表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

145/304

第六章15 最高の萌えシチュエーション!?

『不可解な……ッ!』


 微かに表情を歪めて、ネイルは呟く。


『貴様は確かに、我が炎の直撃を受け、跡形も無く蒸発したはず……ッ! だというのに、何故だ? 何故生きている……ッ!』


 ネイルの赤黒い瞳が、僕――カースの方に向けられる。


「いや~そう言われましても。なんかよくわかんない力で奇跡的に助かったんですよね」

『な、なんなのだ! そのご都合主義的な展開は!? 小癪こしゃくな!』

「いやいや、そっちの方が遙かにご都合主義な設定ですからね? 無詠唱で複数の魔術を同時起動できるとか。近接格闘戦も抜け目ないし。《増える魔術ちゃん》とかいう、水をかけただけで魔術の威力が倍増するチート技持ってるし」

『水をかけて威力増強などしていないと、さっきから言っておろうが!』


 目を見開いて吠えかかるネイル。

 それをスルーして、僕は強引に話を戻した。


「まあ、にもかくにも豚の角煮かくにも、そっちがご都合主義チート使えるなら、こっちだって使えていいよね? って話です」

『ちっ、小僧が。調子に乗りおって……ッ』


 忌々しげに唾棄だきするネイル。

 おそらく、僕があの炎の爆発から生き残れた原因がわからず、焦っているのだろう。

 だが――実際は、ご都合主義的な力で助かったわけではない。


(ホントは、こいつのお陰なんだよね……)


 僕は、ポケットから一つの宝石を取り出す。

 それは――琥珀こはくだ。


 僕は、あのときと同じ方法で、炎の破裂から逃れた。

 それは……〈ロストナイン帝国〉の首都〈ディストピアス〉に侵入し、セルフィス王女を助けるために行動していたときのことだ。

 僕は光の魔術を使って自身の幻影を生み出し、それをおとりに使って、僕自身は守衛に気付かれることなく、セルフィスの囚われている神殿へ侵入することに成功した。


 それと同じことを、さっき実演したのだ。


 ネイルから完全にマークされ、逃れることは出来ないと悟った僕は、必死に状況を打破する方法を模索した。

 そして思いついたのが、光の魔術を起動して幻影イリュージョンを生み出し、ネイルにそっちを追わせるという方法だった。


 男状態のままでも、魔術自体は起動できる。

 もちろん、威力や精度はいちじるしく落ちるが、威力の高さを望まない幻影イリュージョンでは、そもそも関係のない話だ。


 故に――迷うことなく、光の魔術を起動。

 自身の幻影を生み出し、ネイルにそちらを追わせることに成功した。


 それとは正反対の方向に逃れた僕は、炎の破裂からも無事生き延びた。

 その後、レイシアとテレサへの攻撃に気を取られている好きに、ネイルの背後へと移動して、不意打ちを仕掛けたという流れだ。

 

(なんか、光の魔術って使い勝手いいな……)


 そう思わずにはいられない僕であった。

 と、そのとき。


「カース!」

「カース様!」


 駆け寄ってきたレイシアとテレサが、歓喜に満ちあふれた表情で抱きついてきた。


「ちょ、ちょちょ! え!?」


 狼狽うろたえる僕を差し置いて、両側からぎゅうぎゅうと挟み込むように身体を寄せてくる二人。

 てか、柔らかいアレを腕に押しつけてこないで!


「死んだと思ったぞ、この馬鹿!」

「心配をかけないでくださいませ!」

「す、すいませ、ん……」


 半泣きでしな垂れかかる二人を、ぎこちなく(なだ)める。

 そもそもこの二人、こんなキャラだっけ?

 まあいいか、美女二人に泣きつかれるのも、最高の萌えシチュ――


(って、よくなぁあああああああああいッ!!)


 心の中で叫ぶ僕。

 なぜなら――


『ほぅ? 敵を目の前にして女二人をはべらすとは、余程余裕と見える……』


 ネイルがこめかみに青筋を立てて、睨んでいるからだ。

 ――やばい。

 めちゃくちゃお怒りでいらっしゃる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ネイル様、実は美女二人に挟まれているのに嫉妬している可能性…? [気になる点] <半泣きでしな垂れかかる二人を、ぎこちなく(なだ)める。 ルビが振られていないです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ