表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

228/304

第八章13 余興。そして朝を迎える

 ――数分ほどすると、なんとかいつも通りの雰囲気に戻ってくれた。


 三人で一つのろうそくランプを囲って話していたところを、私のために一人分の座るスペースを確保してくれた。


 かくして、四人で一つのランプを囲い、話をすることとなった。

 状況としては、夕食の時の光景がまるっきりここに再現されているわけだ。


 まあ、焚き火がろうそくランプに変わっただけ……と思いたかったのだが。


(ぜんっぜん目を合わせてくれないんだけど……)


 私は心の中で大きくため息をついた。


 セルフィスがさっきから、こちらをしきりに盗み見てくるのだが、気になって彼女の方を向くと、たちまち頬を染めてそっぽを向いてしまう。


 気まずい。

 めちゃくちゃ気まずい。


 ――まあ、さっきも一番動揺してたのは彼女だったし、少しイジメすぎたかもしれない。

 明日にでも謝らなくては。


「しかし、すっかり目が覚めてしまったな」


 レイシアは苦笑しながら言った。

 それから懐中時計かいちゅうどけいを取り出し、時刻を確認する。


「今は午前三時か。本来ならぐっすり眠っている時間帯だが……皆目がえてしまっているように見える。どうせなら、四人で何かできる遊びでもしよう。何かアイデアあるものはいないか?」

「はいはい! じゃあ、怖い話でもしない?」


 フィリアは、勢いよく手を挙げて進言した。


「ほぅ? 草木も眠る丑三うしみつ時に、ホラーとは、なかなかに趣味しゅみが悪いな」

「ダメ?」

「駄目ではないが……余は、その……怪談かいだん話は、苦手だ」


 レイシアは、打ち明け辛そうに声を落として、しどろもどろに呟いた。


「私も、怖い話はだめです」


 そんなレイシアの言葉に、セルフィスも賛同する。

 

 セルフィスが怪談話を苦手というのはわかるが、レイシアが苦手というのは意外だった。

 王宮魔術師団の強者つわもの達を束ねた長だし、勝手に度胸があると思い込んでいた。


 人は見かけによらないとは、よく言ったものだ。

 それに、人は弱点があるほうが魅力的に映る。

 

「それじゃあ、何するのさ」


 フィリアはふて腐れて、くちびるとがらせながら言った。

 

「何をするかと言われてもな……カードゲームとかか?」

「それいいですね!」


 セルフィスはぱっと表情を輝かせる。

 だが、すぐに困ったように眉をひそめた。


「でも、都合良くカードゲームを持ってきている方が、いるでしょうか……?」

「そう言われれば、確かにいないかもな。仕方がない。別の遊びを――」

「カードゲームなら、フィリア持ってるよ!」


 レイシアの言葉をさえぎって、フィリアがそう進言した。


「なんだと? 本当か?」

「本当だい!」


 フィリアは自身のリュックサックからトランプカードの束を取り出し、どこぞの青い猫型ロボットのように宣言した。


「じゃじゃーん! とらんぷかーどぉ!」


 それらをテントの床に軽く放る。

 赤と白の絵柄が、綺麗に散らばった。


「本当に……妙なところで役に立つな、貴様は」

「えっへん。あがめたてまつりたまえ!」

「それは遠慮しておこう」


 レイシアはにべもなく言い捨てた。


 ――それから私達は、時間の流れも忘れてゲームに熱中した。

 気付けば、テントの外が薄らと明るくなっていた。


 外が完全に明るくなったタイミングで、私達はまた旅を始めるのだ。

 変更した目的地――セキホウ鉱山へ向けて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ