第二章1 真実への誘い
第二章開幕です!
機会があれば聞いてみる。
そう宣言したが、その機会なんてあるはずがない。そう思っていた矢先、意外にもあっさりとその機会がやってきた。
王国騎士団に配属されて、僅か三日後のことである。
「おい喜べ、吉報だ」
いつものように、長机のある部屋で待機していると、ロディが慌ただしく駆け込んできた。
その音で、隣の椅子でぐーすか寝ていたフィリアが、目を覚ます。
「どうしたの騒々しい。男ならもっと堂々としてるものだよ?」
「やかましい。俺の台詞取んな」
対面の椅子にどかりと腰掛け、ロディは言葉を続けた。
「上層部からのお達しだ。お前の望みが叶う日が来たぜ?」
「望み?」
「ああ。王宮魔術師団の指揮下にある西地区の哨戒に、人手が必要らしくてな。今日一日、王国魔術師団に騎士を一人送って欲しいとのことだ。運があれば、レイシアとデートできるぜ?」
「別にデートは望んでないんだけど……」
「だが、あの女が気になってるのは事実だろ?」
ロディの言葉に、すかさずフィリアが反応し、ジト目で睨んでくる。
「誤解を招くような言い方をしないでくれ。妹の目が怖い」
「悪かったよ。あいつの言動に、気になる点があるって言えばよかったか?」
「最初からそう言ってよ……」
「あっははっ! すまねぇな」
ため息をついた俺を見て、ロディはすかさず高笑いをした。
「まあともかく、だ。上手くいけばお前の気になってることもわかるだろうし、ここは一つ行ってきて欲しい。俺としては誰を送りつけようが構わねぇ話なんだが、部下の中には、あの冷徹な女を毛嫌いする者も多くてな。頼むのが少々面倒くせぇ」
「要するに、互いの利が一致しているから、行ってこいってことでしょ?」
「悪い話じゃないだろ?」
豪快にウィンクするロディを流し見て、ほんの少しだけ思案した。
まあ、元々望んでいたことだ。引き受けるなら僕が適任だろう。
「わかったよ。引き受け――」
「ダメダメダメダメ! ぜっっったい、ダメぇえええッ!」
フィリアが大声で僕の言葉を遮った。目覚まし時計も裸足で逃げ出すけたたましさだ。
「レイシアさんとデートするなんて、フィリア許さないッ!」
「だからデートじゃないって」
「デートじゃなくても許さないッ!」
「はいぃ?」
「おにいを独り占めするなんて、レイシアさん許さないッ!」
「……なんか怒りの矛先変わってない?」
いつでもどこでも振り回してくるフィリア。
まあ、これだけ慕ってくれているのだから、兄冥利に尽きるというものだが。
――行動に支障が出る。
(なにか、フィリアの注意を引き離す方法、無いかなぁ……そうだ!)
わりかし簡単に思いついた。
「じゃあ、哨戒の帰りにお土産買ってくるよ」
「えぇ! ホントにッ?」
とたん、ぱっと表情を輝やかせる。妹の精神年齢が幼稚園児で助かった。
「ホントさ。何がいい?」
「じゃ~、フルーツタルト!」
「りょーかい」
「へっ。妹のあやし方が、上手いじゃねぇか」
「そりゃあ、兄だからね。……行ってくる」
不敵に笑うロディにそう告げ、腰に剣を据えて王宮を出た。




