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第八章39 同行許可

 お世辞でも冗談でもなく、本当に人数が多い方が楽しいと思う。

 

「そうか? カースがそう言うなら、いいんだが……」


 そう言いつつ、レイシアはまだ少し不服そうだ。


「いいんじゃないでしょうか。私も、シェリーさんともう少しお話がしてみたいです」


 セルフィスも、私の意見を後押ししてくれた。

 シェリーと行動を共にするということは、セットでヘレドも付いてくるということなのだが……そこは気をつかってくれたらしい。


「ありがとうございます。でも、無理はしないでくださいね」


 私はセルフィスの方へ近寄って、小声で言った。

 すると、セルフィスはきょとんと小首を傾げ、問い返してきた。


「何の話です?」

「シェリーと一緒に目的地を目指すってことは、ヘレドさんも付いてくるってことじゃないですか。だから」

「……え?」


 セルフィスは振り返り、後ろからおまけ品のように付いてくるヘレドを視界に収めると、すぐに顔を戻した。


「……そ、そうですよね。考えてませんでした」

「……え、えぇ」


 気を遣っていたのでは無く、そもそもヘレドが付いてくることに気付いてなかったらしい。

 前々から思っていたけど、王女様は天然……というか、うっかりさんのようだ。

 

(ヘレドが付いてくることに気付いてなかったなら……もしかして私、余計なことしちゃった?)


 気をつかうつもりでやったことが、逆にストレスを与えてしまったかも。


 前の世界でお父さんがよく言っていた、「本人が良かれと思ってやったことが、実はやられた側にとって一番迷惑だったりする」とは、こういうことなのかもしれない。


 どうする?

 セルフィスはきっと、ヘレドと共に行動するのは精神的にストレスがかかるはず。

 ここは自分の意見を取り消して、シェリーには悪いがヘレドと二人きりで〈リラスト帝国〉に戻ってもらうよう、はっきり述べるか?


 うん、そうしよう。


「あの――」

「――仕方ない。カースもセルフィス様も了承しているんじゃ、同行を許すより他ないな」

(既に手遅れだった!!)


 私が言うより先に、レイシアが折れて、シェリー達がこちらと行動することを了承してしまった。


 私とセルフィスは、顔を見合わせて苦笑するしかない。

 そんな私達二人を差し置いて――


「ひゃっは~! やりぃ~なのだ! これからよろしくなのだぁ!」


 シェリーはテンションMAXで飛び跳ね、踊り、クルクルと回る。

 

「お、落ち着いてください主様」


 そんな歯止めの効かないシェリーを、一生懸命おさえるヘレドの図。

 なんというか――助手という仕事も大変だ。


 常時シェリーのご機嫌取りを務めなきゃいけないのだから。

 これで給料が貰えてるのだからまだいい。


 今度私も、フィリアの兄として彼女の機嫌を取る分の代金を請求してやろうか。

 もっとも、流石にそんな外道はできないけど。


 まあ、元気が常時有り余っている人の相手をするのは、それだけキツいのだ。


 そして、おそらくヘレドの苦労など知らないシェリーは、ヘレドの静止を押しのける。

 そのまま私達の前に勢いよくやって来て、残像すら見える速度で頭を下げた。


「とにかく、これから旅にご同行するのだ! 皆の衆、どうかよろしくなのだぁ!!」


 またまた凄い速度で顔を上げたシェリーは、肌より白い歯を見せ、にっこりと微笑んだのだった。




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