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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第5章 闇の遺跡編
145/181

145話 扉の魔法陣

 ブラックは湖の岩場にある転移のトンネルを抜け、翼国の世界に向かっていた。


 私はすぐにアクアやスピネルの気配を探ると、黒翼国の城の屋上まで瞬時に移動した。

 そこでは何人かの兵士達が探検の準備を行っていたのだ。

 そしてアクアとスピネルに目をやると、私が来た事にひどく驚いているように見えた。


「あれ、何でブラックが来たのだ?

 ジルコンはどうしたのだ?」


 アクアが不満そうに言うと、横でスピネルも頷いていた。

 私はジルコンが来れない事を話すと、二人はとてもガッカリしたのだ。

 少しは私に気を遣えと思ったが、それが出来る二人ではない事はよくわかっていた。

 だが、嫌味の一言でも言ってやろうと思った時である。


「ああ、ブラック殿まで来ていただけたなんて、ありがたいです。」


 ブロムはそう言いながら、喜んで駆け寄って来たのだ。


「二人がお世話になりましたね。

 我々が来たのはご迷惑ではなかったでしょうか?

 実は他の者が一緒に行く予定だったのですが、都合が悪くなり、急遽私が代わりに伺った次第です。」


「迷惑だなんて、とんでもない。

 昨日も巨大な蜂の大群から街を守っていただいたのですよ。」


 ブロムは昨日の事について教えてくれたのだ。


「そうなのですね。

 お役に立てたのなら幸いです。」


 そう言って二人をチラッと見ると、こちらの話が聞こえていたようで、二人とも得意気な顔をしていたのだ。



             ○


             ○


             ○



 私とスピネルは、アクアにドラゴンの姿になってもらい、背中に乗ったのだ。

 場所を知っているブロムの後をついていく事にしたのだ。

 そして城の屋上から探検隊は黒い大きな翼を広げ、次々と飛び立ったのだ。


 白翼国との国境となる森の上まで飛んでいくと、ブロム達は暗い森の中に降りて行った。

 そして私達もその後に続いて森の中に入ったのだ。

 巨大な生き物が生息する場所ではあるが、以前そうだったように、私達に向かってくる生き物はいなかった。

 だが、異様な気配が至る所から感じるのだ。

 私達の行動をうかがうような痛い視線で、それはあまり居心地の良いものではなかった。

 ・・・以前とは何かが違う。

 私は嫌な予感がしたのだ。


 ブロム達が降り立ったところに、私達もすぐに到着した。

 

「ここですよ。

 この巨大なイバラの先に何か大きな建造物が見えるのです。

 ただ、道のようなものは無く簡単には進めそうに無かったので、前回はここまでしか来てないのですよ。

 今回は色々準備をしてきましたので、多分問題なく行けると思いますが。」


 そう言って、腰元の炎の剣を構えたのだ。

 私はスピネルに炎が森中に広がらないように操作するように指示をしたのだ。

 

「わかってるよ、ブラック。」


 そう言って、スピネルはブロムの横に立ったのだ。

 ブロムが炎の剣を回し一振りすると、炎のムチのような物が回転しながら放たれたのだ。

 その炎の道筋にあったイバラは焼かれ、計算通り真正面の建造物の手前で炎は消えたのだった。

 私の心配する事なく、ブロムの放つ炎は他に広がることは無かった。

 流石、炎の剣の使い手なのだ。


 そしてこの先は大きな草木が茂っているため、翼があっても徒歩で行くしか無かった。

 私達は目の前の建造物に向かって慎重に進んだ。

 近づくと、何やら門のようなものがあり、中の建物を隠すように壁で囲まれていたのだ。

 それは長い年月が経っている事を物語っているように、崩れかけている場所が多数見られた。

 入り口と思われる門には大きな扉があり、その周りにも鋭いトゲのある大きなイバラの蔓で囲まれていた。


「では、今度は私がどうにかしましょう。」


 私は前に進みイバラの一部に触れると、扉を塞いでいるトゲのある蔓を一瞬で黒い粉に化したのだ。

 大きな扉も簡単には開かないように見えたので、消滅させて中に入るしか無いかと思っていると、ブロムが古びた絵本を出してきたのだ。


「ブラック殿、この扉の絵が、この本に書かれていました。

 何やら、開け方があるようですよ。」


 その絵本の様な古びた書物には、目の前にある大きな扉と同じ挿絵が描かれていたのだ。

 ブロムの父である王から譲り受けた本で、この森の事が物語として書かれていると言うのだ。

 ただ、それがどこまで真実かはわからないと言うが、話の中に扉の開け方が書かれていたのだ。

 

「五つの星の中心に村人が手を置くと、大きな扉が開いたと書いてあります。」


 よく見ると、扉にはある印が付いており、それを直線で結ぶと星型になり、その中心と思われる場所に私は手を置いたのだ。

 しかし、本には扉が開いたと書かれていたのだが、実際は違ったのだ。

 それにこの感覚・・・

 そう思った時、大きな扉の前に魔法陣が現れたのだ。

 やはり、魔法の類で結界がこの壁に張られていたのだ。


「もしかすると、私達でなければ開かないのかもしれません。

 やってみます。」

 

 そう言ってブロムが扉の前に進んだ。

 確かに、村人と書いてあるなら、誰でも良いわけでは無いかもしれない。

 ここに住んでいた者達の血を引いている者でなければいけないのか・・・

 ブロムがその星型の中心に手をかざすと、さっきと同じ魔法陣が現れたが、今度は魔法陣が動き出し、重そうな大きな扉も嫌な音を立ててゆっくりと開いたのだ。


 それにしても、この魔法陣が機能していると言うことは、この結界を作った者は、まだ存在していると言う事なのだろうか。

 精霊の様な存在であれば、私より長く存在している者もいるだろう。

 

「ブロム殿、この場所はその本では何と書かれているのですか?」


「ここは・・・黒の魔法使いの城のようです。」


 なるほど、ただの探検では済まないかも知れない。

 私はアクアとスピネルに、周りに注意を払う様に思念で伝えたのだ。

 

 


 


 

 


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