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第十章1 趣のニタ村

第四部、及び第十章開幕です!!

「すごーい」

「ああ、凄いな」


 感嘆の声を上げるフィリアに、レイシアも頷いて返す。


 私達の周りに広がっているのは、見たことのない景色だ。

 ――いや、見たことがないという言い方は、少し語弊ごへいがあるかもしれない。


 真っ直ぐ続く一本道の左端は、茅葺かやぶきの屋根や、かわらの屋根を持つ平屋がいらかを争う。

 

 右端に目を向ければ、小川のような用水路に、透き通った水がチロチロと流れている。

 その用水路の向こう側に向け、木造の小さな端が等間隔で設けられている。


 そして、風が吹く度、用水路に沿って植えられたやなぎにも似た木の葉が、ざわざわと揺れた。


 なんともまあ、非常におもむきのある町並みだ。

 さながら日本の江戸時代のようである。

 

「おまけに……」


 私は、すれ違う人々の格好に目を向けた。

 薄衣の着物に、下駄げたを履いた人達しかいない。

 女性はかんざし、男性はまげっているのが基本スタイルのようだ。


 このニタ村は、二つの山脈を挟んで、時代も文化もまるで違うらしかった。


「なんか新鮮だね、おにい」

「そうだね」


 私は、腕に寄り添ってくるフィリアに頷いて返す。


 どちらかというと、ニタ村の人達にとっては私達の方が新鮮だろう。

 向こうからすれば、明らかに現代風で文化の色も違う、異色の旅人なのだから。


「あ! 見て見て! あそこで何か売ってる!」


 突然、フィリアが駆けだした。

 その行き先には……紺色の暖簾のれんかかげた、一件の茶店があった。


 入り口の横に立てられたのぼりには、白文字で「だんご」と書かれている。

 どうやら、お目当ては団子のようだ。


 店の前の椅子や、紙張りの日傘の下では、幾人かの人達が集まって、休憩をとっている。

 空を飛ぶなんていう珍事ちんじを体験したばかりだし、少し休んでいくのもいいだろう。


 ――しばらくすると、フィリアが両手に三色団子を持って飛び出してきた。


「お待たせ~買ってきたよ!」


 小走りで駆け寄ってくると、人数分の団子を手渡した。


「ありがとう」

「すまぬな」

「ありがとうなのだ」


 各々礼を告げ、団子を口に運ぶ。

 もちもちとした食感の団子を噛みしめる度、ほんのりと甘い香りが、口の中に広がった。


「美味しいのだ! 何度食べても、ここの団子は格別なのだ!」

「あれ? シェリーは初めてじゃないの?」


 幸せ顔のシェリーに、そう問いかける。


「〈リラスト帝国〉と〈セキホウ鉱山〉の間にあるこの村は、必ず通るのだ。数ある茶屋や菓子屋の中でも、この店はボクのお気に入りだったりするのだ」

「へぇ~」


 まさかシェリーが、この店の常連だったとは。

 この辺りのことも詳しいだろうし、案内をしてもらおうか。


 団子を頬張りながら、そんなことを考えていた――そのときだった。


「ちょ、ちょっと待ちなされ! お客さん!」


 暖簾をくぐり、店主と思われる男性が慌ててこちらへ駆け寄ってくる。


 どうしたんだ?

 疑問に思う私の前で、店主はフィリアに向かってとんでもないことを言った。


「お客さん、困りやす! このお金は、このくにのものでねぇでございやす!」


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