表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

一章五話

001-005.


闘技場には腕組みをして仁王立ちの男が待っている、片目に眼帯をして白衣を纏っているアンバランスな出で立ちだが、これはやっぱりアレなんだろう、この世界に来る人間って解り易い奴が多いなと思っていると、案の定、怪獣王の幻体が姿を現わす。


そして、対峙するようにミナコさんのクトゥルフが現れるとまさに大怪獣バトルだ、巨大化生物は怪獣映画の定番なのでそれ程違和感が無いのに笑ってしまうが、現地人達も大興奮だ、元ネタを知らなくとも巨獣同士の闘いというのはロマンを掻き立てるものらしい。


「あの人はトキミネさんと言って、この世界で冒険者しながら生物学者もやってる人だ」


「だから白衣着てるんですね、それは判らんが結構の遣り手だ、ミナコにも何度か勝ってるぐらいだからな」


「なんか威圧感ありますからね」


「生物学者らしく生物の表現が上手いんだよ、今日は遊ぶみたいだけど」


「怪獣王って結構強そうですけど」


「あれ、着ぐるみだから動きが人間的なんだよ、生物ってのは野性の動きが怖いからあの状態じゃミナコに分があるな」


「けど、油断は出来ないですよね、変人多いですから」


「まぁな、何かしら楽しませてくれるからな」


ミヤモトさんと雑談しているといよいよ試合が始まった。


最初は怪獣王が容赦の無い火炎放射でクトゥルフに襲いかかる、あれは確か青い炎だった気がするが、今吐かれているのは紅蓮の炎で何か違和感がある。


クトゥルフは数本の触手でガードするがそれらはいい色に焼けて芳ばしい匂いが漂ってくる、相変わらずミナコさんは変な演出しているが正直言って食べる気にはなれない。


「実はこの匂い、ミナコがわざと具現化しているんだぜ」


「やっぱりわざとですよね、けど、勝敗には関係無さそうですね」


「ああ、酷い奴は悪臭攻撃する奴とかも居るからな、最もそんな奴は毛嫌いされるから余り出てこないけど」


「確かに迷惑ですからね」


そんな事を話している間に動きがある、クトゥルフは墨を吐き出して消火を計っている。


「あれって溶解液ですよね」


「溶解液の事もあるって事だな、色々な種類が有るみたいだ、効果は操る人間が決めてるから」


「その辺はイメージなんですね」


「ああ、その場に対応する能力が無いと幻体闘技で上位は勤まらないからな」


「色々と参考になります」


そうこう言っているうちにまた動きがある、怪獣王の身体で墨を被った部分から煙が上がって溶け出してきているのだ。


そして、そのチャンスを見逃すミナコさんでは無い、クトゥルフの触手を振り上げると容赦無く叩きつけと怪獣王の殴られる部分が飛び散る、柔らかな触手に殴られたぐらいで何故ああなるのか疑問に思ったが、その謎はすぐに解ける、先程火炎放射で焼かれた部分が硬くなって、棍棒の様に変化しているのだ。


「あれじゃとても喰ねぇな」


もともとあんなの喰えないだろと思いながら敢えてスルーする。


クトゥルフの打撃攻撃は続いている、怪獣王は上体の体表を吹き飛ばされ、腕まで吹き飛んだ、だが、明らかにおかしい、吹き飛ばされて千切れ飛んだ筈の腕が残っているのだ。


まさか、ミナコさんも異変を感じとったのだろう、一旦殴打を辞め距離を取ると半壊した怪獣王の身体の中から別の物が見えている。


そして怪獣王は明らかに変わってしまった腕を頭に伸ばすと一気に剥ぎ取る。


「マスクマンかよ」


思わず突っ込んでしまったが、中から出てきた物に対してミヤモトさんが解説してくれる。


「あれはレッド・ドラゴンだな、怪獣の中にドラゴンを仕込むとはなかなかやるな」


「だから、火炎が赤かったんですね、怪獣王のあれって青色ですから」


「姉ちゃんはよく知ってるな、俺は炎の色の違いなんて知らなかったぜ」


「それはそうとレッド・ドラゴンって、火吐く奴ですよね」


「ああ、結構厄介な奴だ、火が吐けるのは勿論だが巨体のくせに動きが早いんだよ、防御力は他のドラゴンよりマシだが当てるのが難しい厄介な奴だ」


「ミナコさんって、戦った事無いですよね」


「幻体の奴なら有るかもしれんが本物とは無いだろうな、この街に籠ってるから」


「どう思います」


「問題は相手がトキミネって事だな、あの男なら本物のレッド・ドラゴンだって再現出来るだろう」


「本物って強いんですか」


「幾ら上級者でも冒険者パーティーで挑むのは無謀なレベルだ、討伐軍編成してようやく勝てるかな」


「幻体師が居ても勝てないんですか」


「普通の幻体師は強さを抑えて持続力を増してるからな」


「けど、アレも幻体ですよね」


「確かにそうだな」


そう、幾ら最強クラスの生物を再現出来ても幻体なのだ、登場シーンこそ盛り上がった物の複雑なギミックを仕込んでいたトキミネさんの精神疲労はかなりの物で登場時には圧倒的な力を見せたレッド・ドラゴンもあっという間に失速していきアッサリとクトゥルフに絡め取られて絞め殺されてしまった。


今回得られた教訓としては、しっかりと作り込んで計算された幻体を作らないと力を発揮出来ないという事だ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ