表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

297/304

第十章17 思わぬ形で再開?

 バンッ!

 音を立てて、本殿の扉が開いた。


「いやぁああああああああッ!?」


 ぎょっとして飛び上がってしまう私。

 

「な、なな、なんなのだ!?」


 扉を開けた主も、驚いて尻餅をつく。

 胸元に据えられた宝石のペンダントが、大きく左右に揺れた。


 足下に座り込んだ人物を見て、私も目を丸くする。


「ぁあああああッ……あ、れ? シェリー?」

「びっくりしたのだ。おどかさないでほしいのだ」


 探し人――シェリーは立ち上がり、おしりについたホコリをパンパン払いながら言った。


「どうしてここにいるのだ?」

「いやいやいや。その台詞、そっくりそのまま返したいんだけど!?」


 すかさず突っ込む。


「なんでこんな人気ひとけの無い場所にもってたの! ていうか、ここ本殿だよね? 神様がたてまつられてる神聖な場所だよね!? 入っちゃダメでしょ!」

「ボクは神様とか信じないタイプだから大丈夫なのだ」

「いやそうかもしれないけど……大丈夫? 呪われない?」

「知らないのだ。そういえば、今ここで宝石の加工をしてたけど、今日は珍しく手元が狂って、ナイフで指を切ってしまったのだ。でもきっとこれは、ボクの不注意だから関係ないのだ!」

「いやぁ……かんっぜんにたたりだと思うんですがそれは……」


 最早呆れてものも言えない。

 

「まあとにかく、シェリーが人気の無い真っ暗な場所にも動じず、容赦なく神様に喧嘩を売る、肝が据わった人間だってことはわかった?」

「バカにしてるのだ?」

「いいや褒めてるよ(棒)」

「ならいいのだ!」


 機嫌良く鼻歌を歌いながら、本殿を出るシェリー。

 なんというか――非常におめでたい人だ。


 心の底からそう思った。


 ――元来た道を戻る。

 シェリーを見つけた今、もうこの場所に用はない。


 けれど、待ち合わせに指定した場所からは、随分と離れている。

 境内けいだいから下に続く階段を降りながら、ちらりと夜の景色に視線を飛ばす。


 ここからだと、下座の街が、ある程度見渡せるのだ。


 待ち合わせに指定した湯やは、ここからでも一際目立つ。

 もっとも、他の建物の明かりが、今にも消えそうなほどに弱々しいからではあるが。


「そういえば、なんでさっき怒ってたの?」


 石の階段を降りきった辺りで、私はシェリーに質問を飛ばした。


「さっき?」

「ほら、この街の理不尽に対して。こんなこと言っちゃ悪いけど……このニタくには、私達にとってはなんの関係もないでしょ? なのに、急に目の色を変えて、意地でもここから出て行かないみたいなこと言ったりして……」

「この街の現実そのものが、気にいらないわけじゃないのだ」


 シェリーは、小石をケリながら答える。

 コンコンと音を立てて、小石は近くの草むらに身を隠した。


「じゃあ、何が気に入らないの?」

「この村の……ううん、殿様って人の考え方が、嫌いなのだ」

「この村はお金が全てってやつ?」

「そうなのだ」

「でも……その考えは間違ってないんじゃないかな?」


 シェリーの機嫌を損ねる気はないが、一応そう言っておくことにした。

 残念ながら、地獄の沙汰も金次第、などという言葉もあるように、世の中は金銭で回っている。


 地雷を踏んだかな、と少し気を配りながら、シェリーの口から次の言葉がつむがれるのを待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ