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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
153/181

153話 空間からの脱出

 ブラックはこの閉じ込められた部屋からどうにか出る事が出来ないか考えていた。

 

「きっと、私の部下が魔人の森の精霊を連れて来てくれると思います。

 彼ならこの部屋も問題なく出入りできるはずですから。」


 私がそう言うと、ブロムも冷静になりどうするべきかを考えていた。


「そうだ、あの書物・・・」


 そう言って古びた絵本のような書物を取り出し、パラパラと開いたのだ。

 ブロムは何かここを出るヒントがあるかもしれないと思ったのだ。

 するとその書物の中に、黒の魔法使いの城の見取り図のような物が書かれていたのだ。

 ここが、その本に載っている城と同じであるならこの部屋も存在するはずなのだ。

 実はこの閉じ込められた場所は普通の書斎のようで窓もあり外も見えるのだ。

 もちろん、この空間の支配者の意思により、窓を開けたりドアを開ける事は出来ないのだが。

 しかしその見取り図を見る事で、この場所を把握する事が出来たのだ。

 この城の中心には中庭もあり、そこからも城の外に出る事が出来るようだった。

 私はこの城を出るようにと囁いた者とコンタクトがとりたかった。

 少なくとも、この空間に閉じ込めた者とは違うはずなのだ。

 味方かは不明だが、敵では無いのだろう。

 それが、黒翼国に伝わる本の中の黒の魔法使いであるなら、書かれているような悪い者ではないのかもしれない。

 

 この部屋をよく見ると、たくさんの本が本棚に並べられていた。

 私はそれを開いてみたが、見たこともない文字で読む事はできなかった。

 ブロムに見せると、その文字は黒翼国の太古の文字のようで、解読する事ができるようだった。

 書物に関してはブロムに任せることとし、私はここに存在する何者かと連絡が取れないかとその事に集中したのだ。

 本来ならこの空間を支配する者の許しが無ければ、外の世界の事を把握する事は出来ないのだ。

 だがこの空間は二重空間となっているため、時折空間に亀裂が入る事がわかったのだ。

 その時にどうにかコンタクトを取れればと思ったのだ。

 私は魔力探知を働かせ、空間の亀裂が出来るのを待っていたのだ。

 

 ブロムは本棚を見ながら、何か役立つ物が無いか探していた。

 その時、一冊の本に目を止めたのだ。

 それは、今ブロムが持っている黒翼国に伝わる絵本のような書物と同じタイトルの本であった。

 この空間に存在する書物は特に劣化することもなく、同じタイトルなのに見た目は全く違う本に見えたのだ。

 実際、中を開くと絵本のような挿絵は無く同じ本というわけでは無いようだった。

 だが、ブロムはその書物のタイトルが同じである事が気になり、少し読んでみる事としたのだ。


 中身はやはりこの森がまだ巨大化される前の話であった。

 それはまるで、黒の魔法使いの日記のように思われたのだ。

 読み進めるうちに、書いてある内容とブロムの持っている絵本とのズレが少しずつある事に気付いたのだ。

 ただ、ブロムにはどちらが真実なのか分からなかった。

 もしかすると両方とも偽りである可能性もあるのだ。

 やはり黒の魔法使いと呼ばれる者に会わなければ、何もわからないのだろう。


 私は集中して魔力探知を働かせると、時折出来る空間の亀裂から、この城の中に存在する弱い者の気配を探ることが出来た。

 強い気配の者は今は城の外にいるようで、弱い気配が城の中心である中庭に感じる事が出来た。

 あの白い存在の者は、アクア達を追いかけて出口の方に向かったのかもしれない。

 そう思うと、今がチャンスなのだ。

 私は中庭にある弱い気配の存在に向けて思念を送ってみたのだ。

 すると前と同じように囁きがあったのだ。


 『・・・取り残されたのですね。

 一瞬だけならその空間の亀裂を広げる事ができると思います。 

 タイミングが合えば、その空間から出る事が出来るでしょう。』


 私はブロムの腕を掴みタイミングを合わせたのだ。

 ブロムは慌てて、持っていた絵本とそこで見つけた日記のような本を抱えたのだ。

 私は目を閉じ亀裂が広がるのをじっと待ったのだ。

 それは本当に一瞬であり、ドアを開ける時間さえなかった。

 私は通った場所であれば空間把握が出来ているので、瞬時にドアの外に移動したのだ。

 そして私達はギリギリ二重空間から出る事が出来、城の中庭へと向かう事にした。

 本来この空間を作ったと思われる者に会いに行く事にしたのだ。

 今のところ、あの白の存在が作った空間はあの一室だけのようだった。

 その為、中庭までは問題なく進む事が出来たのだ。

 そこは綺麗な薔薇の庭園となっており、白い椅子とテーブルが置かれていた。

 そして、椅子に腰掛けている者がいたのだ。

 それはまさしく、あの囁いてくれた人物である事がすぐに分かった。

 その者は立ち上がってこちらを見たのだ。

 細く繊細で、寂しげに見えるその者は、かなり弱っているようだった。

 それは、絵本に書かれているような黒の魔法使いの風貌とはかけ離れていたのだ。

 そして、私達を見ると思念で伝えてきたのだ。


「早くここから出て行かないと間に合わなくなります。

 戻ってくる前に・・・早く!」

 

 


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