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第七章29 また喧嘩ですか? 仲いいですね

 ――。


「なるほどな。知らぬ間に、王女がそんな辛いお気持ちを抱えていたとは」


 レイシアは、難しそうな顔で呟いた。

 他の面々も、同じような表情をして押し黙っている。


 私は今、意を決して、セルフィスの抱えているトラウマを話したのだ。

 そして、それを克服するためにも、私との旅に同行することも。


「王女には是非、一日でも早く現状を脱出していただきたいものだ」

「ああ、その通りだな」


 レイシアの言葉に、ロディも頭を大きく振って賛同する。


「殿下が男を見て怖がってるとあっちゃ、男である俺の立場がない。それに、王女様と結婚できるかも知れないという、男なら誰もが想像する夢が、無残に散ってしまうんだ。俺はもう、悲しみと歯がゆさで胸が張り裂けそうだぜ……ッ!」


 拳を握りしめ、舞台に立っているかのように感情を高ぶらせて力説するロディ。

 そんな彼へ、レイシアは冷ややかに言い捨てた。


「安心しろ。どのみち覚める夢だ」

「あぁん? そりゃどういう意味だ?」

「言葉通りの意味だ。王女がトラウマを抱えていようがいまいが、王女が貴様を選ぶことはない。だから、安心しろ」

「ひっでぇな! そんなこと、わからねぇだろうが!」

「いいやわかる」

「ほうほう。なら、何を根拠に言ってんだ?」


 たちまち、なんの生産性もない水掛け論を始める二人。


 また始まった。

 帝国へ討ち入りする前の作戦会議の時も、口論していたような気がする。

 この二人が会話をすると、ほぼ百パーセント喧嘩になるのだ。


 そしてこうなると、私にはもう手が付けられない。


(まったくもう……)


 私は、はぁと小さくため息をついて、いがみ合う二人を見つめる。

 しかし次の瞬間には、私の口からふっと笑みがこぼれた。


(仲が良いな……)


 私は、内心微笑ましく思っていた。

 喧嘩するほど仲がいいとは、たぶんこの事だ。


 ぶっちゃけ……気むずかしいレイシアは、テレサやロディなど、多くの人と揉め事を起こしているけれど。


 テレサやロディが、レイシアを毛嫌いする素振りを見せたことはなかった。

 なんだかんだで、皆もう仲間なのだ。


「何やら楽しそうににやけているところ、申し訳ございませんが……本当に〈リラスト帝国〉へ向かわれるのですね」


 不意にテレサが横から話しかけてきた。

 炎のように赤い瞳を細め、眉を八の字に曲げている様子は、なんだか少し寂しそうに映る。


「ええ。テレサさんがおっしゃっていた、宮廷占い師に会うつもりです」

「そうですか」


 テレサは小さく頷く。

 彼女が、宮廷占い師から、私に関するどんなことを聞いたのかは、イマイチよく知らない。


 だけど、こうして何も言わないと言うことは、たぶん多くを知らないということだろう。

 憶測おくそくに過ぎないが、私がおかしな呪いにかけられているということくらいしか知らないはずだ。


(私の身体の秘密を暴くためにも、絶対に占い師に会わなきゃいけないな……)


 結局、詳しいことを知っていると思われる人に聞くのが一番だ。


(とにかく、この旅は王女と二人きりの静かな旅になる。騒々しい空気から解放されるのは寂しいけど、二人旅っていうのもロマンチックでいいかもな……)


 そんなことを考えていると、急にフィリアが私の目の前に現れて、何やらとんでもないことを言い出した。


「その旅、フィリアもついてくからね!」


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