一章九話
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試合後、対戦相手のリーダーが私に握手を求めてくる、祝福のお陰でそれなりの容姿だがコイツはフタナリ好きの変態だ、躊躇している私を尻目に貧乳とマナミさんが握手をしている、ロリコンでは無かったのかよと思いつつも渋々フタナリと握手し、性癖不明とも握手する。
幻体の作り込みの凄さと的確な戦術からメカフェチの可能性が高いが自分から尋ねる事など到底不可能だが、私達を見る彼の期待の込もった視線から見るに的外れでも無いようだ、そして、残された貧乳とも握手をしようとするが、どうも怯えているようだ。
スカートを剥ぎ取って散々切り刻んでやったが、それは幻体に対しての行為で彼には痛みなど無かった筈だが、どうやら私に苦手意識を持ってしまったらしい、だが、そんな事はお構い無く手を取ると力一杯握りしめてやった。
初戦を勝利で飾った私達は、闘技場の運営本部に出向き賞金の一部を受け取った、今回得られた総額は想像以上のものでとても全てを受け取れるレベルでは無かったからだ、幸い幻体師ギルドは銀行業務なども行っているので殆どは預ける事にした、その際ギルドから来週の試合の依頼が来たので快く了承した、ギルドとしては人入りの悪い午前を満員にしてくれた私達にはなるべく試合に出て貰うつもりらしい。
このギルドでのやり取りで私達の人気の理由が判明する、闘技を行う幻体師達にはそれぞれギルドが作ったプロモーションビデオ有るのらしいのだが、私達のそれはミナコさんとの模擬戦を編集した物だった、ギルドとのやり取りなどはミナコさんがやってくれていたので彼女の采配の賜物なのだが、恥ずかしいシーンも満載でそのお陰で新人としては異例の人気が出たらしい。
色々と謎も解けたし恥ずかしい目にも会ったが、ひとまずミナコさんには感謝しないといけないと思い、賞金を使って食事をご馳走する事にした。
この世界で高級な物となると予約が必要となるらしいが、幻体師ギルドが運営する店なら予約しなくても良い物が食べれるという話だったのでそこで遅めの昼食を取る事にする。
幻体師ギルドというのはなかなかのやり手のようで、ギルドの運営する店は数店存在し闘技場近くの街の一画に集められていて、その辺りの事は幻界町と言われ初めている。
闘技場デビューを果たした私達はちょっとした有名人になっていたようで、街行く人達から好機な目で見られていた、なかなか落ち着かない気分だったがギルドに紹介された店はその点ちゃんと配慮がされていた、個室制の高級店でこういう需要を予測して出店している辺りはあちらの人間らしい。
私達が通された部屋は広めの四人用個室で完全なプライベート空間だ、私とマナミはミナコさんに向かい会って席に座るとおもむろにメニューを広げる、日本語と現地語の二重表記のメニューには残念ながら写真などは無いが見慣れた料理も多くあり、かなり膨大な種類の注文が可能なようだ。
「種類多いですね」
「この店はこの辺りのギルド運営店全てのメニューが注文出来ますから、むこうの味を再現する事を仕事にしている人もいますからね」
「それは有り難いかも、寄宿舎の食事って健康的だから」
「アレも寄宿舎追い出す作戦の一つらしいです、普通で量は有るけど少し味気無いですから」
「ですよね、鶏肉も唐揚げじゃなくて殆ど天ぷらですから、天ぷらの方が手間なのにおかしいって思ってました」
「アレは他の具材の一緒にしてバリエーション増やすって意味もありますよ、謎食材の天ぷらも結構有りますから」
「この前の青い天ぷらとかですね、あれにはびっくりしました、食べてみると普通に美味しかったですけど」
「料理人の仕事って結構良いみたいですね、食べる事は保証されてるし、未知の食材も多いから結構楽しいって同期の人も言ってました」
「幻体師以外で食べてる人も結構居るんですね」
「その事と関係ある話で、幻体師ギルドって名前が幻界ギルドに変わるらしいですね」
「むこうの世界が幻界って事ですね」
「はい、私達にとってはもう手の届かない幻ですから、で、幻界ギルドの話なんですけど、どうやらこの世界で理想郷を築く事が目的らしいですね」
「なかなか大きな目標ですね」
「ギルドの代表がそういう事好きな人ですから、ギルドの無かった頃の私達幻界人って奴隷みたいな扱い受けていたらしいです」
「そんなハードな時代が有ったんですか」
「そうらしいですね、私もギルド設立以後に此処に来ましたから、じゃないと闘技だけで生きていけませんし」
「異世界召喚も時期によって変わるんですね、それこそ理想郷が完成したなら幻界よりも此処の方が良くなりますよね」
「此処に来る人って、人生楽しんでる人多いですよね、そして何より楽しんでても生きていけますし」
「そこはそれこそギルドのお陰ですよ、娯楽を供給する事で得た資金を使って幻界人に優しい仕組みを作ってます、おまけに現地人にも評判良いですから、この店のメニューだって好評です、あ、注文しないと」
「いっぱい有って迷いますよね、暫く食べて無い物も多いし」
「私はこの世界の物が食べてみたいです」
「リナさんって、チャレンジャーですよね、あの青い天ぷらも躊躇無く食べてたし」
「アレは切り身だったからですよ、虫丸ままとかだったら無理です」
「なら、そういうやつ以外で私がおススメの奴を頼みますね」
「ミナコさん、虫丸ままいけるんだ」
「虫は私も無理ですよ、ザリガニなら此処で食べましたけど」
「聖獣じゃ無かったのかよ」
「リナさん、共食いですね」
「それじゃ、行ってみますザリガニ?」
「こういう時は食べた方が面白いので頼みましょう、キツツキは無いんですか?」
「流石にそれは無理ですね、けど、野鳥系のお勧めも行っときますね」
こうして楽しい昼食は過ぎて行く、ザリガニは思いの外美味でまた食べたいぐらいだ、そして、この様な美味しい食事を味わう為にも私達は闘わなければならないのだ。