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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
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161話 森の主の拒絶

 舞は精霊からの意外な言葉を聞き、考えたのだ。


 古くからの存在である森の主は精霊に言われた事に、思い当たる事があったようだ。

 まさしく、白の存在であるパラシスが、邪なエネルギーを作るように仕向けた者に違いないのだろう。

 森の主は狼狽しているかと思ったら、あっという間に鋭いツノを持った恐ろしい姿に変化していったのだ。

 それは、先程遭遇したパラシスの風貌にどこか似ていたのだ。


 すると私達の前に、突然その白の存在であるパラシスが現れたのだ。

 チラッと私達を見た後、パラシスは怪しくほほえみながら、森の主に近づいていったのだ。


「さあ、私があなたの最も嫌う邪なエネルギーを吸い取ってあげますよ。

 ・・・大丈夫。

 また、以前のような純粋な存在になれますから。

 私に任せてください。」


「待ちなさい。

 これ以上、この者からエネルギーを吸い取ってしまったら、この森は消滅してしまいます。

 ここには、色々な生き物が存在しているのですよ。

 安易に吸い取れば良いと考えてはダメです。

 ・・・それに、この森の主はあなたの言う通りにするとは思えないですがね。」


 精霊がそう話すとパラシスは不満げな顔をしたが、そんな事は気にせず、森の主へと向かったのだ。

 だが、森の主は近づいて来るパラシスを睨んでいるように見えた。

 そして、森の主は口を開いたのだ。


「パラシス・・・私にあえて邪なエネルギーを持たせるように働いたのか?

 本当の事を言ってくれ。

 以前、どんなエネルギーも、吸収すれば同じだと私に言ったはず。

 そうであれば、そんな事をする必要性はないだろう。」

 

「ええ、そうですよ。

 私にはどんなエネルギーも吸収すれば同じです。

 あえて、邪なエネルギーを増やす必要は無いのですよ。

 さあ、私を受け入れてください。

 その邪なエネルギーを無くした後に、必ず魔人達からエネルギーを奪いますから、心配はありませんよ。」


 パラシスはそう言って、森の主に近づき触れたのだ。


「私に近寄らないでくれ。」


 森の主の疑念は払えなかったようで、すぐにパラシスの手を振り払ったのだ。

 パラシスは久しぶりに邪なエネルギーに触れる事が出来たのだ。

 少しではあっても、以前もたらしてくれた幸福感が得られると思っていたのだ。

 ・・・だが、パラシスの予想は裏切られたのだ。

 以前感じた気持ちはには、少しもなれなかったのだ。

 他のエネルギーを吸収した時と何ら変わらないものであったのだ。


「なぜだ、おかしい。

 以前と違う。

 吸収したエネルギーの量の問題か。

 いや、以前はそんな事は関係なかったはず。」


 パラシスは自問自答しながら、もう一度森の主に触れようとしたのだ。

 しかし、森の主はそれを許さなかった。

 だが、弱っていた森の主は拒絶することしか出来なかったのだ。

 

「私が吸い取らなければ、あなたはどんどん邪悪な存在に染まっていきますよ。

 黒い心が広がれば、森の巨大化だけでは無く、ここに住む者達も邪な存在に変わっていくはずです。

 それでも良いのですか?」


 二人のやり取りを見ていた時、私はもしかしたらと思う事があり、精霊に聞いてみたのだ。

 どうも、私の考えが当たっていたようで、私はジルコンにある所に連れて行ってもらうように、そっとお願いしたのだ。

 そして私達は一瞬でその場から移動して、すぐにパラシスと森の主がいる場所に戻ってきたのだ。

 すると、戻ってきた時には、森の主は明るい光に包まれていて、鋭いツノのある恐ろしい風貌から先程と同じ人型に戻り始めていたのだ。


 それを見たパラシスは叫んだのだ。


「お前達、何か余計な事をしてくれたな。

 邪なエネルギーを吸い取る事が私の役目なのだ。

 これでは意味がないではないか。

 私はずっと待っていたのだ。」


 そう言って左手をこちらに向けてエネルギーを吸い取ろうとしたが、ジルコンの方がうわてだったのだ。


「舞、後ろに下がって。」


 ジルコンはそう言って、私の前に出てパラシスからの攻撃を遮ったのだ。

 こんな状況ではあるが、美しく凛々しくもある姿に、相変わらず素敵な魔人だと思ったのだ。

 ジルコンは強い結界を持っていた上に、今は精霊の蔓が城中に存在するのだ。

 ジルコンの力は自然から少しずつもらったエネルギーを力に変えるもの。

 この空間を作った森の主が制限しない限り、問題なく動けるはずなのだ。

 ジルコンは近くにある精霊の蔓や、この城に存在する植物のエネルギーを少しずつもらい、パラシスに向けて矢のような衝撃波を放ったのだ。

 それと同時にパラシスの周りに結界を作り、黒い煙の姿になっても、その場所から移動する事が出来ないようにしたのだ。

 パラシスはうずくまり、悔しそうにこちらを見たのだ。


 森の主は結界に捕らえられたパラシスの元に行き、再度言葉をかけたのだ。


「本当の事を言ってくれ・・・」


           


              ○


              ○

           

              ○



 私は森の主が、このパラシスに邪なエネルギーを吸い取ってもらわなくても、元の存在に戻れる方法がないか考えたのだ。

 もしかしたから、私が持っている薬を使えばと思ったが、目の前に存在する者は本体ではない事はわかっていた。

 私は精霊の大木のように、この森の主の本体が何処かにあると思ったのだ。

 それも、多分私たちが通ってきたあの場所、あの立派ではあるが、枯れかけた薔薇が本体に違いないと思ったのだ。

 私はジルコンに頼み、中庭まで一瞬で移動すると、鞄からある薬を取り出し、急いでその薔薇の木に振りかけたのだ。

 それは以前精神支配された者を元に戻す事が出来た薬。

 きっと心を落ち着かせる事で、元の森の主に戻れるのではと思ったのだ。


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