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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第4章 火山のドラゴン編
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132話 舞の計画

 私の前に現れたアクアは封印の石を持っていた。


「舞を傷つける事は許さない。」


 そう言うと、封印の石を私に預け、ドラゴンに向き合ったのだ。


「ドラゴンの民のくせに我に言う言葉では無いだろう。

 以前の時は封印すら出来なかったお前が、我に挑むとは笑えるな。」


 そう余裕の顔を浮かべてドラゴンが言うと、アクアは悔しそうに話したのだ。


「あの時とは状況が違うのだ。

 今なら再度お前を封印する事ができるはずだ。

 事実、ここに一部のエネルギーは封印されているからな。」


 確かにあの時よりも成長をしており、ドラゴンにより侵食された時とは違うかもしれない。

 そしてアクアは、相手がブラックの姿である事を忘れているかのように、ドラゴンに向けて炎を勢いよく吹き出したのだ。

 もちろん、炎を操作する事も出来るドラゴンにはそれを避けるなど簡単であった。

 しかしその時、ドラゴンが振り払ったはずの炎が方向を変えて自身に向かって来たのだ。

 そして炎に包まれると同時に、あっという間に丸いドームに包まれ閉じ込められたのだ。

 思っていなかった攻撃にドラゴンはダメージを受けたようだ。

 そう、スピネルがドラゴンを追いかけて、この森に現れたのだ。


「舞、頼むと言われても逃げられちゃったんだよね。

 ごめんね。」


 スピネルは私に頭を下げて謝ってきた。

 

「森をこれ以上痛めつけるのはやめてほしい。

 ここには魔獣も住んでいるのだよ。

 森の火災が広がれば大変なことになる。」


 精霊は冷静に話したが、その顔つきは今まで見た事が無いほど怒りで震えていたのだ。


 私はドラゴンに向けて話をしたのだ。


「私が話した事を覚えている?

 この社会は色々な者たちが存在しているの。

 強い弱いとか、種族とかで区別してはいけない。

 相手の事を尊重し、思いやる気持ちが無いとダメなのよ。

 王としてこの世界に居たいのなら、なおさらだわ。」


「うるさい!うるさい!

 人間のくせに・・・」


 そのドラゴンはドームを壊しながら叫んだのだ。


「封印されたエネルギーがあれば完全復活出来るのだ。

 そうすれば、全てが私の思い通りになる。

 娘よ、早く我に石を渡すのだ。」


 そう言いながら私に向かって来たのだ。

 アクアが攻撃しようと私の前に立ったが、私はその前に出て、鞄から薬を取り出してドラゴンに向けて投げたのだ。

 すると、ブラックの姿のドラゴンは金色の明るい光で囲まれたかと思うと、膝から崩れたのだ。


「何だこれは・・・。

 やはり、ただの人間の娘では無かったな・・・」


 そう言ってドラゴンはすぐに動かなくなったのだ。


「何でも自分の思う通りなんていかないわ。」


 周りの心配な目をよそに、私はそう言いながら倒れているブラックの姿のドラゴンに近づいたのだ。

 すると、倒れたはずのブラックが何事もなかったように立ち上がったのだ。


 だが、それは私の予想通りであった。


「舞、闇の薬は使わなかったんだね。

 契約を交わす事ができそうですか?」


 本物のブラックが表に現れたのだ。

 私はドラゴンを眠らせるための薬を使ったのだ。

 前にブラックが現れた時もドラゴンが寝ている時だったので、薬で眠らせればブラックが出てくると思ったのだ。

 だが、長くは持たないだろう。

 すぐにドラゴンは目覚めるはずなのだ。


「今のうちに皆さんこちらに。」


 精霊は急いで木のトンネルを作ると、みんなに入るように促したのだ。

 少し歩くと、見慣れたら空間が現れ、奥には生薬の元となる木や草が元気に育っていた。

 精霊の作る空間の中では、支配者である精霊の許しの無い限り、ドラゴンも騒ぐ事は出来ないのだ。

 

「もうすぐ、ドラゴンも目覚めるだろう。

 私が入れ替わってもここなら問題ないでしょう。

 舞、これからどうしたい?

 もし契約出来ないようなら躊躇せず、闇の薬を使うんだよ。

 それがみんなのためではあるから。」


 ブラックは私の肩に手をおき、心配そうに話したのだ。


「ブラック、私は闇の薬も指輪も使いたくないのが本音よ。

 このドラゴンはただの子供なだけなのよ。

 意志を持ち始めて間もないだけで、何もわからないから攻撃するだけな気がする。

 私はもう少し説得してみたいのだけど。」


 そうブラックに言うと、諦めたようにため息をついて微笑んだのだ。

 

「わかりました。

 本当に困った人だ。

 まあ、舞なら何とか出来るかもしれませんね。

 でも、気をつけてくださいよ。」


 そう言ってブラックは私を抱きしめたのだ。


「ブラック任せてくれ。

 私が絶対に舞を守ってみせるからな。」


 アクアは得意げにそう言ったのだ。


「アクア、そうだね。

 今の君なら大丈夫だ。」


 ブラックは成長したアクアを見て、嬉しそうであったのだ。


 さて、私はこのドラゴンをこの世界で共存させる為の、ある計画を考えたのだ。

 このドラゴンに少しでも良心というものが芽生えているなら上手く行くのではと思った。

 私はみんなに計画を伝えた後、精霊にお願いして元の大木のある広場にみんなで戻ったのだ。

 すると、ブラックは一瞬でそれまでとは別人のような顔つきになったのだ。


 ドラゴンと入れ替わったのだ。


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