夢見る萌え豚と動き出すヒロイン達
初めまして。今回初めて作品を投稿します。普段はただの萌え豚やっているんですよ。なんか、小説書こう!って気になるのって、突然なんですよね。直感で書いてると痛いことばかり書いちゃうので自粛することも多々あります。僕の場合は「妹さえいればいい」という小説に影響された可能性があります。あれはいいですよ!オタクに小説書かさせちゃう合成麻薬ですよ。今回の作品も衝動的に書いたので二次創作くさかったらすいません。小説を書くことを趣味にこれからも辛い世界を生き抜いていこうと思います。よろしくお願いします。
こうして、僕は今日を終えた。毎日は自分の体感よりも速く駆け抜ける。それは誰にも止められなく、どうしようもないものなのだ。分かってる。だから僕は願った。望んだ。
駆け抜けてゆく毎日に追いつくほどの夢と希望を……!!
「これは覇権だ!」
そこに一人の男はいた。ゲーミングパソコンの液晶に突っ伏しながら、咽び泣いている姿が。窓から無慈悲にも打ち付ける朝の淡い日差しに照らされたモニターには月曜午前7:00と告げられていた。
「やべっ、時よ止まれっ!!」
モニターには7:01と現実が突きつけられていた。
「現実は厳しいなぁ…ったく……あーぁ!!」
実に不健康な目のクマと、不機嫌な怒りを朝食のカロリーメイトにぶつけ、こうして朝から現実をつきつけられた。そこからの行動は実に速かった。何故かなど、聞く必要もなかろう。
「行ってきます」
愛する二次元に別れを告げて走り出した。遅刻は大罪だ。しかし!!遅刻1分前は無罪!その言葉は俺を走らせる動力源となり、自己暗示だった。
出てすぐ右に曲がり、そこから100m直進。次を左に行き、十字路をつき抜ければ学校路線の電車がある。瞬時に頭の中で最短ルートを計算し、迷わずBボタン押し込みのダッシュ。まぁ、いつも通りの道のりなのだがな。しかし無論、誰しも、必ずかっこつけたい!!!…そういう日もある。
「駅のホームに電車が到着するのを検知!ラストスパートをかけろ!!」
額の汗も勢いで逆に乾いてきた。それと同時に制服のポケットから、落ちたものを僕は見逃さなかった。
「くそっ、タイムロスどころか死刑宣告だろ、これ。」
いそいそと取りに行くも、その足は止まった。正面を向きそして一瞬で目を奪われた。
「落とし物、したよ?」
その女の子は自分と同じくらいの歳だった。和やかな笑顔が美しさを引き立てる。それも次元を超えるレベルなのである。
「あっ、ありがとうございます。」
もちろん急いでたこともあってその場から立ち去ったのもある。でも、それ以上に自分の心臓の音が何かを物語り伝えていた。
「これは現実?」
つかの間の緊張は電車の揺れによりほどけた。何よりも信じがたいことだと、自分の心を落ち着かせることができたからだった。現実であってはならない。だからこそ目にのみ記憶を焼き付けた。
電車は時間通りに停止、そして到着。程なくして遅刻を免れた俺は門を悠々とくぐり、クラスに入り窓側のベストプレイスに腰を落とした。
「よっ!ゆずと」
朝から人生なめてそうな憎ったらしい最高な笑顔をしているのは唯一の理解者ともいえる友達だ。
「いや、今期は萌えが足りないが、涙枯らしてくる覇権作品があってな」
口のみ命を吹き返したかのように、饒舌な喋りを披露する。生きるためにエネルギーのバッテリーを最小限にした。
「朝から、二次オタ全開で来られるってのも疲れるな。」
やれやれと言わんばかりの顔にはニヤニヤが何故が浮かんで見えた。気のせいにはできないほどの。
「なんだ?」
率直な疑問を問いかけてみた。
「だってお前、信じられない物を見たっ!!!みたいな顔してんだもんな。いいから顔を洗いに行ってこい。」
背中を叩かれ、それが微妙に痛いことへのいらだちをぐっと抑えながら顔を洗った。そして一言
「二次元を見た」
ありのままを伝えた。
「それゃ二次オタのお前なら生活の一部だろうからな」
なんの疑問もないよと顔が全力主張してくる。
「現実に二次元が存在したんだよ?!」
朝の出来事を簡潔に伝えた。
「精神科ならあっちだぞ?」
「そうじゃねぇよ!冗談は抜きだ。確かに見たこの目を見ろよ!!本気が伝わるだろ?」
目に力を込めて友達(今更どうでもいいが名前はとうや)と目を合わせた。
「目の隈太い!ってのも、そうだが本気なのもそうらしいな」
信じてくれてはいなそうだか状況の理解は一応してくれた。信じてはいないがな。
「夢だとは思えねぇんだけどな」
一気にいいたいことを言い終えたからか、自分が夢に入り込もうとした。だか、その眠りを妨げるように朝のHRは始まった。
「突然だが、転校生をしょうかいする。来てくれ。」
本当に突然すぎて驚きはしたが、眠気のKO勝ちだ。
「初めまして今日から転校してきまし……」
そこまで聞くとまぶたは眠気にあらがうことなく幕を閉じた。起きると授業が始まっていた。
「何時間目?」
「2時間目だよ、つか先生のボイコット一人でしてんじゃねぇ」
後ろからの伝言は小さかったが眠気覚ましになった。
「悪くない眠りだった」
まるで名言を残したかのごとく、一言呟いた。本当に一日は速い何気ない日常会話とおじいちゃん先生の眠くなるお話も終われば一瞬のように感じる。今日もそのうちの一つであることに変わりはない。
どれだけ時間が経っただろうか…気づけばこの教室には俺と、
「誰だ?」
まったく身に覚えのない子がいた。
でも、なにか分からんなにかを感じた。
「初めましてではないと思うけどな」
そう呟く姿は確かに見覚えがあった。
「転校生?」
朝のミジンコ程度の記憶から絞って出した答えはこれだけだった。
「半分正解」
和やかな笑顔がなにか分からんが直感が伝えようとしている。
「多分それ人違いです?」
「なぜ疑問形?」
軽いツッコミを入れて貰えるほどの話せる女など、片手の指より少ないはずだ。
「正解は人違いだ!」
そう勝手に解釈すると、頭の中を埋め尽くす数々の嫁達を連想させて支度を済ませて、いざ帰ろうとした。
「メガネがなければ分かるかな」
ゆっくりと茶色味のメガネを外すと、そこに浮かんだ風景。風が肌を撫でると同時に頭は真っ白になった。いつの間にか目を奪われたその先には確かに見覚えがある。まるで幻影のような、核心をつかないどこか現実感がない空気。だが、やはり目に映る物は焼き付いて離れずこれが現実であると物語る。
「嘘だろ?」
額の汗、手にかいた汗、その全てが蒸発するかのような高揚感と、共に喉から一言絞りでできた言葉。嘘であると解釈する以外に正解が見つからなかったのだ。
「朝にあって依頼だね。」
平然としたその態度には、どこかきれいに輝く物がある。きっとそれに驚き、そして、少し嬉しく思うのだ。
「いや、おちつきすぎだから!ホントに三次元の人?」
再度確認を行う。そうでなければ信じられない。自己暗示も限界はあるのだから。
「むしろそこまで驚かれるとなー、ていうか、二次オタバレバレだよ?そこらへん自重しようよ。ね?ゆずと君」
説教たらしく俺に話しかけてくる。
「ん?何で俺の名前なんか知ってるんだ?自慢ではないが学年で見ても俺なんか犬の糞みたいなキャラの薄さかと思うんだが」
むしろそんな自分に自信さえある。俺を知ってくれてることに萌えたとか、けしてそんなことは…なくはないが。
「いやー、なにせこの学校入ってきてゆず君のこと聞かない方が凄いよ。聞いたよ?朝の朝礼でアニソン流そうとして叱られたとかいう聞くからにアホすぎる話を。」
えっ?何それ初耳!俺そんなこと言われてんの?あっ、やべっ!死にたい!!
「あれはもう忘れた方が良い。いや、忘れてくれ。」
それだけは話すなと目で訴えかけた。
「なんかさ、転校初日からここまで男子と話したのとも君だけだよ。もしかしたら運命?」
ギャー!!そんなこと言わないで!三次元で萌え死ぬ!何この従順ギャルゲーヒロインみたいな子?!
「とりあえず遅くなるのも嫌だから先帰るね?」
と言い残すと、そそくさと帰っていった。何気にここまで一瞬で仲良くなるところすら安っぽいギャルゲーだよ!恐ろしい…
「疲れた。が、今からやらなければいけないことが増えたな。帰ったら早速始めますか!」
今の俺はなにか嬉しそうだ。自分でも分からないこの浮ついた気持ちと高揚感に包まれて、そして何よりも夢が見えたんだ。
「ただいま!」
いつも通りの帰宅。でも、いつもよりも速く階段を駆け上がりゲーミングチェアを揺らしpcと向き合った。そう、今の俺が思い描く夢。まるで実感がわかないが叶えられそうな、届きそうな、そんな気がする夢!!
「最高の小説を作りたい!そして、最高のアニメが創りたいんだ!!」
そう決心するとその日の夜はpcから目が話せなかった。
まず、意気込んだからには連絡しなきゃ行けない人がいる。正直かなり無理があるけどな。そう呟き電話を、掛けた
「あー、もしもし?俺、俺だよ。」
少し緊張しつつ話してみる。
「どなたですか?」
とても可愛い声がしたが、その第一声は俺の心をえぐった。
「うわっ!いきなりKO寸前にするのやめて貰える?スニャ様!」
こいつはスニア、俺の幼なじみ(年下)にして、プロ級の腕前を持つイラストレーター。補足:まだ売れてはいないww
「まぁ、せっかく電話かけてきたんだし?1分間だけ聞いてあげるわ。」
わードギツイ、!!
「それってもはや聞くとは言わなくない?!つか、それじゃ会話にもなんねぇよ!!」
あまりにもぶっ飛びすぎててツッコんでしまったわ。
「やかましいなぁ、まぁ用件はくだらないということだけ把握できたわ。」
ため息まじりに小馬鹿にする声が聞こえた。
「ふっ、くだらないかどうかわ聞いてみないとわかんないぞ??」
「くだらん」
「まだなんも言ってねぇよ!話聞いてくださいお願いします!」
話が進まないが、引き下がるわけにもいかない。
「はいはい、速くどうぞ」
どこまでも高飛車な野郎だな!可愛くてもこの社会では生きてけんぞ!
「まぁ、よくぞ聞いてくれた。ズバリ俺はだなぁ、アニメが創りたいんだ!」
「なぜ?」
「希望が見えたからだ!」
「だから、なぜ??」
「二次元並みの可愛い女の子に会って、萌えて、俺の心を動かしたからです」
「はい却下」
はやっ!聞く耳なしというか、聞く気もないというか、この即決は心にくるな。
「なにがいやなのさ?!俺は夢を叶えたいだけなんだ!それ以上は望まない。」
思いの丈を全てぶつけた。
「なら、なぜ嫌か教えてあげるわ」
ほぅ、
「1、私のメリットがない」
ぐっ!
「2、聞くからにつまらない」
グホッ!
「3、そもそも、理由が意味不明」
Oh Jesus!!!
「なんとも正直な感想ありがとう。だが、俺は諦めていない!お前の気持ちなど知るか!でも、お前が必要だ!協力してくれないなら明日も、明後日もこうして電話かけてやるから覚悟しておけ!!」
その場の勢いに任せて興奮冷めやらぬまま電話を切った。
さて、どうしたものか。別に諦めようというわけではない、むしろ逆だ。これだけの熱量なら本当に叶う気がして止まんない。だが、ここからが大事だ。なにせアニメとはキャラに色がつき、ヌルヌル動き、そして、何よりもキャラに声という名の生命が吹き込まれる。これこそ醍醐味なのだよ。別にその心当たりがいない訳ではない。ただちょっと話しづらいだけで…
「突然申し訳ないです。時間空いてますか?」
まずは、礼儀正しく、これ大事。
「ちょっと今無理があるかもしれないです。」
申し訳なさそうに返答が返ってきた。
「そうですか、ならまた後でかけ直しますよ」
まぁ、仕方ない。相手は今売れに売れている新人人気声優青羽ゆうその人なのだから!
「待って、少し時間があるから用件のみ話してみて下さい」
用件のみパターンはヤバい。デジャヴにならんといいのだが。
「実はアニメが創りたくてですね……あっ、これは本気です!」
できるだけ熱意のある言い方で話してみたが、どうか!
「具体的な構想は浮かんでいたりするのでしょうか?モチロンのことオリジナルアニメならですが」
お、これはワンチャンスあるのでは?
「それは、もちろん超絶萌えて、泣いての最強アニメだよ!」
これは押し切れた、そんな感じがした。
「無理です!」
えっ、あっ、詰んだ。この人に関しては仕事の多忙さがあってか、無理強いはできない。もはや、詰み?
「そろそろトイレが限界です!」
「それは先に言え!」
~トイレを待つこと10分弱~
いよいよ再確認の時だ。
「で、本当に無茶で傲慢で無神経って分かってるけど、本気であることには間違いないんだ」
自分のことばかり考えているオナニー作品であることは違いない、でも、それでも……!
「場合によっては、ですけど別にかまいませんよ?実は好きなんです」
思いがけない言葉に俺はかなり動揺した。
「それって、もしかして…」
「先輩の書く作品が好きなんです!」
えっ、あーそう。まぁ、そんなことだとは思ってたけどね期待なんかしてないし。でも、純粋に嬉しくもあるんだ、自分の書いた物語が褒められるって悪くないもんだなって。
「じゃあ、OKってことなんだね!!よっしゃー、これで何とか…」
気持ちはとても高ぶっていた。夢を掴めそうなことが、とてつもなく嬉しかったんだ。
「そうは、言ってません。先輩の書く作品は好きです。でも、今回については信用してるわけではないんです。だから、答えは出せません。」
その言葉は俺には深く重い。が、それと同時に希望は見えた。もうプロの声優であるユウには子どものおままごとにしか見えないのかもしれない。そう、つまりは、
「最高のシナリオを考えてこい。そういうことだよね?」
一つ問いかけた。すると、小さく頷いてから一言
「話が速くて助かります。楽しみにしてます!必ず私を信用させて、あなたの進む道へ引きずり込んでくださいね?」
期待されている。そう思うと胸が熱くなり、どこからか沸いてくる気持ちが創作意欲を駆り立てる。
「あぁ、やるとも。俺の夢を
お前の夢にしてやる!!だから期待しまくっててくれてかまわないぜ!」
そこで会話は途切れた。そして、今の俺には明確に見える物があった。夢を夢で終わらせない。所詮なんて言葉は口にさせない。がっかりなんてさせない。ただ一つ、最高だ!!そう言わせてやりたいんだ。さぁ、長くて速くて楽しい時間の始まりだ!
「なんですか?これ」
「なんなのよ、これ」
今日は5月上旬、まだ桜が舞い散る素敵な日。なはずなのだか、俺は今は使われていない片隅の教室で叱られていた。とてつもなく、それはそれはとてつもなく、二人の女子から責められたのであった……。
「なんなのよ、これ?意味わかんない。時間かえすか、神様に命返しなさいよ。」
なんてこった。現実は優しくない。全然容赦ない。俺を殺したいの?てか死んじゃう!!それはもう精神的に!
「それについては同意です。つまらない上にオナニーですか、正直キモいですよこの脚本は。」
どうやら、もう一人にも不評らしい。この間までのわくわく返してよ…、やめて、それ以上は死に関わるから…!!
「なにがいけないんだ?正直我なりに力作なのだが。」
「「それが問題なのよ!です!」」
二人そろって息ぴったり、この脚本見せる前とは大違いだ。
遡ること30分前
「何度言ったら分かるのよ!こいつと一緒に作品なんか創りたくないの!」
目をつり上げ凄い剣幕で怒鳴りつけたのは、スニアだった。
「私もです。何度話してもこんな人とは組みたくありません!!」
珍しく怒りをあらわにするユウに少しビグッとした。
「始まらないと分からないだろ?なにがご不満ですか?ご所望は何ですが?」
ここまでの喧嘩に発展するなんて考えてもいなかった俺は、始まる前から少し危機感を覚えた。
「私は、この女が声優だからというだけでメインヒロイン面をされるのが嫌なだけよ。」
不機嫌でへの字に曲がった口から本音がこぼれた。
「だったら、そっちだって、売れてもいないのに、いい絵がかけるんですかね?あっ、そっか!売れてないからかけませんよね?」
これまたいつものユウとは違う喧嘩腰の態度、そのあおり口調には不満の二文字が映し出されていた。その時向かい側からバキッと鉛筆らしき物が砕け散る音がした。
「あんたねぇ、売れてりゃいいってもんじゃないのよ!!金しか見てない汚い金の亡者が!!」
こりゃあ、ガチギレだ。顔には分かりやすく怒りマーク、そして半泣き。まったく自分が年上であることを忘れていた。でも、どっちもどっちだなぜなら…
「言わせておけば……そもそも世間から認められてすらいないくそ雑魚イラストレーターが、私に何か口出ししてもいいとでも!!」
こっちも口が悪い。そして半泣き。そりゃあ怒るに決まってるが、ここまでヒートアップするなんて、俺は聞いていない!!
「あーもう!お前らの言いたいことは分かった。だが、始まる前から否定的になるな、俺の脚本を見てくれ!それでからでも遅くはないな?」
必死に慰めると同時に自然な流れで話のずれを修正した。
なんて完璧なディレクターなんだ俺は…。
「ちょっと、なに過去を後悔して夢に逃げてんのよ。事実はゆずの脚本がくそ、それだけよ。」
俺の希望のフラグが折られることを犠牲に仲を取り持てた。ならいいじゃないか。いや、良くはないけど…
「とにかく具体的な理由を聞くまでは引き下がらないぞ?まずはスニャ!!お前から聞かせてくれ!」
なにを言われてもいい覚悟はしている。だから、聞かせてほしい。本音を。
「じゃあ最初に言ったオナニー作品の意味だけど、まずここ」
そう言うと脚本の内容の一文をを指さした。そのシーンは俺の妄想が詰められていた。
「こんな、あんたの妄想が本当にうまくいくとでも思ってんの?正直な話、こんな脚本じゃ私達がなめられてるとしか思えないわ。それにこの作品をユーザーに届ける!その意思がまったく感じられない。」
なかなか、辛い現実だった。でも、その通りだった。この脚本はただの独りよがりのくそ作品だったのだ。
「次、ユウちゃんお願い」
今の俺にはさっきまでの威勢がなかった。
「今、スニャ先輩が言ったことともう一つ、この作品には足りない要素がある。それは、メインヒロインのみしか輝けていない。他のヒロインの価値を見いだせていない。そういう所です。」
真剣な顔をしている。この作品を中途半端に終わらせるのはダメだ。何としてでも叶えたい夢だから。
「まさか、諦めるなんて言うんじゃないですよね?」
そう笑顔で説いてきた。
「まぁ、こんなくそ脚本出して次があるならね?」
スニャも笑顔だ。
「当たり前だろ?こんなところで終わるわけがない最高で最強の俺の夢をお前らまとめて引きずり込んで、そんでもって、ユーザー達をガチ萌え、ぼろ泣きさせてやる!!」
今度は、絶対失敗しない。世界中のユーザー巻き込んで、独りよがってやる!瞳は次の創作へと向いていた。
「まぁ、まだ一緒に創ってやるなんて言ってないけどね」
ちょっと意地悪に笑っていた。
「そうですね。ゆず先輩の脚本と、スニャ先輩のイラスト次第ですかね。」
おちょくるような笑顔で走って行く。
「何で私までそこに数えられるのよ!!」
さらに追いかけるスニャ。仲が悪いとかそんな感覚はまったくしなかった。
「久しぶりの登場な気がするよ?私。」
俺が校門を通過してすぐ右隣に彼女はいた。
「あぁ、確かにな、だが忘れてはいないぞ?なんたって今作のメインヒロインはお前なんだからな」
そう一言だけ言い残し返ろうとした刹那。
「「どういうことよ!!ですか!!!」
返ったはずの二人はなぜが俺の前で鼓膜を破る勢い+鬼の形相をしていた。
「ゆず君、これはまずくないかな?そのタイミングでそれはラノベ主人公だよ?」
訳の分からん話をするこの子は後で説明するとしよう。
~家近くのファミレスにて~
「さぁ、これはどういうことかしら?話せば楽になるのよ?、ゆずー?!」
ファミレスにいるはずなのだがここだけ空気が違った。
「説明しろと言われてもだな…。」
今この状況は危ない。周りから見れば男一人に女三人のリア充であるのだろう。が、しかしそんな生温い状況ではない。
「さすがに私も動揺してるんですよ?殺すか殺さないかでね…!」
いきなりのヤンデレはすさまじいな!何でそんな本気な顔してるの?死ぬの?俺死ぬの?!
「とりあえず自己紹介からの方が良いんじゃないかな?なんか私に向けられる二人の視線が怖すぎるので…」
俺に速く状況を打破しろとの伝言らしい。顔が必死だ。
「えー、まず僕の名前は冬月譲土で…」
「「お前じゃねぇよ」」
ボソっと愚痴が聞こえてきた。しかもこの二人ばっちりハモりやがった!そしてやっと理解した。
「えー、この子は猪苗代和香。ここからの説明は本人がするそうです。」
なに途中で放棄してんだ。そう聞こえた気がする。だかこれ以上は無理だ二人の圧が強すぎる!!
そう小声で説明すると一つため息をついて、
「私はのどかです。えーっと、訳あってゆずと君に頼まれごとをされてます。」
言い切った顔をしているが、そんな意味深な言い方されたら…
「それってどういう意味なんですか!!」
ほら、やっぱり言われた。ユウはかなりご立腹そうだ。だがスニャら理解しているようだった。
「どうせ、この作品に関わってるんでしょ?このくずとがしゃべれる女子ならそんなところでしょ?」
珈琲にミルクを入れコロコロとかき混ぜながらため息をついた。話を分かってくれるのはいいが、なんか俺の名前がくずにジョブチェンジしてるんだけど!
「そんなことはもう分かってます。一番大事なのはこの作品にどういう形で参加してるのかですよ!スニャさんはちょっと珈琲でも飲んどいて下さい。」
また喧嘩になるかと思ったが、あまりにも美しく論破されたからか、黙ってにらみつけながら珈琲に手をつけた。
「そういうことか、ならば言わせてもらおう。この子は…、猪苗代和香はそう!!今作品の幼なじみヒロインを演じてもらうその人本人です!」
やっと本題に入ったと安堵した。二人の第一声は
「「ふーん、いいんじゃない?ですか?」」
第二声は
「「幼なじみヒロイン????」」
度肝を抜かれた顔をしていた。その瞬間に沈黙が広がった。
「この子が?嘘でしょ?どういう経緯でこの子が参加しているのかも分からないけど、いきなり幼なじみヒロインとか言われたら驚くわよ!」
そんな空気の中、沈黙を破るように話し始めたのはスニャだった。
「それに関しては私も同感です!詳しく、すっごく詳しく教えて下さい!!」
スニャに続いて口を開いたのはユウだった。
「えー、面倒くさい。」
「殺すわよ?」
「すいません、話します。」
そんな会話を挟んでからしぶしぶ説明を始めた。
「それは二日前の放課後で…」
~二日前の放課後にて~
「ヒロイン?」
誰もいない静かな教室に少女の声は甲高く響いた。
「そう!ヒロインだ!内容は簡単。俺の作る最強のアニメのヒロインになってほしい。別に無理はしなくていい。毎日放課後残って活動したり、休日俺の家に集まって活動したりするだけだ!簡単だろ?」
いくら相手が二.五次元の美少女だからってきょどってはいられない。これは自分の夢だ。それには彼女が必要不可欠。今まで暖めていたこの企画が花開くときは今なんだ!
「なんかね、思うんだよねー。自分の作品を最強って言うところが痛いし、毎日放課後残るとか、休日みんなで活動とか、全然私のプライベートないじゃん。」
正論という名の刃物の前に俺は胸を貫かれた。でもこの程度で立ち止まる俺ではない!
「ものは試しという言葉をしっているかね?」
そう一つ説いた。
「それくらい知ってるよ。なにがいいたいのかなぁ?」
少し怒り気味に返答をいただいた。
「つまりは観てみなきゃわかんないだろ?アニメ!今日は土曜日。本当なら休みだったこの日の振り返り代休が月曜日にあるだろう?」
どこまでも食い下がって食らいつく。まるで必死にくっつく金魚の糞のようにな!
「なんか悪寒がするよ」
そう言って返ろうとするのどかをすかさず
「壁ドゥゥン」
俺は逃げられないようにした。
「明日家に来てくれ。俺が痛いってほど教えてやる。」
俺はかつてないほどの緊張の中一言呟いた。
「何で?」
のどかは質問してきたがその頬はほのかに赤くなっていた。
「アニメの喜びを!!!」
高らかにそう叫ぶと俺はガッポーズを決めた。
「オタクキモ、死ね」
先ほどまで赤らめていた頬は元に戻り冷酷な顔で一言告げた。
「なんでいきなり暴言?怖いよ!のどか様怖すぎだよ!!」
なにが起きたのかまったく分からなかった。いきなりの死刑宣告は凄まじかった。
「もう私は返るね」
なにが悪いのか機嫌は直らず教室を出て行くのどか。
「明日の10時、木造駅の前で待ってるから!!」
最後まで聞いていたか分からんが廊下にその姿はなかった。そして思った。
「いい匂いするんだな女子って。」
~日曜日木造駅前にて~
「やべっ、10時弱じゃん時間。徹夜すると時間の感覚狂うからキツイ!」
まぁ、昨日の反応からしているわけなどないけどな。そんなことをぶつぶつと考えているうちに目的地へ到着した。
「やはり、いないか…」
分かってはいたがな、期待などしてないからな!今まで下ってきたちょっとした坂を見ると余計に気分が萎えてくる。
「無視はあまり関心できないなー。」
聞こえてきた声の主を見つめる。
「なんでいるの!?殺しに来たの?」
驚きで渾身のきょどりを見せつける。
「自分から誘っといてそれはないんじゃないかなと私は思うんだよね。」
自然な流れで説教タイムに突入した。
「しかも、自分から誘いつつ12分遅刻。さすがオタクだね。」
「どんな偏見だよ!!というかすいません」
ツッコミをかますと同時に綺麗な土下座を決めた。
「いや、昨日あんなに怒らせちゃったからさ。来るわけがないと思うじゃん?なのにいるじゃん?つまりそういうことです!」
「言い訳無用」
少し怒ってそっぽを向く姿も萌え要素なのだが
「眼鏡かけてるとかなり別人だな。どっちも悪くないのになにか違和感が拭えないんだよな。」
不思議なこの感覚がなにか分からなかった。
「まぁ、伊達メガネだけどね。」
たわいのない会話をしながら緩やかな坂を一歩一歩登っていく。
「ていうか、凄いよなお前って。」
素朴な疑問だった。
「何で?」
なにが?と、首をかしげ答えをとう。
「いや、普通あってすぐのオタクに家に招かれてのこのこと来るかな?」
「だってオタクじゃん。」
「オタクならいいのかよ!オタク信じすぎでしょ!!何かされる可能性だってあるのに?」
壮大な疑問だった。
「だって、襲わないじゃん。所詮ゆずと君だもの。」
「別に襲わないけれどもさ、それはそれで危機感のなさ過ぎな気がするんだよなー。」
萌えキャラのくせして危機感薄いとか絶対危険だろ!心の中で何回かの押し問答を繰り返した。
「別に他の人だったらついてかないよ。ゆずと組んだからだよ。」
こちらを向いて少しニヤついた笑顔をしている。その言葉をどう解釈していいか迷ったが、さすがにドキッとした。
「だってヘタレのキモオタだしね!」
「前言撤回!!!」
意外にも話しながら歩いていると速く自宅に着いてしまった。
「ここが俺の家です。」
簡単な説明を済ませた。そしてそそくさと家の鍵を開けると。
「お邪魔しまーす」
なんの躊躇いもなく入っていった。ビッチなの?もしかしてビッチだったの?!!むしろこれが普通なの?怖い!三次元怖すぎだよ!
「なにしてるの?私は速く部屋を案内してほしいのだけれど。」
もう驚かない。これ以上反応してたら命が幾つあっても足りない。俺は言われるがままに家を案内した。
「ここが俺の部屋だ。少し汚いけど気にしないでくれ。」
部屋の説明も簡潔に済ませた。
「ホントに汚いね。」
なんの遠慮もなくサラッと暴言を吐くと、なんの躊躇いもなく床に腰を下ろした。さすがに口を開かずにはいられなかった。
「ちょっと説教タイム。さすがにヤバいだろ?!」
当の本人はなんのことか分からなそうにしてるのが怖い。
「なにかな?」
凄い他人事みたいな、口調だった。ほら、みたことか!分かっていない。
「あのさー!ここは男の子の部屋だぞ!割と本当に男の子はオオカミさんなんだからな!」
「私はゆずと君を信じてる。」
重い!ひじょーに重い!
「まぁ、しないからいいんだけどさ。」
ぶつぶつと文句を言いながら俺は一つよDVDに手をつけた。
「ここに来た理由は分かっているな?」
少し高揚している気持ちとともに質問した。
「アニメを見るんだっけ?」
ちょっと引いてることに気づきながらも続けた。
「そう!その通り!!この作品を今日お前にの観てもらう。」
そういうと俺は作品を高々と振り上げた。
「俺の青春ラブコメは間違っていてほしい?」
「そうだ!略して俺まち。これを観てもまだオタクをキモいと豪語できるのかな?」
今の俺は他者からみたらキモオタなのが自分の首を絞めていた。
読んでいただきありがとうございました。妄想をただぶつけただけの作品でも作品として成り立つのが怖いですよね。世の中そうやって回っているんじゃないかとおもいます。妄想を現実で実行できることなんて稀なことですが、妄想を小説にすることはとても簡単だという解釈をしています。この突然始めた小説も、妄想のはけ口として頑張っていきます。