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第七章33 離国の計画

「私と旅をするって……ま、マジですか?」

「大マジだ」


 レイシアは、力強く頷いてみせる。

 真面目な表情であるからして、嘘や冗談のたぐいではないだろう。


「貴様は私にとって必要不可欠な存在だからな」

「背中を預ける仲間としてですか?」

「そうだ。……まあ、それだけというわけでもないが」


 レイシアは、しどろもどろに答える。


「それだけじゃない? じゃあ他の理由は」

「そ、それは……」


 レイシアはとたんに口を閉ざす。


「――、……それは、貴様のことが……す、す」


 何かを言いたそうな、それでいて言いにくそうな表情でチラチラとこちらをうかがう。

 耳の先まで真っ赤にして口をパクパクさせた後、火山が爆発するかのごとき勢いで叫んだ。


「゛あーッ! 恥ずかしいことを言わせようとするなッ!」

「は、はい! すいませんでしたぁ!」


 私は慌てて頭を下げる。

 あまりにも速く下げすぎたので、耳元で風がビュンとうなった。


「それじゃあ、この旅に同行するのは、セルフィスさん、レイシアさん、フィリアの三人てことでよろしいんですね?」

「たぶん、そういうことになるだろうな」


 これまで腕組みをしつつ動向を見守っていたロディが、不意に口を挟んだ。


「お前達が行っちまうのは、かなり寂しいが……まあ仕方ない。出会いがあれば別れもあるのが、人生だからな」

「ごめんね、ロディ」


 なんだか申し訳なくて、一応謝っておいた。


「いいってことよ。お前等と過ごした一年間、楽しかったぜ。向こうの学校に行っても、たまには俺と遊んでくれよ!」

「いや、そんな進級と同時に転校するやつを見送る親友みたいな発言をされても……ていうか、離ればなれなるの、“学校”単位じゃなくて“国”単位だし。しかも、一緒に過ごした時間、三週間もないし」

 

 いろいろとツッコミどころしかないロディなのであった。


「ところで、あんたは……あー、行けねぇよな」


 ロディはソファに座って終始会話に耳を傾けていたテレサに問いかける。


「ええ、残念ながら行けませんわね……」


 テレサは、寂しそうに顔をくもらせて応じる。

 彼女は、自身の犯した罪を背負っている。


 特例で“鞭打ちと、王国と帝国の親交関係を築くことに一生を捧げる”という判決が下されただけで、本来であれば死刑や終身刑に該当する重い罪だ。


 好き勝手にこの国を離れることは許されていない。

 それは本人も硬く自覚しているようで、今まで一言も「ワタクシもついて行きますわ」とは言わなかった。


「ワタクシがこの国に残らねばならないのは、変えようもない現実ですから。でも……またいつかお会いできる日がくることを、信じておりますわ」

「はい。必ず会いましょう。私もまた、テレサさんに会いたいですから」


 笑ってそう告げると、鏡あわせのように彼女も微笑んだ。

 

 これで終わりじゃない。

 私は自然とそう思っていた。


 たぶん、また会える。

 なんでかはわからないけど、確信に近い予感があった。

 

 ロディも同じだ。

 きっとまたいつか、どこかで会えるような気がする。


 私には、未来の予測能力なんてないけど、このときははっきりとそう思った。


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