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第七章15 性転換の必要性

 △▼△▼△▼


「じゃん、じゃじゃーん! どう?」


 数十分後。

 顔を洗い終え、リビングの隣の部屋で着替えていたフィリアが、扉を開けて出てきた。


「うわぁ……」


 目の前でくるりと一回転する彼女を見て、僕は思わず目を丸くした。

 

 まず目に映ったのは、艶やかなピンク色。

 彼女の周りだけ春になったようなその色がドレスの形になって、全身をゆったりと包んでいる。

 

 髪飾りのリボンも、蝶の形を模した水色のものに新調され、黄金色の髪に寄り添っていた。


「なに? ジロジロ見ちゃって。ひょっとして、惚れちゃった?」


 思わず言葉を失って見入っていた僕に、フィリアが問いかけてくる。


「う、うん……」


 僕は、素直に頷いた。

 当たり前だ。

 見惚れない方がどうかしてる。


 元々、彼女が美人だということはわかっていたけど、いざこうして色気を出されて、再確認した。

 

 まだまだあどけなさの残る少女ではあるが、大人の服を着こなせば、もう立派なレディである。(なお、精神年齢は低いままである)


「あ、ありがと」


 フィリアは頬を赤らめ、目のやり場を探すように、そっぽを向いてしまった。

 勝ち気なくせに、急な責めに弱いのは、出会ったときから変わらない。


 そんな愛らしい様子に、頬をほころばせていると。


 コンコンコン。

 不意に、ノックの音が三回、部屋に鳴り響いた。


「誰です?」

「俺だ。ロディだ。そろそろ出発したいんだが、準備はできてるか?」

「もちろん。準備オーケーだよ」


 そう返すと、ガチャリと無機質な音を立てて、扉が開いた。


「よぉ、似合ってねぇな」

「やめてよね。見た瞬間そう言われると、ふつーに傷付くんだけど」

「わりぃわりぃ。でも……ぷっ」


 ロディは、吹き出しかけた笑いを堪えるように、両手で口元を覆った。


「お前、ぶっちゃけドレスの方が似合うんじゃねぇか?」

「もしドレスを着るなら、女状態になってから着るよ」


 ぶっきらぼうに答える僕に、「確かに」と笑いながら返すロディ。

 相変わらず、お気楽な奴だ。


 どちらかというと男状態でいたいというのが本音だから、女体化してドレスを着るのは本意じゃない。


でも――


(この先、着ることになるかも知れないな)


 僕は、ふとそんなことを考える。

 魔術を行使するには、女状態の方が都合が良かったし、この先も多用することはほぼ間違いない。


 加えて、セルフィスの、男性を怖がる妙な傾向も、頭から離れない。

 ひょっとしたら、男状態ではまともに口をきいてくれないかも――そんな予感もあった。


 故にこの先、女の子に変身しなければならないタイミングは、いくらでもあるはずだ。

 

(とりあえず今は、王様に会うことが先決かな)


 今すべきことを、今一度見定めて。

 僕はフィリアと共に、部屋を出た。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 性別がキーワードになるのがこの物語のポイントですからね。 今後も活かされる場面は増えてほしいものです!!!第三者的に!!!
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