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第八章30 紹介済みのウザメガネ

「おっほん。ところで、だ。カース。見慣れないヤツが一人いるが……彼女は?」


 彼女の視線は、宝石のような光彩こうさいを持つ少女に、釘付けになっていた。


「えーっと、彼女はですね――」


 紹介しようと、口を開いたそのとき。

 どんっ!


 鈍い衝撃が左側で弾け、私は勢いよく右側に吹き飛ばされる。


(な、なに?)


 反射的に振り返ると、私がいた場所にはいつの間にかシェリーが立っている。

 どうやら、私を吹っ飛ばした犯人は、彼女のようだ。


「ボクはシェリー=ジュエリーっていうのだ! 〈リラスト帝国〉から遙々やって来た、宝石加工職人なのだ。よろしくな~のだ!」


 そう言って、勢いよく右手を差し出すシェリー。


「あ、ああ……余はレイシア=バームだ。よろしく頼む」


 レイシアは、心配そうにこちらをうかがいながら、差し出された手に自身の手を合わせた。


 ――ていうか、わざわざ私を吹っ飛ばす意味、あったのだろうか?


 そんなことを思っていると、シェリーは「ボクも紹介したい人がいるのだ!」と言って、後ろにいるヘレドへ手招きをした。


「ウザメガネ、こっちへ来るのだ」

おおせのままに」


 ヘレドは、慇懃いんぎんに礼をして、ゆっくり歩いてくる。


「う、ウザメガネ……」

ひどいあだな……」

「そ、そうですね」


 私はもう知っていたから驚かないのだが、レイシア達は全員、苦笑いの真っ最中だった。


「紹介するのだ! このウザメガネこと、ヘレド=サタニークは、ボクの頼りにならない助手なのだ!」


 勢いよくヘレドを指さし、自己紹介ならぬ他者紹介をするシェリー。


 しかし、一同の反応は希薄きはくそのものであった。


「ど、どうしたのだ……? なんか反応が薄いのだ?」

「だってフィリア達全員、その人に一回会ってるもん」


 フィリアの進言に、レイシアとセルフィスは頷く。


 それから、た~っぷりと十秒ほど、気まずい沈黙の時間が流れて――

 

「……え? マジなのだ?」


 シェリーのほうけた声が、地中で反響するのであった。


 △▼△▼△▼


 それからしばらく、私達は互いに自己紹介をした。


 本当はこんなことしている場合じゃないのだが、なんか話が弾んじゃったのだから仕方がない。


 もっとも、女の花園で一人、ウザメガネさんが取り残されている感じがあって可哀想かわいそうではあったが。

 今度全員で話をするときは、男に戻った方がいいかもしれない。


「――さてと、もう十分話したし、そろそろ帰ろうよ」


 フィリアが意気揚々と進言し、トンネルの出口へ向けて歩こうとして――


「……あ」


 足を止めた。

 なぜなら――


「す、すっかり忘れてた! フィリアのせいで、このトンネルの出口塞がってるんじゃん!」

「いや、忘れてたの……」


 頭を抱えてわめき立てるフィリアに、小声でツッコミを入れる。


「まあ、自分のせいだと自覚しているだけ、成長だな」


 レイシアが淡々とした口調で話しながら、私の側へ歩いてきた。

 それから、私の方を一瞥いちべつして言った。


「手伝え、カース。この土壁を破るぞ」


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