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第六章12 カース、宵闇に死す!?

《三人称視点》

『ふっ。終わりだ……』


 ネイルは、己が勝利を確信してそう呟いた。

 巨大な炎の球体は、逃げ回るカースの背後を完全に捕らえている。

 直撃とはいかずとも、近くで炎の球体を破裂させるだけで、即死すること請け合いだ。

 

 最早、ネイルに負けの目はない。


『さらばだ。小賢しい小僧よ』


 そう言って、ネイルは炎を操る右手に力を込めた。

 炎の球体が加速して――遂にカースの背に衝突した。

 刹那。


 カッ!


 眩い光が辺りを包む。

 カースに直撃すると同時に、ネイルは炎の球体を破裂させたのだ。

 それはさながら、恒星こうせいの命が燃え尽きる直前、最後の力を振りしぼって輝きを増すのに似ている。


 夜を真昼にする白い光は、衝撃波とともに波及し、風と熱風が周囲に吹き荒れる。

 

「くっ……カースッ!」

「カース様……!」


 容赦なく襲う熱風に耐えながら、レイシアとテレサは叫ぶ。

 凄まじい威力の魔術を喰らっても、なんとか生きていて欲しい。

 そう切実に願うかのように、眩い光の下を凝視する。


 だが――現実は非情だ。


 白い光が収まり、嘘のように静まりかえった夜が訪れる。

 炎の球体が破裂した地点には、巨大なクレーターができており、もうもうと黒煙が立ち上っている。


 その場所に、カースの姿は――ない。


「あ、ああ……」

「カース、様……?」


 目の前の光景を、取り憑かれたように見つめるレイシアとテレサ。


「う、嘘だろ……」

「し、信じたくありませんわ……」


 茫然自失ぼうぜんじしつとばかりに、二人はその場に立ち尽くす。

 

『ふふふ、ははははは!』


 カースが完全に消滅したと悟ったネイルは、高笑した。

 悲哀ひあいに沈む静けさの中に、場違いな笑い声が響く。


『これであとは、貴様らだけだ。覚悟するんだな。ふっはははは!』


 ネイルは得意になって、高笑いを続ける。

 その態度が、レイシアの怒髪天どはつてんを突いたらしい。


「き、貴様ぁあああああああああッ!!」


 喉が割れんばかりの声量で、レイシアは吠えた。

 ザッと振り向いて、鋭い視線をネイルに向ける。

 その拍子に、ローブのすそがバサリとひるがえった。


「よくもカースをッ! 《珠玉法シュムック琥珀アンバー光輝スパーク》ッ!」


 レイシアの放った光の魔術が、真っ直ぐにネイルへと肉薄する。

 だが。


『ふん。矮小わいしょうなり』


 つまらぬものでも相手にするかのように唾棄だきした後、ネイルは緩く引き絞った拳を前に突き出し、光線を真っ向から受け止める。


 拳に当たった光線はいとも簡単に受け流され、明後日の方向に飛んでいった。


「ちっ」


 悔しげに目を細めるレイシア。

 そんな彼女を見下して、ネイルは淡々と告げた。


「所詮は馬鹿の一つ覚えだな。次は貴様らの番だ」


 ネイルは、筋肉で膨れあがった両腕を天に掲げた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サブタイに「!?」ってついている時点で死んでいないのは明らか!!! でもどうなったかはわからないからドキドキしますね!!!!!
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