第十章23 見分ける方法
「え、ええ!? ど、どうなってるの?」
理解不能に陥って、首をぶんぶんと回す私。
そんな私をからかうかのように、番台さんが笑った。
「ふふふ。よく、そういった反応をされます。双子なんですよ、私達」
「ふ、双子? それにしては、あまりにも似すぎな気が……」
「似てはいますが、ちゃんと別人ですよ。私――都米が姉で、篭米が妹です」
今度は、後ろの女将さんが答えた。
声色まで瓜二つだから、頭がバグりそうだ。
状況を整理すると、女将さんが双子の姉の都米さん。
番台さんが妹の篭米さんらしい。
「二人を見分ける方法って、あるの?」
フィリアが、眉根をよせて質問する。
すると、二人は顔を見合わせて交互に答えた。
「私が本館にいれば、姉の都米で」
「私が別館にいれば、妹の篭米よ」
「「見分ける方法それだけ!?」」
私とフィリアのツッコミがハモった。
まことにややこしい姉妹である。
当の本人達は、こちらの反応を楽しんでいるのか、快活に笑った。
「だいじょうぶ。他にも、見分ける方法はあります」
都米は、しわの刻まれた頬を微かに吊り上げて、そう言った。
「他の方法?」
「はい。私の身長は一六二センチメートル。篭米の身長は、一六一・五センチメートルです。身長の高い方が、私と判断していただければ――」
「「わかるわけないじゃん!!」」
またもフィリアとハモる。
五ミリの身長差を見分けろと言うのか?
完全に無理難題である。
たぶん、視力検査で二・〇を叩き出す強者か、両目を顕微鏡に改造した人じゃ無きゃ、判別できないだろう。
「あとは……そうそう。目元の小じわが、私の方が少ないね」
「いやいや、私の方が少ないよ」
――なんか、今度はしわの数を判断材料にしてるし。
ていうか、これ、不毛な争いに発展しないかな……?
そんな私の危惧通り、なぜか口論に突入していた。
「私の方が見た目年齢は若いさね。毎日三〇分美容体操してるから、肌はたまごみたいに、ツヤっツヤだよ!」
「いいや、私の方が美容には気を配ってるよ。なんせ、毎日一時間、美容の効能がある温泉のお湯に浸かってるんだからね!」
「それを言うなら、私は――」
「ま、まあまあ。一応違いはわかりましたから!」
姉妹喧嘩? をしている二人を強引に引き離し、私は言った。
「とりあえず、本館にいるのが都米さんで、番台にいるのが篭米さんて認識しておきますんで」
「その認識で構わないよ」
篭米は、満足そうに頷きながら、親指を立てた。
「――それで、確か浴衣とタオルだったね。ちょっと待っといで」
篭米は番台の後ろにある暖簾をくぐって、奥の部屋に入っていく。
しばらくして、綺麗に折りたたまれた浴衣とタオルを手に持って、出てきた。
が、なぜか申し訳なさそうに表情を曇らせている。
「ごめんね。浴衣が、女の子用はもう四つしかないみたいで……一人、男の子用でもいいかね?」
温泉で浴衣のストックを切らしているのは致命的だが、よくよく考えればここは下座だ。
まだよく、この街を理解していないが――決して、足りないことに文句を言えるような場所ではないのは、よくわかっている。
「構いませんよ」
「そうかい、すまないね」
問題は、誰が男用のを着るかだが――
そのとき、レイシアが呟いた。
「男用のを着るのは、フィリアでいいだろう?」
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