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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
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165話 ブラックの誓い

 舞の前にブラックが現れる少し前の事である。


 ブラックが目を覚ました時には、周りに見慣れた顔があったのだ。


 意識を失ってからどのくらい経ったのだろう。

 横を見ると、ブロムはまだ横たわっており、意識がなかった。

 エネルギーを吸い取られ弱ってはいたが、徐々に回復する気配はあったのだ。

 魔人ほどでは無いが、黒翼人も自己回復能力を持っているので、いずれは問題なく目覚めることだろう。

 私自身も少しだけ回復をしてはいるが、以前の力には程遠かったのだ。


「ブラック、目が覚めたのだな。

 我らが助けに来たからには、もう心配ないぞ。」


 アクアはそう言って得意げな顔をしたのだ。


「ブラック、良かった。

 ちゃんと精霊を連れてきたよ。

 それにジルコンと・・・舞も来てるよ。」


 スピネルはそう言って、心配そうに顔を覗き込んできたのだ。

 私は舞が来ていると聞いて、動揺したのだ。

 ジルコンや精霊がいるとは言え、ここは危険な事が多い場所なのだ。

 それに、あの白の存在の空間に拘束されたせいで、舞の指輪に私の力が届かなかったはずなのだ。

 今も魔力がほとんど戻ってない事を考えると、舞を守る術が今の自分にはきっとないのだと思う。

 そんな状態で舞がこの場にいる事が心配でならなかった。


「スピネル、ここでブロム殿を見ててくれるか?

 私はみんなの所に行かなくては。」

 

「ブラック、みんなじゃ無くて舞のところに行きたいのだろう?

 いいけど、まだ力が復活していないのだから、気をつけないと。」


 スピネルは笑いながら承諾してくれたのだ。

 私はアクアと共にみんなの気配を探った。

 先程行った中庭の奥の方にある広間に、みんなの気配を感じる事が出来た。

 だが、そこには森の主と白の存在の気配もあったのだ。

 精霊やジルコンが来ている事はわかってはいたが、なぜか不安は消えなかったのだ。

 瞬時にその部屋の入口までアクアと一緒に移動したのだ。

 そして慎重にその部屋を覗いたのだ。


 そこには久しぶりに見る舞がいたのだ。

 以前と変わらず、綺麗な長い黒髪と力強い黒い瞳が輝いて見えたのだ。

 ずっと会いたかった人が目の前にいることに、こんな状況ではあるが、心が躍るような気持ちになったのだ。

 しかし、舞は森の主と白の存在に向かって歩いていたのだ。

 何を話しているかまではわからなかったが、緊迫した雰囲気がこっちにも伝わってきたのだ。


 その時、白の存在が左手をあげたのだ。

 私がエネルギーを吸い取られた時と同じ状況になると、すぐにわかった。

 人間の舞がエネルギーを吸い取られると言う事は、死を意味するのだ。

 そんな事は絶対にさせるわけにはいかない。

 私は瞬時に舞の前に移動し、白の存在の前に立ち塞がったのだ。

 そして私は一言だけ舞に言葉をかけた後に、倒れてしまったのだ。


 まだ魔力が回復していなかったため、結界も作る事が出来なかった。

 薄れていく意識の中、魔人の王たる者がなんて情けない姿だと思った。

 しかし、私は王である前に舞を守る盾でありたいと思ったのだ。

 舞はすぐに感情で動き、いつも自分では無く誰かの為に危ないことばかりする。

 そして、いつも私に心配ばかりさせるのだ。

 だが舞の近くにいると、それまで暗闇にいた自分が、いつの間にか色鮮やかな世界に導かれたような気分にさせられるのだ。

 ・・・私にとっては光なのだ。

 ずっと一緒に居られればと、何度思った事か。

 それが無理な事も良くわかっていたから、それなら私は舞を守る絶対的な盾になる事を誓ったのだ。

 それは、魔力の少ない今でも変わらないのだ。

 だから、命をかけても舞を守りたいのだ。

 

 そうあの時、私は指輪に誓ったのだ。

 まだドラゴンが私の体の中にいた時のあの夜だ。

 舞に契約の指輪の話をした時である。

 対の指輪は契約の指輪ではあるが、指輪を持っている者達を引き寄せる力があると言われている。

 だからペンダントと同じ石を付けて舞を守る事も出来る指輪とし、持っていてもらったのだ。


 そして契約とは違うが、あの時私は舞の手を取り指輪を重ね、舞を守る事を心の中で強く誓ったのだ。

 指輪に何か力があるならば、命をかけて舞を守りぬくので、舞の近くにずっといさせてほしいと願ったのだ。

 

 

 

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