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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
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147話 城の空間

 私たちは白の姿の者と一緒に、先程通り過ぎた城まで戻ったのだ。 


 ブロム達黒翼人の後に続いたが、私はどうしてもこの白の姿の者を信用する事が出来なかった。

 いくら、本に書かれている白の魔法使いと同じ風貌だとしても、そこに書かれている事が真実かはわからないのだ。

 それに、やはり何か引っかかる・・・

 

「この空間は、私が知っているかつて存在した村や城を作り出したものなのです。

 太古から存在する者・・・あなた方で言う黒の魔法使いもこの場所に存在します。

 ある意味、この空間に閉じ込めていたようなものなのです。

 これ以上、外の世界を傷つけないように、私が見張っていたのですが・・・

 もう私だけでは難しくなってきました。

 ・・・どうか、皆さんに少しだけ力をもらえたらと思うのです。」


 白の姿の者はそう言うと、城の大きな扉に手のひらを向けたのだ。

 すると、低いギーッと言う音を立てながら、ゆっくりと扉が開いた。

 城の中はとても綺麗ではあったが、暖かみが全く感じられなかった。

 そして、驚く事に私が足を踏み入れると、誰かが頭の中に囁いてきたのだ。

 

 『・・・すぐに・・・この世界から出ていくのです。

 今なら間に合います。

 早く・・・』


 私はアクアとスピネルの顔を見ると、それは私だけではなくどうやら二人にも聞こえたようなのだ。

 だが、ブロム達黒翼人や白の姿の者には聞こえていないようであった。


 太古から存在する、黒の魔法使いなのだろうか・・・

 その思念は、こちらを排除や威嚇するものでは無く、私達に何かを知らせるように語りかけてきたのだ。

 魔力探知を働かせると、城の奥の方に何やら弱々しい気配を感じたのだ。

 白の姿の者は、黒の魔法使いの力が抑えられなくなったと言っていたはず。

 そうだ・・・引っかかっていたのは、この事なのだ。

 太古からいるという黒の魔法使いが、抑えられないような力を持っているなら、この空間に入った時から気配を感じるはずなのだ。

 ところがこの城の中まで来ても、私達以外はその弱々しい気配しか感じられないのだ。

 もしこの白の姿の者が偽りを言っているとしたら・・・とても危険であると感じたのだ。

 

 私はアクアとスピネルに警戒するように思念で伝えたのだ。

 いざとなったら、黒翼人を連れてこの空間に入った時の入り口に、瞬時に移動して外に出るように伝えたのだ。

 先程聞こえた声の言う事が正しければ、今ならまだこの空間から出れると言う事なのだろう。

 だが、場合によっては出られなくなるという事なのか・・・


「では、こちらでお待ちください。」


 そう言って白の姿の者は奥に進み、後をついて行った私達にある部屋に入るように促したのだ。

 ブロム達黒翼人達は何も気にする事なく部屋に入ろうとしていたので、私はブロムを呼び止めたのだ。


「ブロム殿、ちょっと待ってください。

 気になることがあるのですが・・・」


「どうしました?

 部屋の中で話しましょうか?」

 

 私は声をかけたのだが、ブロムはそう言いながらそのまま部屋に入ってしまったのだ。

 仕方なく私もその部屋に一歩足を踏み入れると、不安が的中したのだ。

 その部屋は二重空間となっており、その部屋のみがあの白い姿の者が本当に作った別の空間である事を悟ったのだ。

 私はすぐにアクアとスピネルにさっき話した事を行動するように思念で伝えたのだ。

  

 アクアとスピネルは、まだ部屋に入っていない黒翼人の兵士達に触れると瞬時に城の中から一瞬で消えたのだ。

 私はブロムの腕を掴み、同じように空間把握は出来ていたので、移動しようと思ったのだ。

 だが予想通り、部屋に入った私達は移動する事が出来なかった。

 部屋の扉が勢いよくバタンと閉まり、私達二人は閉じ込められてしまったのだ。

 空間移動も出来ず、外の様子も伺う事が出来なくなったのだ。

 ここはあの白い姿の者が支配する場所に違いなかった。

 という事は、やはり忠告してくれたのは黒の魔法使いか?


「これはいったい・・・

 黒の魔法使いによるものですか?

 白の魔法使いはどこに?」


 ブロムは急に我にかえったようで、頭を抱えたのだ。

 そして、ドアを叩いたり蹴ったりしていたが、もうすでにこの部屋自体が結界のようなもので囲われていて、この空間の支配者の許しがない限り、何も出来ない状況となっていたのだ。

 ブロムは腰元の炎の剣を出してドアに斬りつけだが、結界に阻まれ、影響を及ぼす事は出来なかった。


「私達二人は閉じ込められたようですね。」


 私はブロムにため息混じりにそう言って、私に囁いた声と私の考え、兵士達の脱出について話したのだ。


「ブラック殿にはいち早く兵士達を守ってもらい、ありがとうございます。

 自分は何も出来ずに、本当に情けないですね。」


 ブロムは初め驚いていたが、私の話す事に納得し、そして落胆したのだ。

 今まで、全く疑いもしなかった事がブロム自身も不思議に感じたようなのだ。

 やはり思考誘導があったかもしれない。


 黒翼人の兵士とアクア達は問題なく外に出た事だろう。

 いずれ助けが来るのも時間の問題か。

 だが、簡単に入る事はすでに出来なくなっているかもしれない。


 やはり・・・彼の助けを借りるしか無いのだろう。

 きっと、アクアとスピネルなら彼のいる森に今頃向かっているに違いない・・・




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