表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/304

第六章24 破格の戦闘センスを持つ中二病(中年)

「上かッ!」

『正解だ』


 ネイルは不敵に笑い、掌に炎の塊を生み出す。


「マズい! 走れカース!」

「はい!」


 レイシアの掛け声に合わせて、背中合わせの状態を解除し、それぞれ正反対の方向へ駆けだす私達。

 刹那。


 ほんの一瞬前まで私達がいた場所に、ネイルの放った火球が着弾した。


 轟ッ!


 着弾点を中心に紅蓮ぐれんの炎が舞い上がり、上空に浮かぶネイルを緋色ひいろに染め上げる。

 

「まるで悪魔そのものだな……!」


 一定の距離まで離れた私は、ネイルの方を振り返って呟いた。

 

 闇を纏う漆黒の身体を、赤い炎が照らすさまは、地獄よりの使者としか思えない。

 そんな彼が、ゆっくりと燃えさかる炎の中心へと降下し、音もなく着地した。


『この程度の炎に恐れをなしたか、臆病者共よ……笑止千万だな』


 ネイルは挑発するかのように、顎をしゃくり上げる。

 その発言が、レイシアの怒髪天どはつてんを突いたらしい。


「なんだと!? 見下すのも大概にしろ、この中年中二病ヤロウが!」


 勢いに任せて、レイシアは呪文を唱える。


「《珠玉法シュムック紫水晶アメジスト霹靂ブリッツ五重奏クインテット》ッ!」


 次の瞬間、レイシアの投げたアメジストが鋭い光を放ち、紫電に変化する。


(なら私も!)


 素早く宝石を取り出し、魔術を起動した。


「《珠玉法シュムック翡翠ジェイド蔦葛アイビー》ッ!」


 空中に放った翡翠ひすいが割れて、中から四本のつたが出現。


 レイシアの放った五条の雷閃と、私の放った四本の蔦が、挟撃きょうげきする形でネイルを襲う。

 ――が。


『ふぅ……ぬるい攻撃だ』


 ネイルは欠伸あくびを噛み殺し、緩慢かんまん極まりない所作で、右手の掌を燃えさかる地面に押しつける。


『―《増幅エンハンス》―』


 ぼそりと呟き、地中に向かって風の魔術を放った。


 同時に、燃えさかっていた炎が、その余波で搔き消える。少し遅れて、地面にバキバキとヒビが入り、ネイルの立っている地面が割れ砕けた。


 割れ砕けた地面の欠片かけらは、地中に放った風の力を受けて舞い上がる。

 岩盤や土の塊がネイルの周囲に幾つも浮かび、私達の攻撃をことごとく受け止める。


(なっ! 巻き上げた岩盤を盾代わりに使うなんて!)


 想像の斜め上を行く機転に、舌を巻くしかない。


「ちっ。単なる脳筋ではないようだな……!」

『当たり前だ。脳みそまで筋肉でできていたら、〈帝王プロヴィデンス〉など務まらんよ』


 忌々しげに吐き捨てるレイシアに、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の表情で告げるネイル。


 私達の攻撃を全て捌ききると同時に、ネイルはレイシアめがけて駆けだした。


「ちっ! 来るなら来い!」


 レイシアは、新しい宝石を取り出す。

 そのまま、いつもの流れで呪文を唱えるために口を開いて――


「ッ!」


 レイシアは驚いたように目を見開く。

 いつの間にか、彼の姿がまた消えていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] サブタイの時点で笑っちゃったヨーーー!!!www 中二病無くしてファンタジー世界は成り立ちませんって!!! んなこと言ったらレイシア様も相当の中二病とも言えるのでは!?!?!?(笑) [気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ