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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第4章 火山のドラゴン編
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130話 舞の憂鬱

 ブラックが舞に会いにいく、少し前のことである。

 舞はバルコニーに出て、夜風に当たりながらブラックの事を考えていた。

 

 いつになったら本当のブラックに会う事が出来るのだろうと、ため息しかなかった。

 ドラゴンが魔人の国に着いた時は良かった。

 この世界について色々話をしたが、案外素直に聞いてくれたのだ。

 私の話に興味を示し、耳を傾けてくれたのだ。

 ドラゴンも初めて見たり体験する事ばかりだったようで、楽しんでいるように見えたのだ。

 だが、数日もすると苛立ちが募っているのがわかった。

 この城からあまり出れない事もあるが、それだけでは無いようだった。

 そのブラックの姿のドラゴンは空を見上げ睨んでいたり、ため息をついていたのだ。

 やはり、自由に飛びたいのだろう。


 今日はアクアの行方について聞いてきたのだ。

 スピネルが今も捜索していると伝えるが、納得がいかないようであった。

 残りのドラゴンのエネルギーを取り戻せば、完全復活ができるため、すぐにでも探し出して捕らえるようにと、怒鳴り散らしていたのだ。

 私は何とかドラゴンの気持ちを落ち着かせたが、次はこうはいかないと思うのだ。

 このまま怒りに任せて、誰かを傷つける事が無いようにどうすれば良いかと考えていたのだ。


 多少のことなら魔人達はドラゴンの苛立ちから身を守る事が出来たのだが、ドラゴンが本当に相手を傷つける気持ちで攻撃するようなら、無傷ではいられないだろう。

 私もブラックからもらったペンダントや指輪があるので、あまり心配はしていなかったが、ドラゴンは私には言葉で文句を言う事はあっても、物理的攻撃を加える事は無かったのだ。

 元々、弱い人間だとわかっていたからかもしれない。


 そう考えると、このドラゴンはただ攻撃的な乱暴者では無く、状況や周りの事も考える事が出来る者なのかもしれない。

 闇の薬を使う事で、このドラゴンを弱らせたり消滅させる事は出来るかもしれないが、はたしてそれが一番の策なのだろうか?

 準備はしたが、以前のように憎しみだけが残ってしまうようでは、何も変わらないと思っていたのだ。


 すると、ずっと会いたいと思っていた人の気配を感じたのだ。

 振り向くとブラックが立っていたのだ。

 それは見た目だけでなく、本当のブラックであった。

 ブラックは驚いた私を優しく抱きしめてくれたのだ。

 今ここで会えるとは思わなかったので、何も言葉が出なかったのだ。

 ブラックの腕の中はとても暖かくて、心も身体も溶けていくような気持ちになったのだ。

 

 私を見るとブラックは指輪の話をしてくれたのだ。

 上手くドラゴンと契約が出来れば、消滅させる事なくドラゴンと共存ができるかもしれないと言うのだ。

 私は早速指輪の使い方を聞いたが、ある意味恐ろしい指輪であることも教わったのだ。

 だが、私との約束を守ってくれるようなドラゴンであればやってみる価値はあるのだ。

 私との信頼関係をもっと築くことできっとうまく行くと思った。


 今回ブラックとは少ししか話せなかった。

 ドラゴンが目覚めそうになると、身体を自由には使えないようで、すぐに部屋を出ていったのだ。

 しかしこの計画が上手く行けば、すぐにまた会えると思い寂しくは無かったのだ。

 それに・・・いつでも近くにはいるのだから。


 しかし気がかりはアクアだ。

 アクアが納得して封印したエネルギーを渡してくれるだろうか。

 それが無ければ、契約は出来ないのだ。

 命懸けで封印した物を簡単には渡してくれないのではと思った。


 次の日、私はジルコン達にブラックと話した事を伝えた。

 やはりジルコンはドラゴンを良くは思っていなかったが、ブラックの計画には納得してくれたのだ。

 その後もドラゴンはアクアの行方がわからない事に苛立ちを抑える事が出来ず、ネフライトやスピネルに当たり散らしていた。

 二人はとても我慢をしているのがわかった。

 もちろん契約が上手くいけば、ブラックが戻ってくるからなのだ。


 私はドラゴンにこの魔人や人間の世界について色々な話をしたのだ。

 魔人の中にはこの城にいるような強い者以外に、人間のように弱い者もいる。

 色々な者達が集まって社会というものが成り立っている事を話したのだ。

 相手を思いやる気持ちを持って欲しかったのだ。

 どれくらいわかってくれたかは不明だったが、私は一生懸命話をしたのだ。

 私が元の世界に戻る事や魔人達の我慢の限度もあるので、私は一週間後に森に向かう事に決めたのだ。

 短い時間ではあったが、それまでにドラゴンとの信頼関係を築きたかった。


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