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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
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158話 古くから存在する者

 私達は精霊の蔓とは別に、この城の中を進みブラック達を探すことにした。

 二手に分かれることにして、アクアとスピネルは城の上の方から捜索することにしたようだ。

 私とジルコン、アルは1階の奥の方へ行ってみることにしたのだ。


 確かに、精霊の言うようにこの全体の空間を作った者が沈黙しているのが不思議だった。

 そう考えると、あの白の存在と同じ考えを持っているわけではないのかもしれない。

 もし、この森の古くからいる存在であるなら、魔人の森の精霊と同じように、邪な者では無く純粋な存在なのでは無いかと思うのだ。

 だが、白の存在に従わなければいけない何かがあるのかもしれない。


 私達は少し歩くと、城の中ではあるが、明るい日差しと冷んやりした風が吹いている場所に出たのだ。

 どうも中庭のようなのだが、私はそこにある植物に目がいったのだ。

 綺麗な蔓薔薇がたくさん咲いており、素敵なローズガーデンのように見えた。

 その中に一際目を引く、りっぱな棘を携えた太い薔薇の幹があったのだ。

 しかし、その幹は所々茶色に変色していたり、葉が枯れていたりと、病気にかかっているかのように弱っていたのだ。

 そして、そのバラの木には全く花が咲いていなかったのだ。


 私はそのバラが何故か気になったが、今はブラックを探すことに集中した。

 中庭を横目に奥へと歩いていくと、外から見た城の大きさよりも大きく感じたのだ。


「ジルコン、外から見た時こんなに大きな城に感じなかったけど・・・」


 私がジルコンにそう聞くと、周りを見回しながらジルコンは答えた。


「そうね。

 空間が広がってるわね。

 まあ、もともと作られたものだから、どうにでもなるんでしょうね。

 でも、さっきの者の作った空間と違い、敵意とか嫌な雰囲気は感じられないわ。

 何だか、私達を受け入れてくれているような・・・」


 確かにそうなのだ。

 白の存在が自分の作った空間を消滅させた後は、外の素敵な世界と同じ、心地よい空間になっていたのだ。


 私はこの空間を作った者に会ってみたかった。

 本来は、邪悪な者では無いと思いたかった。


 私達がそのまま進むと、ある部屋の扉が開いていた。

 それまでも、いくつかの扉はあったが、鍵がかかっており入る事は出来なかった。

 もちろん、ジルコンからそこにはブラック達の気配はないと言われたので、そのまま通過してきたのだ。

 しかし、今回あえて扉が開いている事から、まるで私達をそこに入るように促しているように感じたのだ。


「舞、後ろに下がってて。」


 ジルコンはそう言い、先に扉の向こうに進んだ。

 私も恐る恐る進むと、そこは広いホールのような場所であった。

 映画やアニメに出てくる、ダンスなども踊れるような大きさの素敵な広間であったのだ。

 

 だがジルコンは足を止めて、真っ直ぐにホールの中央を見つめていたのだ。

 そこには色白でとても繊細に見える中性的な人物が立っていたのだ。

 私はすぐにこの空間を作り出した者である事がわかった。

 その者は視線をこちらに向けると、微かに口元を緩めたのだ。


「ようこそ。

 私はここを作り、古くから存在する者です。

 パラシスには捕まらなかったのですね。

 良かった・・・」



「ブラック達はどこ?

 二人を返して。」


 私はジルコンの静止を聞かずに、その者に詰め寄ったのだ。

 その者は私を見ると、とても驚いたように私を見つめたのだ。


「ああ、あなたですね。

 ここには不似合いな存在の方が来ていると思ったのですよ。」


 そう言って、私を見て微笑んだのだ。

 不似合い・・・確かに二人を救出する為に来た者にしては、弱すぎると言いたいのだろう。

 その者は優しそうではあったが、ふと寂しい表情をしたのを私は見逃さなかった。

 きっと何か理由があるのだと思った。

 すると、私の胸ポケットから光の粒が溢れ出し、精霊が私の前に立ったのだ。


「舞に近づくな・・・」


 精霊は怒っているような口調だった。


「ああ、あなたは私と同じような存在ですね。

 私は何もしませんよ・・・情けないことに見ていることしか出来ません。

 私にはパラシスを止める力も無いですから。」

 

 パラシスと言うのが、あの白の存在なのだろう。

 精霊は表情を変えずに、その古くからいる存在に向かい話した。


「いや、出来ないのではなく、するつもりが無いのでしょう。

 本当にあの白い存在を止めようと思ったなら、出来たはずですよね。」

 

 精霊の言葉を受けて、その古くからいる存在はため息をついて、話し始めたのだ。

 

「・・・そうかも知れません。

 私は弱かったのです。」

 

 

 

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