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薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ  作者: 柚木 潤
第4章 火山のドラゴン編
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119話 アクアの変貌

 石の扉に到着すると、アクアは書いてある文字を目で追ったのだ。

 するとそこが最後の扉のようで、神妙な顔つきでアクアはその扉に力を込めたのだ。

 重そうな音を立てて石の扉が開くと、そこは広い空間になっていた。

 中は暗い洞窟のはずなのだが、アクアが持っている石と同じものが何箇所かに散乱して、怪しく光を放っていた。

 そのため特に暗すぎる事はなく、辺りを見回す事も出来たのだ。


 そして奥に進むと祭壇のようなものがあり、そこにはアクアの持つ石と同じようなものが置いてあったのだが、それは本来の大きさではなく大きく膨れ上がっていたのだ。

 よく見るとその中には赤黒い生き物が丸まって入っており、眠っているかのようだった。

 しかし時折身体を小刻みに動かして、まるで自分を閉じ込めている石を破ろうと力を込めているかのようだった。

 その生き物が体を動かすと、この洞窟全体が揺れるような感覚があったのだ。

 それがあのドラゴンであったのだ。  


「もともと封印の石は、今持っているのと同じ大きさのはずなのだ。

 こんなに大きくなっているのは封印が破られそうな証拠だろう。

 ・・・急がなければまずい。」


 アクアはそう言って急いで祭壇に新しい石を置き、石と石の間に立ち、祈る様に両手を組んで目を閉じたのだ。

 移し替えの儀式がなぜドラゴンの民にしか出来ないのかがなんとなくわかったのだ。

 アクアを見ていると、大きく今にも破裂しそうな石の中からエネルギーの流れのようなものが出てきて、アクアに入っていくように見えたのだ。

 そしてアクアから新しい石に注ぎ込まれるような流れが見えたのだ。

 アクアを仲介する事で、ドラゴン自体のエネルギーを新しい石に取り込ませているようだった。

 そうする事で、新たな石に封印するのだろう。

 

 このまま問題なく移せる事を祈ったのだが、やはりドラゴンの民が一人であるのでエネルギーを受け取るアクアに負担がかかっているように見えたのだ。

 アクアの様子が明らかに変わってきたのだ。

 本来ドラゴンの姿になれるのはわかっている事だが、目の前にいるアクアは半分ドラゴン、半分人型と言う何とも言えない風貌に化してきたのだ。

 移し替えを見た者は誰もいないため、そう言うものかとみんなが思っていたのだが、赤黒い鱗を纏い変貌していくアクアを見ると、とても心配であり恐ろしくも感じたのだ。


 そして元の石に入っていたドラゴンの形がだんだんと崩れていき、新しい石の中に新たなドラゴンの身体が作られていくように見えたのだ。

 だが、やはりそんな簡単な事では無かったようで、アクアは目を閉じながら急に倒れたのだ。

 私は倒れたアクアに駆け寄ろうと思った時、ブラックが止めたのだ。

 ブラックは真剣な顔で伝えたのだ。

 

「ドラゴンのエネルギーがアクアの身体の中で停滞している。

 新しい石に抜け出ていないですね。

 あれはアクアであって、アクアでは無い者だよ。

 危ないから近づいてはいけない。」

 

 確かにブラックが言う通り、倒れたアクアの身体がだんだんと今までの何倍もの大きさとなっていき、人型の雰囲気があっという間に消えていったのだ。

 開けた場所ではあったが、これ以上大きくなると洞窟が崩れるくらいの大きさにまでなっていたのだ。

 普段のドラゴンの姿のアクアと違い、表面は石に封印されていたドラゴンの赤黒い色の鱗となり、牙や爪なども今までと違い以前より鋭く攻撃的な風貌に変化したように感じたのだ。

 見ていた誰もが、眠っていたドラゴンが復活したのではと思うくらいであった。

 

「これはアクアを依り代にしてドラゴンが復活したのですか?」


 いつも冷静なユークレイスでさえ、かなりの焦りようであった。


「・・・いや、それはまだですね。

 元からある石を見るとまだ半分ほどしかエネルギーは移動して無いですね。

 しかし半分でこの気配・・・

 全てのエネルギーを備えたドラゴンでは誰も手出しが出来ないでしょう。」

 

「ねえブラック、・・・アクアはどうなるの?」


 私は恐々尋ねたのだ。


「どうなるかわかりませんが、身体の中に入り込んだドラゴンのエネルギーに負けて自分自身が取り込まれれば、自我を失うかもしれませんね。

・・・そうなるとアクアは消えてしまうかもしれません。」


 私はもしかしたらと思っていた事を、ブラックから言われて動揺したのだ。

 一瞬、めまいや吐き気に襲われたのだ。

 しっかりしなくてはと自分に言い聞かせたのだ。

 あの、純粋で自由や冒険が大好きなアクアが消滅することだけは絶対に避けたかった。

 何百年も生きていても、まだまだ中身は子供のような存在であるのだ。


 そして私はもしかしたらあの薬が使えるかもと、カバンから一つの薬を取り出したのだ。

 取り出した薬を見て考えていると、私のポケットに収まっていた森の精霊が声をかけてきたのだ。


「舞、それを使うのは危険かもしれないよ。

 もしもだけど、すでにある程度以上にドラゴンがアクアの身体を支配していたら、異物はアクアの方になってしまうかもしれない。

 そうなると、外に出されるのはアクアの方になるかも・・・」


 そう、私は身体から異物などを分離する薬が使えるかと思ったのだ。

 だが、精霊の言うことももっともなのだ。


 私は巨大化して攻撃的な風貌になったアクアを見て、どうすれば良いかわからなかったのだ。

 

 

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