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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第2章 森再生編

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63話 黒い翼

 ブラックは操られている魔獣へと向かった。

 もちろん、魔人の王であるブラックであれば、何体かの魔獣がいても問題はないのだろう。

 ただ、消滅させてしまうのだろうか?

 それではあまりにも魔獣達が可哀想に思えた。


 ブラックは開けた場所に魔獣達を呼び寄せ、大きなドーム状の結界を作り、魔獣達をそこから出れないように閉じ込めたのだ。

 その中で火を吹いたり、衝撃波を放ったりと魔獣達は暴れていたのだ。

 ブラックはその中に入り、左手に綺麗な宝石のような石を作り出した。

 そしてそれを魔獣達に向かって投げたのだ。

 その石は魔獣の額のあたりに吸い込まれていった。

 それはブラックの魔力を込めたもので、魔獣は通常であればその石の所有者の意のままになるはずなのだ。

 しかし今回は既に別のものに寄生されている状態なので、どうなるかが私にはわからなかった。

 だが、心配には及ばなかった。

 ブラックが石を通して魔獣をコントロールしはじめたのだ。

 少しすると、魔獣達は落ち着きを取り戻し、静かになったのだ。

 黒い影達よりもブラックの洗脳のが強いと言う事なのだろう。

 その後よく見ると、魔獣から黒い影が少しずつ外に出てきたのだ。

 ブラックの力により、魔獣の中から追い出されたようなのだ。


 しかし、出てきた黒い影は集合し、あっという間に今度は人型に変化したのだ。

 森の記憶を持っていたのだと思ったがそうではなかった。

 それは人型ではあるが、人間でも魔人でもなく、そう・・・強いて言うなら悪魔。

 何故なら、人の形をしているが、背中には大きな翼があったのだ。

 それも吸い込まれるような漆黒の翼なのだ。

 所詮は黒い影が作り出したものであり、偽物ではあるのだが、この影達の記憶の中に存在する者であるのは事実なのだ。


「これは何者だろう?

 ユークレイス、何か読み取れますか?」

 

「はい、ブラック様、やってみます。」


 ブラックはユークレイスに黒い影の記憶を読み取ってもらった。

 ユークレイスは青い目を凝らしてその集合体を見たのだ。

 影の記憶から色々読み取れるかと思ったが、この黒い翼を持つ人物については、その風貌のみでそれ以上の情報は得られなかったのだ。

 つまり特に目新しい事は無かったようなのだ。

 

「見た目の情報しかありませんね。」


 それを聞くと、ブラックはその黒い翼をつけた存在に左手を向けて、一瞬で消滅させたのだ。

 そして下には黒い粉末が残されていたのだ。


 その後ブラックはドーム状の結界を解除し、魔獣達を自由にさせたのだ。

 すでに黒い影の存在からは解放されていたので、森の中に問題なく向かっていったのだ。

 そして、あたりに黒い影の気配は感じられなかったので、私達は城に向かう事にしたのだ。


 森が以前のように再生された事は喜ばしい事だったのだが、最後に見た悪魔のような風貌の存在が気がかりとなった。


 城のブラックの執務室に瞬時に移動すると、そこには幹部全員が揃っていた。

 ブラックがなかなか戻らないめ、ここで待機していたようだ。

 戻った時の私達の不穏な雰囲気を感じたのか、ネフライトが真剣な顔で声をかけて来たのだ。


「ブラック様、遅かったですね。

 森で何かあったのでしょうか?」


 ブラックは森でのことを話したのだ。

 黒い影自体は特別今の段階では心配は無いと思われるのだが、最後に見た黒い翼を携えた人物が気掛かりであることを話したのだ。

 この500年、この地に住んでから知的な存在に遭遇した事も無かったようなのだ。

 移住前にブラックはもちろん下調べをしていたのだ。

 この世界全体を見回ったわけでは無いが、生命体の気配を探っておいたのだ。

 しかし、この世界には小動物さえ存在せず、植物のみが存在する世界である事を前もって確認していたのだ。

 だからこそ、安全と思いこの地に移住をする事に決めたようなのだ。


 ただ考えられる事としては、自分達と同じように別の世界からこの地に来る者がいたかもしれないという事なのだ。

 それは、自分達がそうであるように否定はできないのだ。

 もしくは以前から存在していたが、気配を隠す事が出来る能力を持った者達なのかも知れない。


 私はふと思った。


「もしかしたら、森の精霊なら何か知ってるかも。

 この地で長く生きているものと言えば、あの精霊以外思い当たらないわ。」


「確かにそうだね。

 また後で行ってみるとしよう。」


 ブラックがそう話すと、ユークレイスが記憶を読み取った時のことを話したのだ。


「多分ですが、あれはそんなに古い記憶では無いと思います。

 他の黒い影からはあの森での記憶のみしかありませんでした。

 最後のものに関しても森の記憶はありましたが、それに加えてあの黒い羽根を持つ人物の記憶もあった感じです。」


 ユークレイスの話を考えると、森に寄生した後に一部の影達が魔獣とともに移動し、そこで遭遇した者と言うことなのかもしれない。

 もしくは魔獣達の記憶の中にあったものを奪って実体化したのか。

 魔獣達は森や草原を棲家とするが、この世界を自由に動く事は出来るのだ。


 とにかく、この世界には魔人以外の者が存在している可能性が強いと言う事なのだ。


 どうであれ、今は想像するくらいしか出来なかった。


 

 

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