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第六章2 削命法の真実

(ああ、そうか。〈ウリーサ〉の魔術師に男の人しかいないのは、そういうことか)


 ずっと、それが疑問だった。

 一般的に、女性の方が男性よりも、体内に流れる魔力マナの量が多い。



 魔術の威力は、込める魔力マナ の量と魔術触媒の量や質で決まる。

 

 そして、魔術触媒の質は、宝石よりも〈契約奴隷サーヴァント・スレイヴ〉の方が上だ。

 これが、一般的に《珠玉法シュムック》よりも《削命法レーベン・ラオベン》の方が、威力が高いと言われる所以ゆえんである。

 以前、レイシアから魔術を教わった際にそう言われた。


 つまるところ、最も威力が高くなる組みあわせは、


《女性》×《削命法レーベン・ラオベン


 である。

 こうなった場合、《珠玉法シュムック》で対抗するには、魔術触媒として使用する宝石の数を増やして威力を高めるしかないのだが――この話は今関係ないので、割愛かつあいしておこう。


 問題は、最も威力を高めることが出来る組みあわせを、〈ウリーサ〉側がしていないことにある。


《男性》×《削命法レーベン・ラオベン


 これでは、せっかく威力の面で優位に立てるはずの《削命法レーベン・ラオベン》が、十分に機能しない。

 

 故に。

 どうして魔力マナ含有量の多い女性を魔術師として起用しないのか、ずっと不思議だったのだが、今その理由が明らかになった。


 単純に、ネイルが女性を信用できないから。

 たったそれだけの理由で、せっかく圧倒的な威力を誇る魔術師団結成のチャンスを棒に振ったのだ。


 正直、ネイルがマトモな性格をしていたら、迷い無く《女性》×《削命法レーベン・ラオベン》の組みあわせを選択していたはずだ。

 もしそうであったなら、〈トリッヒ王国〉はとうの昔に、帝国によって蹂躙じゅうりんされていたに違いない。


 だから、ある意味ネイルの臆病さに感謝しなければならないのだが――

 帝王と呼ばれ、畏怖いふの尊重たるラスボスとしては、あまりにも情けないメンタルである(失笑)。


 だが、そんな嘲笑ちょうしょうを浴びせられているとは露知らず、ネイルはテレサとの口論を続けていた。


『我が貴様ら女というものを信用しないのが、偏見だと? ふっ、馬鹿を言え。我に楯突くやからを信頼する愚か者が、一体どこにいる?』

「相変わらず、口の減らないお父様ですわね……ッ!」

『減らぬ口は貴様もだろう?』


 不倶戴天ふぐたいてんの敵同士、睨み合う二人。

 視線と視線がぶつかり合う中間で、バチバチと火花が散っているかのようだ。


 だが、次の瞬間。


『ふん』


 ネイルは鼻を鳴らして、視線を外した。


『まあ、いい。こんなところで水掛け論をしているだけ時間の無駄だ。なにぶん、貴様と違って我は忙しいのでな……取り巻きごと貴様を始末してやる』

「果たしてそう簡単にいくでしょうか? ここにいる四人は、相当な実力者ですわよ?」


 テレサは負けじと応戦する。

 だがネイルは、そんな彼女を生ゴミでも見ような目で睥睨へいげいし、実につまらなそうに言い捨てた。


『貴様らなど、恐るるに足らん。それにだ。我と戦うのは、()()()()()()()()ではないのか?』


 ――何か、ネイルは意味深なことを言ってきた。


(はい? 四人じゃなくて三人?)


 私の頭上に、疑問符が浮かぶ。

 

 ここにいるのは、ネイルを除いて、カース、レイシア、テレサ,セルフィスの四人だ。


 三人なわけがない。

 このイカツイおっさん、目が節穴ではなかろうか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] <帝王と呼ばれ、畏怖いふの尊重たるラスボスとしては、あまりにも情けないメンタルである(失笑)。 こ、これが強者の余裕…!!!!!
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