術師達がみるみる集まってくる。

 きっと、各所に散らばった仲間を呼んでいるのだ。

 このままここに居座れば、たちまち取り囲まれてしまうだろう。


「フィリア、行くよッ!」


 言うが早いかフィリアの腕を掴み、脱兎だっとの如く逃げ出した。

 

「ま、待ってよ!」


 突然私に腕を引かれて、フィリアは一瞬体勢を崩す。が、すぐに立て直して、私に繋がれたまま走り出した。


「逃げたぞ! 追えぇえええッ!」

「絶対に逃がすなッ!」

「B班、D班にも連絡を取れ! 先回りして行く手を塞ぐのだ!」


 そんな叫び声が後ろから聞こえてくるが、振り返ることなく大通りを走り抜ける。

 「何事か?」とこちらを向く一般人の視線を置き去りに、全速力で人々の間を縫って逃走。


「ねぇ、おにい! もう手離していいよ。走りにくい」

「わかった」

 

 フィリアの手を離し、身軽になったことで更に駆ける脚を速める。


「ねえ、あいつらって〈ウリーサ〉だよね?」


 走りながら、フィリアがそう問いかけてくる。


「そうだよ。信じたくないけど……ッ!」


 ちゃんとした作戦をフィリアと共有できないうちに、敵に見つかるとは、運がない。

 とりあえず、一端敵をいてからフィリアと話す他ないだろう。


「いや~、敵さんも総動員でフィリア達を追いかけるなんて、人気者は辛いですなぁ~」


 この切羽詰まった状況の中で、感極まったように何やらぼやいているフィリアの図。

 なんかもう、呆れを通り越して尊敬する。


 そんな私達の行く手を阻む者達がいた。

 人の波でごった返す大通りを塞ぐようにして、魔術師達が隊列を組んでいるのだ。


(くっ。さっきチラッと聞こえたけど、やっぱり先回りされていたんだ!)


 前を塞がれ、後ろからも魔術師達が追ってきている。

 【前門の虎後門の狼】とは、まさにこのこと。


 やはり、そう簡単に撒くことはできないらしい。

 悔しさに歯がみする私の目に、右手を一斉にこちらへ向ける魔術師達の姿が映った。


「ま、まさか! この人が密集した場所で魔術を使うの!?」


 驚きのあまり声を上げてしまったが、すぐに理解する。

 〈ウリーサ〉の連中なら、やりかねない。


 それが証拠に、行く手を塞ぐ魔術師達の左手には、虚ろな目の人々――〈契約奴隷サーヴァント・スレイヴ〉が繋がれている。

 紛う事なき、彼らが魔術を撃つ意志があるという証拠だ。


「くっ!」


 私の額を油汗が伝うのと同時。

 前にいる魔術師達が、一斉に呪文を唱え始めた。


「「「「《削命法レーベン・ラオベン霹靂ブリッツ》」」」」


 刹那、電撃の嵐が辺り一帯に吹きすさぶ。

 巻き込まれた人々は、断末魔を上げる暇も無く絶命し、その場に倒れ伏して行く。


 それでも尚、いかずちの猛威は衰えない。

 ゴロゴロと激しく明滅しながら、私達を覆い潰そうと迫る。


「外道が……ッ!」


 関係ない人間を容赦なく殺していく魔術師達に烈火れっかのごとき視線を向け、私は怒りのままに宝石を取り出した。


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 実はフィリアちゃんがここまで能天気なのは、前世は真面目ちゃんだったけど何か辛いことがあったからその記憶を封印している説を推してみます!!!!!
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