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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
155/181

155話 パラシスとの出会い

 森の主がため息をついた時、この空間に入ってくる者がいる事に気付いたのだ。


 とても強い気配を感じる・・・

 きっと、ここにいる魔人の仲間に違いない。

 彼らを助けるために、ここに入ってきたのだろう。

 またパラシスの空間に囚われてしまったら、エネルギーを吸い取られてしまうと言うのに・・・

 それが、私の為に行っている事であるのがわかってはいたが、やはり罪悪感しか無かったのだ。

 私は先程の本をめくりながら、昔を思い出していた。


             ○

     

             ○


             ○


 はるか昔、まだこの森やこの辺りの土地が、この作られた空間そのものであった頃のことだ。

 私の森の中には小さな村が存在し、私はいつも遠くからその村の営みを眺めていたのだ。

 私にも仲間と言うべき森の生き物達は存在していたが、私の興味はその村に注がれていたのだ。


 そのうち、私は村の者達と仲良く過ごしてみたいという気持ちがどんどん大きくなり、私は村人と同じような実体を作り出し、その村に訪れたのだ。

 よそ者の私を優しく迎えてくれた村人達は、私に住まいまで与えてくれて、私は村で過ごす事がとても楽しくなったのだ。

 そんな時、パラシスに出会ったのだ。

 会った途端、パラシスは私が本当は自然から生まれし者であることを見抜いたのだ。

 何故なら、パラシス自身が同じような存在であったからなのだ。

 後日聞いた話によると、パラシスは周りに存在するエネルギーを吸い取ることで、生きながらえていたという。

 そして色々なエネルギーを取り込んでは場所を移動し、エネルギーを吸い取られた場所や生き物は消滅していったらしい。


 そして今回は私の森やこの村が目をつけられたのだ。

 私の森や村を侵食しようとしていたのがわかったので、絶対に守らなければと思ったのだ。

 しかし、パラシスは私が思っていたほどの強い存在ではなかった。

 私の力で侵食を抑え、追い払う事が出来たのだ。

 だがその時、私が村人と同じ姿から実体のない光の集合体に変わるところを、村の子ども達に見られてしまったのだ。

 そして、パラシスを抑え込み苦しめている様に見えた姿に驚き、恐怖を抱いてしまったのだ。

 子供達はすぐに大人にその事を伝え、私は二度と村に出入りする事が出来なくなってしまったのだ。

 私が村に入ろうとすると、村人の恐怖、不安、拒絶といった感情が私の中に流れ込んで来たのだ。


 私は村人達に、自分の本当の姿を黙っていた事を謝り、侵食から守る為の姿であった事を話した。

 しかし、誰一人として理解を示すものはいなかったのだ。

 そしてフツフツと黒い物が私の中であっという間に育ち、自分自身がその黒い物で埋め尽くされるような気持ちとなったのだ。

 そして私が実体を作ろうとしても、以前のような村人の姿を作る事が出来ず、誰が見ても恐ろしく感じるツノや冷たい形相の姿にしかなれなかったのだ。

 私は落胆し、怒りしか無かったのだ。

 これでは、村人に会うことすら出来ない・・・


 そして意図せず、私の怒りが森の巨大化を生み、私を拒絶した村人達が苦しむような病を流行らせてしまったのだ。

 巨大化させた生き物に村を襲わせたわけでは無かったが、結果として巨大な虫などが村で動き出せば、襲われた事と同じであったのだ。

 私は怒りや悲しみの方が強く、村がそんな状況になってもどうにかしようとは思わなかったのだ。


 そんな時、私が抑え込んだはずのパラシスが、また森に現れたのだ。

 だが、ここに来たところでもう侵食する力は無いはず・・・

 そう思っていると、パラシスは意外な事を言ったのだ。

 

「あなたのその闇のエネルギーを私が吸い取ってあげるわ。

 私にとっては、善でも悪でもエネルギーは同じなの。

 あなたはその闇のエネルギーを手にしてはいけない。

 あなたは私と違い、もっと純粋な存在でないとダメなのよ。」


 そう言って私に近付いてきたのだ。

 拒絶や攻撃することも出来たが、今私の中にある黒いものが消え去る事が出来るなら、受け入れた方が楽なのでは無いかと思ったのだ。

 私はされるがまま、パラシスに抱きしめられた。

 すると、私の中にあった黒く嫌なエネルギーが出ていくのがわかったのだ。

 私の身体からそのエネルギーが抜けると、私の実体も以前作る事が出来た村人達と同じ風貌に変化する事が出来たのだ。

 パラシスは私からその黒いエネルギーを吸い取ると、私の闇が見え隠れする風貌に変化したのだ。

 私はその姿を見た時に、吐き気のようなものを覚えたのだ。

 その私の中で作られた邪な闇のエネルギーをパラシスを通して見た時、愕然としたのだ。

 自分が思っていた以上に、それは邪悪なものであったからだ。


 パラシスはそんな私を見て、以前の風貌に戻ったのだ。


「私の中にはあなたのエネルギーの名残はありますが、それに影響される事はありませんから。」

 

 私の邪悪なエネルギーを取り込んでくれたおかげで、村に蔓延していた病も消え去ったのだ。

 だが、一度巨大化させてしまった森は元に戻る事は無かったのだ。

 その為、村に巨大な生き物が現れるたびに、村は荒らされ被害を受けたのだ。

 その度に、村人から私に向けられる視線は厳しいものとなり、以前のような関係に戻る事は出来なかったのだ。

 その事を考えると、私の中でまた黒いものが生み出されたが、パラシスによって吸収され私は落ち着きを取り戻す事が出来たのだ。


 そしてパラシスを私の城に存在する事を許し、この不思議な関係はお互いに必要なものとなったのだ。


 私は黒い闇のエネルギーを取り除いてもらい、パラシスはそのエネルギーを得る事で存在を維持していたのだ。



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