第七章11 ホンモノの謁見状!?
「謁見状とは読んで字の如く、王に謁見するための書状だ。それを持つ者は、事前手続き無しで王に会うことができる。しかも、それを一人が持っていれば、連れ添いの人間ですら何の咎めも無しに謁見が許される。まさに、スペシャル・チケットだ」
「そ、そんな魔法の書類があるんですか!」
僕は驚いた。
だが同時に、答えを聞かずともわかっていることがある。
「でも、それって簡単には手に入らないんでしょう?」
僕は、わかりきっていたことを質問する。
「無論だ」
レイシアは即答した。
「やっぱそうですか」
僕は別に項垂れたりはしなかった。
なんてことはない。
そんな特別極まりない書状、中々手に入れられるものじゃないことは、少し考えればわかることだった。
「ちなみに……どうすれば手に入るんですか? それ」
「基本的には手には入らん。謁見状は、王が、古くからの友人だけに与える特別なものだからな。手に入る方法があるとすれば――どこにいるか、誰なのかもわからない、王の古くからの友人を探して仲良くなり、謁見状を譲って貰えるチャンスを窺う。それくらいしか無いだろうな」
「は、ハードル高すぎですよソレ」
僕は、気が遠くなりそうな話に、天を仰いだ。
たぶん、事前手続きの方がまだ可能性があるだろう。
(というか、もうテレサさんには王への謁見を諦めて貰った方が、話が早いんじゃない……?)
どのみち、王に会う目的はセルフィスの居場所を聞くことだ。
事前手続きを切り抜けた人達だけで王に謁見し、セルフィスの居場所を聞いた後、テレサを連れて彼女の元に向かえばいいだけの話。
(その方針で行くのが、ベストかな……)
多少回りくどいが、テレサを王に会わせることの難易度に比べたら、なんということはない。
王への謁見は、可能な人達だけでしよう。
そのアイデアを、ここにいる皆に伝えようとした――そのときだった。
「なになに? なんの話してるの?」
いつの間にか起きてきたフィリアが、目を擦りながら話に加わった。
「王に会うための手段を探してるんだ。余は元王宮魔術師団総隊長の権限があるし、カースや貴様も事前手続きを問題なくクリアできるだろうから、問題なく謁見が許されるだろう。だが……元敵のテレサだけは厳しいからな」
「あーそういうこと。なら謁見状を使えばいいじゃん」
こともなげに、そんなことを宣うフィリア。
今の今まで寝ていたから仕方ないにしても、話を振り出しに戻してきた。
「あのね、フィリア。お前が寝てる間に話してたんだけど、その謁見状は、手に入る可能性がとてつもなく低い、幻級の書状なの。欲しいって思っても簡単には手に入らないんだよ」
僕は、フィリアへ懇切丁寧に説明する。
「えー、そうかな~。そんなに難しくないと思うけどね~」
しかしフィリアは、まるでわかっていないらしい。
両手を頭の後ろに回し、腕を枕にしてソファの上に寝転んでしまった。
その態度を目にして、流石にちょっとイラッときてしまう。
「いい加減わかってよ。そんな簡単には手に入らないんだって!」
フィリアは、少しばかり声を荒らげて告げる僕をちらりと流し見て、それから気怠げに起き上がった。
「そんな怒らなくてもいいじゃん」
「フィリアが、簡単に手に入るって根拠のないことばかり言って、なかなか僕の言うことを理解してくれないからだよ」
「なら、その証拠を見せたげる」
フィリアは自身の革袋をごそごそと漁り、一枚の紙を取り出した。
「はい。謁見状」
差し出された紙を見た瞬間、レイシアは驚いたように目を見開いた。
「ば、ばかな! 本物の謁見状だと!?」




