第六章35 復活のワケ、帰ってきた白髪の少女!?
「て、テレサさん!? 生きていたんですか!」
「ええ。もちろんですわ……と言っても、つい先刻まで生死の縁を彷徨しておりましたけれど」
「じゃあ、どうして復活できたんです?」
「それは――」
テレサはバツが悪そうに目を伏せる。
だがすぐに、半ば強引に話を切り替えた。
「――とにかく今は、レイシア様の救出を優先してくださいな。ワタクシの魔術も、そう長くは持ちませんわ」
「そ、そうですね! わかりました!」
私は懐からエメラルドを取り出し、呪文を叫ぶ。
「《珠玉法―翠玉・暴風》!」
次の瞬間。
渦巻く風を纏った私は、猛速度で走り出した。
目指すは、ネイルのすぐ近くで倒れているレイシアのところ。
『させん!』
それを見て取ったネイルは、右手をこちらに向けて魔術を放とうとする。
――が。
「それはこちらの台詞ですわ!」
すかさずテレサの援護が入る。
空から降り注ぐ炎の流星群がより一層赤い輝きを増し、ネイルだけをピンポイントで襲う。
『ぬぉおおおおおッ!?』
頭上からの猛威に、ネイルは発動しかけていた魔術をキャンセルする。
それから慌てたように、頭上に展開した障壁を強化し始めた。
「チャンスッ!」
テレサが頑張ってくれている今が好機だ。
駆ける速度を殊更に速め、レイシアの元へ。
「細い腕を枕にするのは、ちょっと辛いかもしれませんが……我慢してください!」
気絶しているレイシアに小声で告げ、横抱きに抱え上げる。
男の状態よりも筋力が落ちているが故に、両腕にずっしりと重さを感じた。
「《珠玉法―翠玉・暴風》」
再び風の魔術を起動し、ネイルの側から全速力で離脱した。
「お待たせしました!」
テレサのところまで戻った私は、そっとその場にレイシアを横たえた。
「どうやら救出はうまく行ったようですわね」
「はい。お陰様で」
「ふふふ。例を言われる筋合いはなくってよ」
テレサは満足げに微笑んで、炎の魔術を解除した。
『クソッタレが』
攻撃がピタリと止み、防御結界を解除した後でネイルは忌々しそうに舌打ちした。
『まさか、貴様が生きていたとはな、テレサよ』
「目論見が外れましたか?」
『ああ』
やけにあっさりと、ネイルは首肯した。
『貴様を吹き飛ばしてやったとき、確かに手応えを感じた。致命傷のはずだ。なのに何故、全く傷を負っていない!?』
ネイルの言葉を聞いて、私もテレサの身体を見る。
確かに。
彼の言うとおり、テレサの全身にはかすり傷一つ無い。一体何故?
「それは……ワタクシ達の背後に、頼もしい治癒魔術師がいるからですわ」
テレサは後ろを振り向き、数メートル先の茂みを見据える。
つられて私もそちらを振り向いて――見つけた。
茂みの中に身を潜める、白い長髪を持った少女の姿を。




