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第七章19 初めての悶絶?

「して、君の名はなんだ?」


 ずいっ。

 マキュリー王は、怖いくらいに顔を近づけてくる。

 彼の高い鼻筋が、すぐ間近に迫った。


「か、カースです。一応、フィリアの兄で――」

「なんとぉ! 君がうわさのカースっちか!!」

「……へ?」


 「フィリアの兄です」と言い終わる前に、マキュリー王はテンションマックスで飛び跳ねた。

 カラオケで高得点をたたき出した高校生ギャルみたいな反応だ。


「いやぁ! 君には一度会ってみたかったのじゃ! まさかこんなに早く会えるとは!」


 ハイテンションの王は、勢いのまま僕の手を取り、ぶんぶんと上下に振った。

 あまりに勢いが激しいものだから、両肩がもう少しではずれそうになった。


 しばらくの間歓喜に踊っていた彼だったが、やがて僕を解放してくれた。


「あの、どういうことですか? 僕に会いたかったって」


 王が落ち着いたのを見計らって、そう問うた。


 一応、レイシア達と共にめざましい活躍をしたとは言え、この国に来てまだ二週間程度だ。

 僕の名が王の耳に届いていることを、いぶかしく思ったが――すぐに理由が判明した。


「なぁに。うちの娘が戻ってきてから、お前さんの話ばかりしていたからのう? 一度、会ってみたかったんじゃ」


 ああ、なるほど。

 セルフィスが話したのなら、納得だ。

 

 曲がりなりにも僕は、囚われのお姫様と化していた彼女を救った王子様だ。

 王に何かしらのことを話していても、不思議じゃない。


「しかし……おかしいのう」


 不意に、王は首を傾げる。


「何がです?」


 聞き返すが、王は何も答えない。

 代わりに、更に一歩僕の方へ近づいて――


 バシッ!

 次の瞬間、衝撃が股間こかんに走った。

 王が、僕のアソコを平手ではたいたのだ。

 同時に、鈍い痛みが股で弾ける。


「おおぉうッ!?」


 思わずなさけない声を上げ、その場に崩れ落ちた。


 痛い。

 メチャクチャ痛い。


 悶絶もんぜつしつつ横を見れば、女性陣は呆気にとられたようにぽかんと口を開けており。

 ただ一人、ロディだけがまるで痛みを共有しているかのように、表情を悲痛に歪めていた。


 男に生まれ変わって初めて、股間をぶつける痛みを知った。

 大発見だ。

 ――なんて、そんなこと言ってる場合じゃなくて!


「ちょ、ちょっと! いきなり何するんですか!」


 僕はよろよろと立ち上がり、文句を言ってやった。

 だが、王は何処吹く風といった様子で、「すまんすまん」とテキトーに謝りながら、いきなり股間を殴ってきた理由を話した。


「一つ解せないことがあってな。お前さん、少しばかり女性的な顔つきこそしてるが、ちゃんとチンのある男であろう?」

「はい。そうですけど……」

「娘の話では、カースは女のはずなんじゃ」


 ――あ。

 そういえば、セルフィスはずっと、女の姿の僕と行動を共にしていた。

 ただ一度、僕の男姿を見て気絶してしまったときを除いて。


 さて、どうしたものか。

 その齟齬そごについて王にどう説明しようか迷ったが、実際に僕の体質を見て貰った方が早いと思い、この場で女体化することにした。



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