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第七章38 プレゼント

「すいません! もう皆さんそろってらしたんですね!」


 近くまできたセルフィスは、両手を膝について、呼吸を整える。


「準備に少し手間取ってしまって……待たせてしまいましたか?」


 動物の皮でできた重そうなバッグを持ち直し、セルフィスは上目遣いに問いかけてきた。


「いいえ、そんなに待ってません。それに、ついさっきフィリアが買い物に行ったので、厳密にはまだ揃ってないんです」

「そうですか、フィリアが。……私が最後じゃなくて良かったです」


 セルフィスは、ほっとしたように胸をなで下ろす。


「はい。フィリアが戻ってくれば全員揃うので、そしたら出発しましょう。もっとも、フィリアのことだから、あと一時間くらい帰ってこなかったり――」

「フィリアがどうかした?」

「うわぁ!?」


 急に背後から声をかけられて、心臓が口から飛び出るくらい驚いた。

 その上、反射的に振り返ると、そこにいたのはフィリアだったから、目玉が飛び出るくらい驚愕きょうがくした。


「ふぃ、フィリア!? どうしてここにいるの!? 今さっき買い物に出掛けたはずじゃ……?」

「買い物ならもう済ませて帰ってきた」

「ま、まじ……?」

「うん。マジ」


 フィリアは真顔で答える。


 彼女のことだから、てっきり買い物が長引くと思っていたが、全然そんなことなかった。

 むしろ、三分くらいで終わらせてきた。


 私、今期一番の爆速フラグ回収である。

 

 と、そんな私を尻目に。

 いつのまにか、フィリアとセルフィスは、仲よさげに談笑をしていた。


「セルフィス! 久しぶりだね! 元気だった!?」

「はい。フィリアの方は?」

「もっちろん、元気が有り余ってるよ!」

「そうでしょうね。いつも明るくて素敵です」


 互いに握手をして、親睦しんぼくを深める二人。


 会うのはまだ二回目だというのに、随分と打ち解けたものだ。

 歳が近くて、身分の貴賤きせんも関係なく話せるフィリアは、セルフィスにとっても貴重な存在だろう。


 セルフィスが一国の王女ではなく、一人の少女として年相応に振る舞える、数少ない親友になるに違いない。


「ところでセルフィス!」

「なんでしょう?」

「フィリアね、セルフィスにプレゼント買ってきたの!」

「プレゼント?」

「そう! おにいのお金でね!」


 ちょっと待って!

 私は心の中でツッコミを入れる。


 私のお金でプレゼント買ってきたとか、ありがたみが薄れるから言わんでもいい。


 フィリアは小さな巾着から、何かを取り出した。

 それは――ロケットだった。


 誤解されないように言っておくけれど、宇宙まですっ飛んでいく方のロケットではない。


 写真や薬を入れられる、小さなロケットペンダントのことだ。

 

 フィリアはそれを、セルフィスの手に握らせる。

 葉っぱの形を模したグリーンのロケットは、朝日をうけ、彼女の手の中でキラキラと輝いていた。


「その中に好きなの入れるといいよ。旅先で撮った写真とか、治癒魔術で使うっていう葉っぱとか」


 フィリアは手を頭の後ろに回し、リラックスしながら告げる。

 そんな彼女の様子を呆けたように見つめていたセルフィスだったが、やがてロケットをぎゅっと握りしめて言った。


「ありがとうフィリア! 大切にします!」


 彼女の顔は、フィリアに負けないくらい明るかった。



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