第七章7 嫉妬はツライヨ
「もういいか? そろそろミーティングを始めたいんだが」
ロディは、いい加減ウンザリした様子で吐き捨てる。
あれから三十分近く、テレサとレイシア、そしてフィリアは口論をしていた。
もちろん、テレサが僕と添い寝をしたことについて、レイシアとフィリアが口々に文句を言ったのである。
僕としては嫉妬の的になれて嬉しい……と最初こそ思っていたが、ここまで続くといい加減ウザったくなってくる。
そして、当事者の僕でもそう思うのだから――それを側で聞かされるロディのストレスは想像に難くない。
「そう言うけど、フィリア達がここで引き下がるわけには……! ね、レイシアさん」
フィリアが、我慢ならないと言った様子で、レイシアに同意を求めた。
「そ、その通りだ。なぜコイツだけちゃっかり美味しいところを持って行くんだ! それも元敵の分際で! 余はまだ……その、一緒に寝たこともないのに」
最後の方は声が小さくて上手く聞き取れなかったが、何やら顔を真っ赤にして怒っているようだ。
「ったく、お前らよぉ……」
ロディは、呆れたように呻く。
それから、額に手を添えて俯いてしまった。
「そんなに一緒に寝たいなら、また今度寝りゃいいだろうが。今日カースがこの世から消えるってワケでもねぇんだからよ」
「「じゃあ今夜!」」
二人の声が重なった。
「ちょっと! フィリアが今日寝るの!」
「なんだと? 聞き捨てならんな」
たちまち、二人は不倶戴天の敵同士のように睨み合う。
「ま、まあま。二人とも落ち着いてくださいませ」
慌ててテレサが、仲裁役として二人の間に割って入るが……
「元はと言えば、テレサさんのせいでしょ!」
「そうだ! 貴様が抜け駆けしたのが、そもそもの問題なのだ!」
今度は二人揃って、テレサを責め立てる。
ロディは、駄々をこねる二人に見かねて声を荒らげた。
「ああ、寝るのなんていつでもいいか、ら早く会議を始めさせてくれ! マジで。喧嘩ならこの後いくらでもしてくるがいいッ!」
普段、おちゃらけているロディが、怒りを露わにした。
そのことが効いたのか、沸騰しかけていた場の空気が、一気に静まりかえる。
普段怒らない人が怒ると怖い。
そう耳にしたことがあるが、実際に見て大いに納得した。
「ご、ごめんなさい」
「すまんな。つい、頭に血が上っていた」
「申し訳ありませんわ」
三人は、口々に謝罪をする。
「わかりゃいい」
ロディは頷いて、僕の方に視線を向けた。
「後でテキトーにこいつらをあしらっておいてくれ。それはお前の役目だからな」
「うん。わかってる。テキトーにするつもりはないけどね」
僕は苦笑しつつ答える。
おざなりにあしらえば、どんな報復が来るかわかったもんじゃない。
まあ、とにかくだ。
これでやっと、会議が出来る空気になった。
僕は人知れず、安堵の息を吐いた。




